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余韻を残しながらも無事全国大会が終了しました。大懇親会の後はキタ新地の方へ足を伸ばしましたが、土曜日はほとんどのお店がお休みという事でただでさえ人が少ないのに、ワールドカップの日本vsオランダ戦の中継もあって、街は閑散としておりました。愛媛のメンバーで静かに打ち上げの杯を交わし、その夜は大人しく各々宿へ。松末繁治・實田貴文両先輩とこうして県外で一緒に飲む機会も少なくなりそうです。とは言いながらも意外に増えたりして?!さて、翌日は何も予定を入れてなかったので、折角なので朝から通天閣に行くことにしました。大阪に来ることはあっても、なかなか通天閣に行く機会はありませんでしたので、今回激安パックで西成の方にに泊まった事もあり、なんと朝8時から井部勇治君と新世界へ出掛けました。日曜日の朝8時というのに、意外にも結構歩いている人の姿が多いのに驚き!
通天閣に登れるのは9時からというのは知っていたのですが、飛行機の時間もありとりあえず新世界とはどういう所か見ておきたかったので。おお、見えてきました、あれが通天閣か!私達の世代で通天閣といえば、漫画「ドカベン」に登場する坂田三吉の通天閣打法でしょう!子供心に、甲子園球場の空高く打ち上げられた白球に壮大な通天閣を重ねたちびっ子は全国にたくさんいたはずです。通天閣タワーがどんな物かも知らずに。リアルな通天閣のイメージが残っているのは、映画「王手」(阪本順二監督)に登場する少し薄汚れた本物の通天閣と新世界の街。そうです、このアングルで通天閣を実際に見上げてみたかったのです。やっと念願が叶いました!気分だけは赤井英和、どいつもこいつも「どついたるねん」!。ポケットに手を突っ込んで肩で風切って「まいど、まいど」とガニ股歩きになってしまいそうです。
通天閣タワーの傍らに阪田三吉名人の功績を讃える王将の石碑が建っていました。この張りぼてのような(失礼!)安っぽい感じの朽ち具合がまたいい雰囲気です。文字の読み書きも出来なかったとか、お金に執着しなかったとか、エピソードも豊富な阪田三吉の姿に、大阪という土地柄のバイタリティを感じます。銀の駒の指し違いから、「銀が泣いている」の名言を残した阪田名人ですが、私としてはこの後たっぷりと新世界と通天閣を堪能して大満足、観光客もたくさんで「通天閣が笑っていました」!
映画「王手」の中で、主人公の赤井英和が悩んでいる時に、若山富三郎(実はこの作品が遺作なのですが)演ずる元真剣師と世界最大の将棋・平安大将棋で対局するのですが、見た事もなかった「鳳凰」とか「麒麟」、「朱雀」などの駒が大写しで画面に登場する場面が大好きです!ああいう絵ヅラが感覚的に好きなんですね、私。その将棋の駒ですが、その素材としてもっとも適しているのが『柘植(ツゲ)』だとされています。柘植は生長が遅いことから、小さな木でも年輪幅が狭くて、材が均一なうえに緻密で、精緻な細工には適しています。国の内外を問わず、この木が小さな箱造りに適していることから、ボックス・ウッドやボックス・ツリーなどの俗名も持っています。以前に、ボックス・ウッドの一種『カステロ』の事をアップしましたが、将棋の駒だけでなく櫛(くし)や算盤の珠、印材、美術工芸品などにも利用されています。
柘植の櫛は、材が緻密であることから歯が折れにくく静電気も起きにくい事で知られています。その製作は実に手間隙がかかるもので、素材となる柘植を製材して完成するまでに10以上もの工程があり、歯を磨くためにも幾つもの種類のヤスリが使われます。以前にテレビでその製作工程が放送されていましたが、実に根気のいる作業です。お手入れには椿油が良いようです。経年変化で黄身色が増し、黒髪によくその身が映えるのも柘植の櫛ならではだと思います。残していきたい日本の工芸文化です。案外安く手に入る物もありますので、是非木の素材を身近で使ってみて下さい。よく栂(ツガ)の木の話をすると、「ああ、櫛につかう木でしょ」と勘違いされる方が多いのですが、それぐらい『櫛=ツゲ』という概念が浸透しています。御蔵島の柘植や薩摩柘植が有名なのですが、大径木は少なく角材の端材を取るのは至難の技でした。【森のかけら】にも加えたかったのですが泣く泣く断念。
木曽桧の良さが一般に広く浸透したのも、建築材より以前に風呂桶やお櫃(ひつ)で使われ、生活レベルで受け入れられた土壌があったからだとも言われているように、一生に一度建てるかどうかの建築材としてよりも、日常生活での身の回り品として材を浸透できれば、その親近感はより高まる事だと思います。やはり、より身近な所で木を使ってもらうという事が肝心です。しかし皮肉にも昨今では、柘植の木が高価になり過ぎて、本物の柘植で作った将棋の駒はプレミアな物になり、我々の日常からは遠ざかりつつあるのですが。ああ、もっと使ってくれよと柘植の駒が泣いている・・・。
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