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本日は冒頭から映画「ワイルドバンチ」の話ですが、久し振りに映画館で「映画」を観ました!こういうのを、「映画を観た」っていうんだと思いました。この作品は1969年日本公開で、今から40数年前のもので、今までにもビデオやDVDで何度も何度も繰り返し観てきましたが、映画館で観るのは今回が初めてでした。3D全盛の現在にあって、生身の人間が文字通り泥臭く演じる映画がむしろ新鮮に映るし、なによりも突然に人が空を飛んだり消えたりしない安心感があります!
40数年の時間がまったく色褪せていない奇跡のような作品です。意外だったのは、前編これほどけたたましい音楽が流れていた事と、どアップで映る俳優達の表情の素晴らしさ!映画館の大音響、大空間で観てこその発見でした。どれほど汚らしい格好をしようとも、溢れ出てくるスターの体臭とでもいうべき貫禄が伝わってきます。メキシコが主な舞台という事で、前編砂塵と埃と汗が全開のギトギトとしたむせ返るような暑苦しい映像なのですが、何でしょう、この埃と汗にまみれて何日も何日も洗濯もしていないような汚らしい服を身にまとった髭面の汚らしいオヤジ達の格好の良さは!たまたま身内が出したオーディションに受かって俳優やってま~す、などという軽いノリでは決してありません。「職業=俳優」という事を誇りを持って、楽しみながら演じているように見えるのです。
あのアーネスト・ボーグナインですら、頼り甲斐のあるガンマンに見えるではありませんか。初老のガンマン達を演じた大好きなウイリアム・ホールデン、ベン・ジョンソン、ウォーレン・オーツは、そこに居るだけで画になる風格。ガチガチに骨ばった男のドラマ、格好良すぎでしょう!しかしペキンパーは彼らに、かつての颯爽とした西部劇のスター達のような立ち振る舞いを与える事はありません。なにせ存在そのものが強盗団という事だからお金に汚く、いつも酒をあおり、くだらない事で仲間を罵り、平気で人を殺すならず者達なのです。威厳も正義のなく、ただ自分のためにだけ生きてきた彼らが最後に人間性を取り戻す場所、それが「死のダンス」とも言われるラストの大殺戮シーンになり、そこで皮肉にも他人のために次々に人を撃ち殺して、最後には全員死んでしまうので。しかも西部劇ではタブーのマシンガンの連射ですから掟破りも甚だしい。
当時としてはかなり衝撃的な内容だったと思います。作品の製作された時代は、ハリウッドでも西部劇の斜陽が叫ばれていて、フロンティア・スピリットの象徴でもあった勇猛壮大な西部劇のカタルシスももはや時代遅れとなり、白人VSインディアンの単純明快な対立構造に観客も喜ばなくなっていたのです。そんな中にあって、西部劇を撮りたくてたまらなかったペキンパーが時代に抗うように撮ったのが、この異端の西部劇「ワイルドバンチ」であったのです。後世の歴史は、この作品を西部劇終焉の象徴と捉えていますが、その後この作品は多くの作家に影響を与えました。今では決して企画の通る事のない映画でしょう。
特に最後の大一番に向かって4人が無言で歩き出し、その異様な殺気に人が道を開けるシーンは鳥肌モノですが、これなどは相当に多くの作品にインスパイアされていると思います。壮絶な大殺戮シーンなどは今観てもその迫力には震えるほどの臨場感があります。むやみやたらと人を撃ち殺す暴力描写は当時、非難されたという事ですが、ペキンパーが撃っていたのは、過去の遺産と化した古きハリウッドのシステムやルーティンだったのかもしれません。戦う事を放棄したハリウッドの映画界にくらわした一撃こそが、理屈抜きの最後の蛮勇賛美「ワイルドバンチ」だったのではないでしょうか。
翻って我が身を考えれば、プレカットの登場以後、建築資材流通における構造そのものが大きく様変わりし、時代の波に乗り損ねたり、抗う事を諦めた多くの仲間が会社を閉めていきました。もはや過去のルールや掟が通用しなくなった時代において、ワイルドバンチ達のように徒花として壮絶に散っていくか、あるいは別の鉢で別の花を咲かせるか、そろそろ最後の選択をしなければなりません。映画ではワイルドバンチ達がくだらない事で延々と笑い続ける場面が多く登場しました。昔はその演出の意味がよく分かりませんでしたが、歳を重ねてきて何だか少し理解出来るようになりました。彼らも本当は、忍び寄る時代の時代のうねりを銃ではなく仲間と馬鹿笑いして過ごしたかったのかもしれません。私も彼らのように散ってしまわないように、そして気の置けない仲間と楽しく酒を飲み笑い続けられるように頑張らねばなりません。
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