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長野県では、戦後に県をあげての大規模なカラマツの植林政策がとられ、実に造林面積のおよそ50%をカラマツが占めるまでになったのです。土地の条件が悪くとも根づき、また成長も早いことから、耐湿性が高いという特徴を活かして杭などの土木資材などを想定されていたのですが、高度経済成長の中で非木質系の土木資材が急成長し、カラマツは出口を失います。材質は硬いものの、成長と共に螺旋状にねじれるカラマツは建築材には適さなかったのです。
また、マツの特徴のひとつでもあるヤニの問題もあり、「割ればねじれるヤニのある木・カラマツ」は長い間新たな用途を見つけられないまま、冷遇され厳しい冬の時代を迎えます。しかしその間も長野の木材人たちは、地元の眠れる森林資源を活用すべくカラマツの利用研究の道を模索していました。長い研究・試験の努力の結果、乾燥初期に十分な蒸煮処理をすることにっより、ヤニの中の揮発成分を揮散させ、固形分(ロジン)のみを残す方法を確立されました。
また、ねじれの問題も乾燥時に上から荷重をかけて圧締し、乾燥後も一定時間桟積みして養生させることで克服。その「使えるカラマツ」が全国の注目を集めるのは、1996年に長野冬季オリンピックの会場となった「Mウェーブ」ではないでしょうか。その後、カラマツはラミナや集成材などとしての利用も進められ、長野産のカラマツは全国へ広がっていくことになります。そんな長野のカラマツと私が出会ったのは、もうかれこれ20年ほど前の事。
全国の林産地で職人たちがこだわり抜いた技法で作る木製品に出会い深い感銘を受け、もっと多くの人に知ってもらおう、使ってもらおうと、林産地を訪ね歩いてネットワークを作り上げたのが神戸市の木童の木原巌さん。木原さんとの出会いで私も覚醒し、一緒に全国の産地を訪ねましたが、最初に会わせていただいたのが『信州の鬼杜氏』こと南波健一さんでした。南波さんとの出会いは衝撃的で、それまでそこまで木に執着する職人さんに会った事がありませんでした。
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