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広葉樹の出口の広さについては以前もご紹介しましたが、これだけ豊かな森林背景を持つ秋田の地には、その木材を使った多くの工芸品もあります。中でも有名なのがサクラの皮を使用した『樺細工(桜皮細工) 』です。角館の樺細工は、俸禄だけでは暮らしていけなかった下級武士の手内職として生まれたもので、天明の頃、凶作、飢饉が続き、元手のかからない山の桜の樹皮を剥いで作り始めたのが起源とされています。それが現在では年間数十億にも及ぶ基幹産業に成長。
折角角館まで来ているので、田鉃産業さんから車で数分のところにある武家屋敷にも立ち寄ってみました。武家屋敷通りには、樺細工などの工芸品を扱う店が軒を連ねていました。角館の桜は、青森の弘前公園、岩手の北上展勝地と並んで『みちのく三大桜の名所』のひとつと呼ばれる名所ですが、およそ400本もある枝垂れ桜が、4月中旬から5月上旬の開花期には、われ先にと美を競うよう咲き誇るのです。立派な桜のうち162本は国の天然記念物に指定されています。
生憎もうすっかり桜の季節は終わっていましたが、むしろそのお陰で桜の立派な幹や枝ぶりはよく観察出来ました。武家屋敷通りにはサクラ以外にもカエデやナラなどの木々も植えてありましたが、通りは青々とした新鮮な緑に包まれて風情のある情景です。日本の美しき木造文化の伝統と矜持が今に継承され、映画『たそがれ清兵衛』のロケもされたのも納得の趣きがあり、時代劇の中にタイムスリップしたような感覚に襲われます。
全国各地の産地に行っても、ほとんどが駅と工場の往復で、観光名所などに行く暇もないのですが、今回は少しだけ時間がありましたので町並みを駆け足で散策(それでも30分程度ですが)。樺細工の茶筒を購入しようと思ったのですが、欲しかったサイズが想像以上に高額であったため懐具合と相談して心のカメラに留める事にして、もうひとつの手軽な角館のイタヤカエデのイタヤ細工『左馬』を購入。伝統工芸の歴史を応援するためにはそれなりの対価を払う覚悟も必要・・・
ちなみに秋田は戦国末期に、佐竹義宣が徳川家康によって国替えを命じられ、常盤国から秋田へ移住して初代の秋田藩主になった歴史があるのですが、町中に佐竹家の家紋『五本骨扇に月丸』が掲げてありました。義宣は、豊臣政権時には家康や前田利家らた並び六大将と呼ばれ、後に家康が『今の世にまれに見る律義者』と詠んだほどの名将ですが、『森のしるし・器材文様家紋』で佐竹家の家紋を作る際に資料調べをしていたこともあって、秋田が随分身近に感じられました。ご縁の種にどこにもある。
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