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社歴が長いという事は伊達ではないという事を明夫君を見ていて感じます。100年も続く日本でも希少な名栗専門店の矜持というものが、話をしているときにちょいちょいと言葉の端々に現れます。ベンチャービジネスなどでどんなに大きな会社に急成長しようとも、社歴だけはどの会社にも平等で毎年1年ずつしか刻めません。材木屋はその仕事の性質からも、100年を超える企業も珍しくない長寿産業ではありますが、だからといっていつまでもかつて栄華を誇ったビジネススタイルが通用するほど甘い世界ではありません。
特に住宅着工数が劇的に減少した昨今、木材産業の危機が悲壮感を帯びて声高に叫ばれるようになりましたが、そんな事は日本が少子化を迎えたずっと前から分かり切っていたこと。家が建たなくなれば、それに伴って住宅部材の供給が減っていくのは当然の流れ。これからも消費税増税の反動のような多少のプチバブルはあるかもしれませんが、大きな視点で見れば住宅着工数は減少の一途でしょう。そういう環境で材木屋はどうやって生き残っていくか、特に我々のような零細業者には行政の庇護などあり得ません。
自分の道は自分で切り拓いていくしかないのです。それを後々ひとは先見の明があったとか、時流にうまく乗ったとか言いますが、当事者は今を生きていくのに必死でそんな高邁な理念は後付けの事が多いもの。自分が気に入った材を仕入れて、自分が信じるものを作り、気に入っていただける人に売る、言葉でいえばシンプルですが、決して後悔せずにひたすら一心不乱にやり続けられる道としてはこれしかないというのがこのスタイル。職種にこそ多少の違いはあれど、大きな意味で明夫君とは向うベクトルが同じだと感じています。
橘商店でも名栗加工だけにとどまらず現在は、木にまつわる様々な仕事に積極的に取り組まれています。本来卸売行である橘商店が、一般の方や木工作家さんに直接木を販売するとして昨年から始めた『広葉樹フェア』や、木青連の仲間などを中心に内外の材の仲介などを行っているのもそのひとつ。取り組みの規模や効果の大小ばかり考えている人はいちまでたっても机上の空論を繰り返すばかりで足を踏み出せません。踏み出す一歩は小さくとも、自分の仕事に誇りを持って日々を楽しんでいるような材木屋と仕事の出来る喜び、これ至福なり。
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