森のかけら | 大五木材


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今日のかけら プレミアム020 【バーズアイメープル】 Bird’s eye maple   カエデ科カエデ属・広葉樹・北米産

今まで何度となくこのブログにも登場してきながら、「今更説明するまでもなく皆さんご存知の」的な感じで詳しく触れることなくスルーを繰り返してきたのが、この『バーズアイメープル(以下BEM』です。学生とかが木の事に興味を持つようになって、杢という分野を調べた時に一番最初に登場するのがこのBEMだと思います。個性的な杢の代表格としてそれぐらい有名で、弊社に木を求めて来られる一般のお客さんでも、この名前が出ると「名前は聞いたことがある」と言われる方がいらっしゃるほど認知度は高い木です。

なので、そんな有名な木をあえて説明するのはなんだか腰が引けるというか恥ずかしくもあって、ついついここまで引っ張ってきてしまいました。今月の端材コーナーで取り上げましたので、この機会に『今日のかけら』として取り上げます。このBEM、名前は知っていても実際に使ったことがあるという方は少ないと思います。なぜなら高額だからです。メープルの森があったとして、良質なBEMが採れるのは1万本に1本ともいわれるぐらいその希少性は高いのです。勿論この話にも諸説あります。尾ひれ背ひれがつくのも高級材ならではのある意味名誉。

BEMという種類の木があるわけではなくて、ハードメープルの中に小鳥の目玉のような小さな杢が無数に現われたものを、『バーズアイメープル(鳥眼杢』と呼んで分類しています。なのでその特徴はハードメールなのですが、加工する際に杢目で欠けたり、弾けたりすることがあるので、注意しないと高額な材が使い物にならなくなるのでご注意ください。当然その鳥眼杢が沢山広い面積に出れば出るほど価値は高まるのですが、弊社はそんな超高級銘木とは無縁の材木屋でして、大きなサイズのBEMは持ってもいませんしあまり興味もありません。

そんな立派な超高級銘木であれば、それに相応しい場所とそれを扱うに相応しいひとがいると思っているので、あまり高いレベルになってしまうと、嘘と思うぐらい急激に興味が無くなってしまうのです。なのでうちにあるのはBEMのミニミニサイズばかり。具体的には、320×105~120×24㎜程度の短くて薄くて狭い板。私が愛でるにはちょうどいいサイズ。何も大きいばかりが銘木ではありません。高いばかりが銘木でもありません。いかに人の眼を楽しませて愛でてもらえるかというのも、銘木の要素であり、ひとによって銘木の基準も変わるのです

ハードメープルには面白い杢が出やすく、BEM以外にもカーリーなど個性的な杢が出て眼を楽しませてくれます。絹糸光沢と呼ばれる独特の触感も滑らかで、品質の良さが比較的分かりやすい木だと思います。銘木なんて聞くと、お高いんでしょうとつい腰が引けがちですが、サイズが小さければ決して手が届かないようなものではありません。木工愛好家の方にはぜひ一度使っていただきたい。【森のかけら】の中ではプレミア36に分類していますが、さすがに35㎜角になると鳥眼杢がなかなかうまく取り込めなくて苦心しています。

 




乾燥に対する認識も甘々で、施工後に框や踏み台が暴れて、お詫びと補修のため職人さんと同行したことも二度や三度ではありませんでした。しかし、その経験が乾燥の重要性を心に刻ませることになるのです。フローリングとの相性もあったのですが、ミズメザクラだったら何とでも合う的な信仰に近い思い込みがあって、なんでもかんでもミズメを使っていました。長さ3m、幅400~500㎜、厚み70~90㎜サイズの踏み台が飛ぶように売れましたし、そういう現場が沢山ありました。類に漏れず当時建築した我が家の玄関にもミズメザクラが鎮座ましましています。

いろいろ事情がありまして結婚する前の、しかも広葉樹どころか自然素材への偏愛が生まれる前に自宅を建てたこともあって、これが多樹種偏執性嗜好症候群患者の自宅なの?と思われるぐらいかなりスタンダードな家になっています。今から25年ぐらい前の愛媛の和風建築の標準的な仕様になっています。今流行りのデザイナー住宅とは一線を画すクラッシックな旧タイプです。そういう意味ではその当時にどういう木がどういう風に使われていたのかという事情を確認するモデルとしては最適ですが、今ならあんなマニアックな木を変態的な使い方をして、さすがこれぞ『ビーバーハウス!』と人を驚かせる(あるいは思いっきりドン引きさせる)家が建てられたのにと思ったりすることもありますが、バブルの時代だったからこそ建てることが出来た大好きな我が家。

我が家はミズメにこだわって選んだというわけではありません。当時はこういう仕様の框+耳付きの一枚板の踏み台のセットに対応できる材として、和風タイプであればミズメタモマツ、ケヤキぐらいしかありませんでした。そんな仕様の框や踏み台が収まる家となると、それなりのサイズの玄関ホールがあって、4mの無垢のフローリング(当時の言い方だと縁甲板)が敷き詰められることになるので、そのバランスが重要。その中にあってもミズメはあまり相手を選ばない(我々が勝手に思い込んでいただけ?)優秀な木でした

我が家は恥ずかしながら、フローリングはヒノキの厚貼り複合なのですが、経年変化でそれなりに色ヤケしていい感じのバランスになったと自分では満足しています。我が家のミズメはそこそこの浅い虎斑(トラフ)ですが、ミズメは赤身と白太の境界がハッキリしているので、そこに濃密な虎斑が絡んでくると一気に銘木的な趣が生まれてきます。残念ながら弊社にはそういう高級ミズメ材はありませんが。世代時代を越えて人気のあるサクラに比べていまひとつ認知度の低いミズメですが、気がついていないだけであなたの家のどこかにも使われている可能性があるかも?

 




さて、『梓(アズサ)』というと必ず出てくるのが「天皇陛下のお印の木」。皇室の方々には、身の回りの品々を区別する目印として、幼少時から「お印」を用いるしきたりがあって、上皇后・美智子様の『白樺(シラカバ』も有名ですが、新天皇陛下のお印は梓。私もよく知らなくて、調べてから分かったのですが、そのアズサはこのブログで書いてきたアズサとは梓違い。というのもアズサという名前で呼ばれる木はいくつかあって、その1つが『ミズメザクラ』ですが、他にノウゼンカヅラキササゲのことも指します。

アズサの別名で呼ばれる木は多くて、私が知る限りでも前述の2つ以外に、アサダ、アカメガシワ、オノオレカンバ、ナナカマド、ニシキギなどがあります。全国的に調べれば恐らくもっと多くの木が該当すると思われます。ここまで書いていて、はたと思ったのですが、前述したアズサのエピソードのアズサって、もしかしたらミズメザクラではなくて別の木の事だったのだろうか?アズサに関わらず、まったく違く種類の木が別名を共にするってことは植物の世界では多いので、その木にまつわるエピソードについても誤認と誤用が多々あります。

私なんかはそのおおらかさというかいい加減さ、曖昧さなんかが好きなんですが、中にはそれは間違っている!と鬼の首を取ったかのように小さな誤りを指摘して世の乱れでも直そうかという心の狭い方もいらっしゃいます。木の名前なんて政府が官報で、本日からこの木の名前はOOにします。なんて決めるものではなくて、人々の暮らしの中で親しまれ利用され語られ伝えられ、変化しながら作られていくものだと思うので、仮にその名前が正しくない名前であったとしても、その地域ではその名前で通ずるのであればそれはある意味その地域では『正しい名前』なのだと思うのです。

しかしそれにしても、決して硬質ではないキササゲになぜアズサの別名がついたのかがよく分かりませんが、いずれキササゲの木を入手出来たら謎が解けるかも?!最後に、具体的なミズメザクラの用途として、恐らく愛媛でもっとも頻度が多かったと思われるのが、玄関の框と踏み台。その供給を主として担っていたのは九州は宮崎産のミズメ。銘木屋さんが框と耳付きの一枚板の踏み台をセットで販売していました。まだ仕上げは植物性オイルで塗装するという認識の無い時代、乾燥の甘い材をガチガチにウレタンで固めたりしていました。まあ当時は、それが当たり前でした。




ミズメザクラ』のもっと有名な全国的な別名は『アズサ(梓』。昭和40昭和年代生まれとしては、その名前を初めて聞いたのは、1960年代の日本歌謡界に彗星のごとく現れた歌手・梓みちよ。ではないでしょうか。大ヒット曲「二人でお酒を」は、子どもだった私にはムード溢れるおとなの歌謡曲でした。それで、梓という言葉を覚えましたが、それが木の名前だと私が知るのは材木屋という仕事をしてからしばらく経ってからのことです。その後、結婚してから定期的に我が家に届くある冊子のお蔭でより強く『梓』を意識するようになります。

この文章を書いていて、そういえばこのくだりは書いた気がすると思ってブログを読み返してみたら、以前にも水目桜の材質を紹介するにあたって同様の事を何度か書いていました。という事は、その時にももっと詳しく話を掘り起こして『今日のかけら』に広げれる機会はあったはずなのに、やはりミズノの名前のややこしさや実例の乏しさから諦めたのだと思います。ということで、その際にも持ち出したのが、家内が大学時代に所属していた愛媛大学の弓道部の部誌のタイトルが『梓弓』。それは、弾力としなりのある梓(=ミズメザクラ)が、弓の素材として利用されていたことに由来しています。

では梓(アズサ)とは何ぞやというと、雄花の尾状保穂が重なり合って小枝の端から垂れ下がるさまを厚房(あつふさ)と呼んだことがアズサに転化したのだそうです。歌手の梓みちよさんの芸名の由来は知らないのですが、彼女の本名が林美千代という事なので、もしかしたら「林だから梓」的な連想があったのかも。なおアズサもヤマザクラに似て、材質に艶があって色気がある木なので、そういう部分も命名に作用したと思ったとしたら深読みか?歌謡曲の事を書いていて梓つながりで思い出したのが、兄弟デュオ・狩人が歌った『あずさ2号』。私がまだ小学生だった頃、1977年の大ヒット曲です。

乗ったことはありませんが、改めて調べてみると、新宿駅 ~松本駅間で運転を開始した臨時夜行準急で、名前の由来は松本市の近くを流れる「梓川」(犀川の上流域)にちなんでいるそうです。恐らくその辺りにアズサが生えていたんでしょう。材としてのアズサはヤマザクラと同じような用途に使われてきました。三味線や琵琶の胴などの楽器や器や盆などの漆器木地にも利用されてきましたが、材質が滑らかで堅牢なこともあり版木としても珍重されました。本を出版する事を上梓(じょうし』と言いますが、それはかつて版木にアズサの木を使っていたことの名残でしょうか。明日につづく・・・

 




そういう経験が後に私を『多樹種偏執性嗜好』へと走らせる布石になったのかもしれません。まあそんな感じでしたので、何か正体のよく分からない硬質でサクラっぽい木はなんでもかんでも『ミズメザクラ』。それが正しいのかどうかすら判断する基準もないし、当時はそれであまり困ることもなかったし、そういうもんなのだと思っていました。その後、橋も整備され県外の大きな市場に仕入れに行くようになって、いかに広葉樹に対する認識がいい加減であったか、その呼び方がどれほど適当であったかを痛感させられるのです。

大五木材における広葉樹の目覚めはそうして起きるのです。ところで、サクラっぽいのはミズメと言っておけば間違いないと教わっただけあって、サクラとミズメはとてもよく似た性質をしています。そういう分類でも問題が生じなかったのが納得できるほど質感も滑らかで、持った時に掌にズシリと響く重さも双璧。ただしミズメは、カバノキと同じカバノキ科で、バラ科のヤマザクラとは別の科です。ミズメ(水目)という名前は、ナタで樹皮を傷つけると、湿布のような匂いがして、透明な水のような油が染み出してくることに由来しています。

このミズメザクラには変わった別名が多くてややこしさに輪をかけているのですが、数ある変名の中でも命名者がこの木に何かの恨みでもあるのではないかと思わされるのが『ヨグソミネバリ』!樹皮を傷つけた際に出る異臭を、こともあろうに夜糞にたとえているのです。漢字で表わすと『夜糞峰榛』。ミネバリは、同じカバノキ科ハンノキ属の『ヤシャブシ(夜叉五倍子』の葉と似ているので、ヤシャブシの別名である『ミネバリ(峰榛』からきています。ミネバリとは、山上に生える榛(ハリノキ)の意味。既にややこしい💦

しかしよりにもよって名前の中に「糞」の字が入れられるなて気の毒としか思えません。地域によっては、同じカバノキ科の『オノレカンバ』の事を『ヨグソミネバリ』と呼ぶこともあります。このあたりの解釈は図鑑や文献によっても結構混乱がみられます。どこに住んでいる著者が書いたかによって判断がまちまちなのかも。愛媛ではミズメをその別名で呼ぶのは聞いたことがありません。図鑑を読むまでそういう別名があることすら知りませんでした。とりあえず【森のかけら】では『ヨグソミネバリ』は『オノオレカンバ』の別名としています続く・・・

 




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