森のかけら | 大五木材


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昨日に続いて危険な有毒植物キョウチクトウ(夾竹桃)のお話し。伐採して数時間というの新鮮なキョウチクトウの幹と枝をいただきましたが、結構な老木だったためか小口から樹液が滴り落ちるようなことはありませんでした。それでもよく見ると白い樹液が固形化したような跡が。この白い樹液が危険なのです!しかし、この木を『森のかけら400』にも加えるつもりならば、滴り落ちる「白い悪魔」の姿もカメラに収めたい!という事で会社に持ち帰って枝を切断。するとジワジワっと「白い悪魔」が樹皮の間から滲み出てきました。

その姿はしかとカメラに収めたものの、次はこれが本当にどれだけ強い毒性なのかを試してみたいという悪魔の誘惑が私の心を支配。だからといって直接触るのは危険すぎるので(造園屋さんは、伐採する時に多少腕とかにつくけど少し赤くなって痒くなるぐらいよ、と豪快に枝を掴んで渡していただきましたが、子供のころから「もち肌」で有名な私のデリケートな皮膚には脅威です。体に付着しないように切断面を下に向けて容器に「白い悪魔」を集める作戦を実行したものの、枝が小さかったせいか容器に貯まる前に樹液が固まってしまい計画失敗。

私があまりにヘタレすぎると思われるでしょうが、その毒にまつわる事故を挙げれば私の警戒心が少しはご理解いただけるかも。古くはアレキサンダー大王の軍が野営をした際に、この木の枝を串にして肉を食べたところ多くの兵士が死亡したという逸話に始まり(イメージをイラストにしてみました 笑)、1975年にはフランスで枝をバーベキューの串にして死亡する事故、1980年には乾燥したキョウチクトウの葉が牛の飼料に混入していて、それを食べた20頭の牛が9頭毒死した事故などがあります。日本でも西南戦争の時代には官軍の兵士がこの木の枝を削った箸で弁当を食べたら集団食中毒を起こしたという記録があります

ミステリー小説にもトリカブトと並んで、植物による殺人凶器として描かれることもあるほど恐ろしい植物なのです。そんな危険な木を学校教材にも使われる『森のかけら』に加えてもいいのかと思われるでしょうが、液汁は幹全体から出てくるわけではなさそうだし、完全に乾燥してしまえば大丈夫なのではないかと考えています。実際に乾かして様子をみてから最終結論は出しますが、木からすれば外敵からはわが身を守るための武器であり、その毒も使い方次第では薬にもなる(強心剤や利尿剤)ので、悪い先入観を捨ててフラットな気持ちで向き合ってみます。




念ずれば花開く」は、愛媛県の偉人・坂村真​民さんの言葉ですが、まさに思いは願っていれば叶うという事を実感する事がありました。いま取り組んでいる、世界一の多樹種の木カタログ『森のかけら400』に是非とも加えたいと思っているのが、国内最毒樹木ともいわれる『キョウチクトウ(夾竹桃)』。400種になるとかなりマニアックな木も含まれてくるのですが、その中でも強い毒を持つ木・キョウチクトウは話題性抜群。数年前にたまたまその端材を手に入れたのですが、その時からずっと思っていました、「いつかはクラウン、いや、いつかはキョウチクトウ。」

森のかけら』では、それぞれの木の解説文の原稿を書いているのですが(全400種を新たに書いてます)、背景の逸話には事欠かない木もあれば、わずか200文字を埋めるにも頭を悩ませるようなネタの少ない木もあります。そんな中でキョウチクトウは特集ページを組みたくなるぐらいエピソードも豊富で、どうやって200文字に凝縮させるかで苦労します。なのでここで説明する間でもなくご存知の方も多いと思います。問題は安定的に材を確保できるかどうか!ダメもとで造園屋さんにお声がけをしていたら・・・キョウチクトウ伐ったから取りにおいでと神の声!

今持っている端材では、かけら20個分もありませんので、さすがにいつか手に入るだろうの見切り発車は危険すぎて踏み切れませんでした。今回分けていただいたのは、個人の庭にあったのですが根が張りすぎて塀を倒しそうなので伐採したというものですが、根元の方だと直径300㎜を越えます。内部には多少腐りもあるものの、これだけの大きさがあれば『森のかけら』を作るには十分。注意しなければならないのはその毒性!心臓に作用を及ぼす強心配糖体という物質が植物全体に含まれています。

もっとも多く含まれているのがオレアンドリンという成分で、致死量わずか0.3mgという非常に強い毒性を持っています。インドや中近東原産の植物で江戸時代中期に中国から長崎に渡来しました。赤と白の花が美しく公害にも強いことから街路樹工場地帯の緑化樹としてあっという間に全国各地に広がりました。愛媛県内でもよく植えられていて、いつか伐採しないかと目をつけている場所はあるのですが、とても自分では伐採する勇気がありません。あまりの及び腰具合に、伐採された造園屋さんからは「樹液にさえ触れなければ大丈夫よ」と笑われましたが・・・




今日のかけら番外篇・E051ヒマラヤ杉Himalayan Cedar   マツ科・針葉樹

週刊誌やテレビのワイドショーの芸能人のゴシップにはほとんど興味が無いのですが、たまたまだとは思うのですがちょっとだけ気になる話がありました。それは先日亡くなられた俳優の田村正和さんの話。訃報が伝えられたのは死去から1カ月半後だったそうですが、自宅で療養中に奥様と近所の公園を散歩される姿が目撃されていたそうです。その公園には大きな『ヒマラヤ杉』が植えてあって、その前に立ち止まり二人で灌漑深くヒマラヤ杉を眺められていたのです。

ヒマラヤ杉の花言葉は『あなたのために生きる』である、という内容の記事でした。ご夫婦がヒマラヤ杉の花言葉をご存じだったか、どういう思いで眺められていたのかを知る由はありませんが、ちょっと胸にグッと来る話でした。このエピソードが気になったのは、その木が『ヒマラヤ杉』だからというだけではないのです。実はその日の午後に初めてご来店された中年のご夫婦が倉庫内を巡られて、数日前から発売を始めたばかりの『ヒマラヤ杉の小枝の輪切り』をお買い求めいただいたのです。

その夫婦はその記事を読まれて『ヒマラヤ杉』を探されていて、たまたまSNSか何かで弊社の『ヒマラヤ杉の小枝の輪切り』を見つけて、それ目的でご来店されたのか、あるいはたまたま偶然で田村正和さんの事はご存じなかったのかもしれませんが、小枝の輪切りの他にも数ある中でヒマラヤ杉の端材も合わせてご購入されたので、偶然にしてもヒマラヤ杉がとりもってくれたご縁です。そのヒマラヤ杉も次の『森のかけら400』には加える予定です。原産地はアフガニスタンからネパール西部にかけてのヒマラヤ山麓地域です。

景観植栽の樹木として人気で世界中に広がり、コウヤマキ、ナンヨウスギとともに世界三大庭園木とも呼ばれ、町の中の公園などにも結構植栽されているので、用材として見たことは無くても立木としては見たことがある人は多いと思います。スギの名前がついていますが、植物学的にはマツ科ヒマラヤスギで、スギよりは末の仲間に分類されます。日本には明治初年に渡来しましたが、その後急速に全国に広がりました。それだけあるのだから多少は用材として流通してもいいと思うのですが、典型的な『町の木』なので『都市林業ルート』でないと得にくい木です。この木の学名はdeodara(ディーアダー)と言いますが、これは「神々の木」を意味するサンスクリット語のデヴァダールに由来しています。これからヒマラヤ杉を見るたびに名優・田村正和さんの事を思い浮かべそうです、合掌。

 




ウォーターガムの仲間のクローブツリーですが、もともとマレー諸島の限られた地域にしか分布しておらず、莫大な富をもたらすクローブを求めてイギリスやオランダ、ポルトガルなどで血なまぐさい争いが起きたといわれています。クローブは珍味な香料としてだけではなく病気治療にも使われてきました。クローブの飾り物を身に着けるとペストに効果があるなどの迷信もあり、獲得競争がより過熱しました。現代でも鎮痛剤や抗炎症作用があることから医療にも使われています。

クローブのエッセンシャルオイルには殺菌作用があるため歯科のマウスウオッシャーにも使われています。その樹皮にもタンニンが含まれていて皮なめしに用いられたり薬用に使われるなど、材としてよりも花や樹皮の方が有用な木のようです。ということでここから話をウォーターガムに戻します。同じフトモモ科のユーカリ属の一部の木はゴムが採れることか「Gum tree」とも呼ばれているので、もしかしたらこの木からも天然ゴムの原料となる樹液が採取できるのか、それとも「ガム(Gum)」には木の樹皮からしみ出る樹脂あるいは樹液の意味があるので、総称として名づけられているのかも。

頭の「ウォーター」については、普通に考えれば水辺に生える木という意味ですが、資料によれば分布域は砂質粘土壌や海岸に沿った砂岩大地が最も多く一般には低地から1,500m以上の丘陵高地帯とあるので、もしかしたら気乾比重が1に近いものもあることから水に沈む木(沈木を意味しているのかもしれません。材を触った感覚としては後者の沈木由来の方がしっくりきますが果たしてどうか。材としての特徴としては、比重に重硬なために乾燥には時間がかかりますが、乾燥に伴う小口割れが多く見受けられました。人工乾燥は難しそう。

海外では大きな原木から化粧ベニヤの突板なども採られていうようですが、日本に輸入されるのは基本L.M.Hなので、そこまで装飾的な価値のある出口に導くのは難しそうです。耐久性はあると思われるのですがキクイムシによる食害が多く、強度を求められるパレットやダネンージ材(荷物を固定する荷敷材)などに利用されてきたのも頷けます。この木ならではの出口を見つけるのは簡単ではなさそうですが、一族の仲間がクローブ(丁子)だったなど知らなかった関係性が分かっただけでも大きな収穫。私にとってM.L.Hは心楽しき未開の世界!




本日は『ウォーターガム』という名前とその用途についての話。まずこの名前ですが、種類が1,000を越えるということもありその名前も地域によってさまざま。日本ではほぼ『ウォーターガム』で定着していると思うのですが、その名前で呼んでいるのはパプアニューギニア。分布している東南アジアの諸国では国ごとに名称が異なります。ミャンマーでは、タイではWa、ベトナムではTram、フィリピンではMakaasimなどなど。マラヤではKelatと呼ばれていて、この日本語表記の『ケラット』として掲載している樹木図鑑もあります。

まあこれらとて果たして同一の木を言いあらわしているのかは定かではありませんが。『森のかけら400』にはウォーターガムを加えるにあたり、この木の解説文を書こうと調べ始めたのですが、決定的な出口が定まらない木なので何か特徴的な事が書けるのか不安でしたが思わず繋がりが分かって思わず膝を打ちました!やはり好奇心旺盛にいろいろなところにアンテナを上げておくものだと思いました。この木の果肉は食用にもなるようです食用目的の栽培も多いらしいのですが、それ以上に価値があるのが強い芳香を持つ花(花の蕾)

それは1,000を越えるウォーターガムの仲間のうち、モルッカ諸島原産のEugenia caryophyllataという木で、その花の蕾を乾燥させると更に刺激的な匂いを放つ香料になり、スパイスカレーなどの香辛料(クローブ)に使われます。そのため『クローブツリー( Clovetree』とも呼ばれています。最近の本では学名がSyzigium aromaticumと記載されています。研究が進んだ結果学名が変わるということもあるので何かあったのかもしれません。ウォーターガム=クローブツリーではありませんが、「スパイスの木の仲間」と分かっただけで途端にウォーターガムが身近に感じられるようになってきました。

さてご縁を感じたのはここからで、そのクローブは江戸時代に胡椒と共に伝来し、香料として匂い袋などに入れられ人気を博したそうですが、日本では「丁子(ちょうじ」と呼ばれました。この丁子が仏教では瑞祥的な意味が込められた宝物とされていたため、公家や武士たちが競って家紋に取り入れました。家紋のマグネット『森のしるし』を作った際にこの「丁子紋」が出てきたのですが、大根のデザインだとばかり思っていて丁子と知ってもピンときませんでした。それが今回ウォーターガムとつながり、ここでも繋がるか~!(無知だっただけですが)と独り興奮を隠しきれません。




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