森のかけら | 大五木材


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仙女が柘の小枝に化けていて、それを拾った漁師が家に持ち帰ったら、人間の美しい女性になって二人は結婚しましたという話ですが、後日談があってその後夫婦は幸せに暮らしていましたが、やがて美女は天に帰ってしまったというもの。『竹取物語』に代表される昔話によくある天に帰還するパターン。この神話が何かを暗示、暗喩しているのかはよく分かりませんが、問題なのは、その時代にはヤマボウシ柘(ツミ)と呼ばれていたという事。現在では、柘の漢字は印鑑や櫛などに使われる『柘植(ツゲ)』に使われています。材質が硬くて摩耗性に優れている特徴は、まさに木編に石のごとく。

その柘という漢字がなぜヤマボウシに当てられているのか?柘はツゲ以外にもヤマグワ(山桑)にもあてられています。このあたりからややこしくなるのですが・・・木材業界で一般的にクワといえばヤマグワの事を指します。クワの仲間にハリグワ(針桑/学名:Cudrania tricuspidata) という種がいて、これは中国及び朝鮮半島原産で、養蚕の餌として明治期に日本に渡来しました。このハリグワの漢名が柘樹・柘桑というらしいので、そこからクワ全般の事を柘と表わすようになったのかも(推測ですが)。

クワの果実は、別名「マルベリー」とも呼ばれジャムやお酒なども人気ですが、ヤマボウシにも熟すると赤くなってクワによく似た実がつきます。そのためヤマボウシの事をヤマグワ、ヤマクワと呼ぶ地域もあります。それでようやく繋がるのですが、本来はクワを指していた(と思われる)柘の漢字がヤマボウシにも使われるようになり、柘枝伝説が生まれた・・・いや、いや、それでは奈良時代の末期(759年~)に編纂された万葉集に柘の漢字が出てくる説明にならない。よく分からなくなってきたので今回の推察はここでお手上げです。

そもそも柘実伝説の小枝がヤマボウシではなくヤマグワのことだったのかもしれませんし、なにより神話世界の話なのでそこまで樹種の特定など必要なくて後付けで可憐なヤマボウシが当てられたのかも。川上から流れ着たモノが川下の者(名前も味稲!)に富を与えるという話は、太古からの水信仰や稲作信仰にも相通ずるものがあり、用途の広いヤマグワの方がしっくりいくような気がしないでもない。とはいえヤマボウシも気乾比重は0.88で木目は蜜で材質は堅く締まっているので柘の名前にも相応しい木ではあります。




昨日に続いてヤマボウシの名前の起源についての考察ですが、日本書紀の時代(720)に既にヤマボウシと呼ばれていたということは、延暦寺は延暦7年(788年)に創建されたという事ですので、延暦寺の僧侶に見立てたという説は後付けっぽいですね。そうなると浮かび上がってくるのが倉田悟氏が著書『植物と民族』と唱えられている説。その説は「ヤマボウシの実は人々の眼をひき、丸くてぽつぽつとお釈迦様の頭のように凸起のあるその実は、しばし法師の頭とみなされている」というもので、僧侶の頭巾由来とは異なります。

頭状をした花序や包みの色にもとづく僧侶の頭巾説と、果実の形由来説があります。咲いた花を見ていれば僧侶の頭巾説がもっともだと思うし、花が落ちて果実だけになった姿を見ればお釈迦様の頭のように思えるし、いずれの説も先人たちがいかによく植物を観察し、それを何かに例えて表現しようとしたかがうかがいしれて実に面白いです。材質が硬い、やわらかい、加工具合がどうといったマテリアルとしての話以上に、私はこういった木の名前の由来や背景などについての話が大好きです。木の楽しみ方はひとそれぞれ♪

植物の名前の呼び名による混乱も私にはある種の謎解きのようで楽しい。こういう理由でその呼び名が通説となったのかという事が分かった時の快感といったら、汚れを落としたら予想外の杢が現れた時のそれに匹敵!ヤマボウシについても気になる事があったので今回改めて調べてみました。ヤマボウシの古名は『柘(ツミ)』というらしく、古くは万葉集にその名が出てきます。中でも有名なのが若宮年魚麻呂(わかみやのあゆまろ)が詠んだとされる「この夕(ゆうへ)柘(つみ)の小枝(さえだ)の流れ来(こ)ば 梁(やな)は打たずて取らずかもあらむ」という句。

これは日本の神婚伝説の1つとされる『柘枝(ツミノエ)伝説』に基づいたものです。昔、大和国吉野川で漁を業とする味稲(ウマシネ)という若者が,川に梁(やな/魚を捕るための仕掛け)打って鮎を捕っていたらある日、上流から柘の枝が梁に流れてきたので、その柘の枝を拾い取って家に持ち帰ったところ小枝は美女に変じて二人は結婚したというものです。その伝説の事を詠ったのが若宮年魚麻呂の句で、仙女が化したという柘の枝がもし流れてきたならば、梁を打つような手荒な捕らえ方をしないで、それを取れないものだろうかという内容だそうです。明日に続く・・・




★今日のかけら・#116【ヤマボウシ/山法師】ミズキ科/ミズキ属 ・広葉樹・宮城産

 

自宅の東側に植えている『ヤマボウシ(山法師)』が可憐で美しい白い花を咲かせていたのは5月も半ばの事でした。今年はその姿もカメラに収めていたので、いまだに手つかずだった『今日のかけら』のヤマボウシの項を埋めようと思っていたらすっかり忘れてしまっていました。その事に気がついたのは、先々週にすっかり伸びてしまった庭木の手入れをした時。ついでにヤマボウシの枝を剪定していた最中に、そういえば以前に花の写真を撮っていたなと・・・。そんな事の繰り返し。

ということで写真もようやく蔵出し。ヤマボウシという変わった名前の由来ですが、花に見える中央の球形の花序を僧侶の頭に、それより下の花びらに見える4枚の総苞片を白色の頭巾に見立てて比叡山の延暦寺の山法師になぞらえたものだと言われています。比叡山延暦寺の僧侶と聞くと、私は織田信長による比叡山の焼き討ち(1571年)の事を連想するので、僧侶のイメージも屈強で戦闘的な集団のように感じてしまい、可憐なこの花とどうしても結びつきにくいのです。

私の中では勝手に信長と対峙する僧侶=山法師=ヤマボウシとなっているだけなのですが、果たして本来のイメージはどうだったのか?寺院の僧侶が武装するようになったのは、大寺院が巨大な荘園を持つようになった平安時代の中期とされています。寺領を守るために僧侶が武装するようになりました。その頃から「戦う僧侶」がいたということですが、ではヤマボウシはいつ頃からそう呼ばれていたのか?細見末雄氏の著書『古典の植物を探る』によると、ヤマボウシという名前が初めて現れたのは江戸時代後期『物品識名』(1809)において

 

それまでは美濃尾張地方の方言名であったヤマボウシという呼び名が標準和名として採用されたのだと書かれています。それまでは、『日本書紀』(720)に出てくる『イツキ』がヤマボウシの古名で、江戸時代まではイツキが標準和名だったとされています。愛媛県においても新居浜市西条市の一部では今でもイツキの名前が使われている地域もあります。このイツキは、ケヤキの古名のツキ(槻)とは関係が無いようです。日本書紀の時代から僧侶の頭巾に見立てられていたということは・・・明日に続く。




昨日の7月5日の『大五の日』は、平日開催であったにも関わらず沢山の木工ファンが集まっていただきました。そのバイヤー並みに大量にお買い上げいただくツワモノも!多くが何度もご来店いただいている常連さんで、何をなさっている人か、どういうものを探されているのかまで分かるようになりました。お客さん同士の交流もできてきているみたいで、いろいろな情報も入ってきてありがたいです。〇〇さんがこういう木を探していたよとか、今度こういうお客さんを連れてくるよとか。半年開催しているとぼんやりと傾向が見えてきて面白いです。

開催曜日によってご来店される職業が偏っていたり。職業によっては月曜日が休みだったので来れたとか、水曜日開催なら毎月来れるのにとか。それだけ木工ファンが多岐にわたっていることの証明でもあります。曜日に関係なく毎回必ずご来店されるコアな方も数名いらっしゃいましてスタッフ並みに働いてもらうことも!今回もお弁当作家の尾原聖名さんがお出ましいただきました。前回はオシャレなメニューでしたが、今回は肉体労働をする弊社向けに、ガッツリ食べれるメニューを考えていただきました。その名も『大五飯』!

『大五の日』は、大五木材木材女子部(3人ですが)の提案で始まったものです。私自身は、それで木工好きな人が2,3人でも増えればいいかぐらいの最初は軽い気持ちでしたが、今やすっかり大五木材の顔となりつつあります。弊社の女性スタッフは皆一芸持っていて、経理の高橋正子さんは趣味で木工教室に通っていて糸鋸の腕前はかなりのもの!経理の事務作業の合間にも糸鋸の前に立って作品を生み出してくれています。当初は、外注するよりうちで出来るならという程度でしたが、次第に技術もアップしてきて今では製作体制の重要なキーマンに!

上の写真は正子さんが糸鋸で作った鋸。たまたまあった端材のもと形を行かしています。自然素材全般を担当してくれている石川奈々さんは絵心のある人で、以前に事務所のトイレの壁面アートを紹介しましたが、事務所のいろいろなところに彼女の作品が溢れています。こちらも変形の端材に手を加えて作ったもの。小学生の男の子の母親らしい、車好き男子の心をくすぐる作品です。いずれもアマチュア工芸ですが「こんなモノ作れた~」というものを作る喜び、楽しさに溢れています。こういう作品作りたい方、大五の日でお待ちしてます!




本日7月5日は、毎月恒例の『大五の日』です。今年の1月から初めて早や半年が経過、ご近所の方だけでなく遠方からのリピーターも増えてきました。今月は平日開催なうえに梅雨も明けきらない不安定な天候ということもありますが、熱心な木工ファンの皆様のご来店をお待ちしています。以前は木工をするために端材を求めてやって来られる人と、小さなお子さんと一緒に木のおもちゃを求めてこられる人とにキッチリ分かれていましたが、最近はその境界が溶けてなくなってきていて、先におもちゃ、後で端材とか大五木材全部を見てやろうという方が増加傾向にあります♪

木材については、出来れば地元の木を使いたいという流れは続いていて、『愛媛の森コーナー』で材を探される方が多数。毎度同じ木ばかりでも面白くないので、今月は愛媛生まれのセンペルセコイア』もいつくか加えました。世界で一番高い木で知られる『ジャイアント・セコイア』の一族ですが、愛媛の某所で植えられていて伐採されたものです。名前からして期待値が高そうなんですが、見た目は赤身がやや鮮やかなスギ。それでいて匂いはカイヅカイブキのようなアロマティックな香りがします。成長スピードも速いのでかなり目荒。

これから木工を始めたいという方からよく訊かれるのが、「この木は何に使えるのですか?」と「木工に向いている木は何ですか?」という質問。親切・丁寧が売りのホームセンターとかであれば懇切丁寧に回答してくれるのかもしれませんが、生憎ここは偏屈材木屋木を買う時、すべてに用途を想定して買っているわけではありませんし、木は人間のために生まれてきたわけではありません。自分で考えながら試しながら悩みながらするのが木工の醍醐味だと考えてていて、とりわけ出口を考えるなんて最大の面白味を他人に委ねてしまうなんてなんとモッタイナイ!

機嫌が言い時であれば、つい質問に答えてしまうかもしれませんが、およそ300種類ぐらいの材種があるので、出来ればトライ&エラーで自分に合った探してみてください。私としては出来れば既存の定型的な「この用途にはこの木」という定説を超えたような『適材適所』を見つけたいと思ったいますし、見つけていただきたい。とりわけM.L.Hのような無名校の中に潜んでいるであろう千賀投手甲斐捕手のような宝石の原石を見つけだして育て上げ、木材図鑑に新たな用途を書き加えたいと夢見ているのです




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