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ケヤキは、ニレ科ケヤキ属の広葉樹で、本州から四国、九州にかけて広く分布しています。とりわけ関東地方に多いのは、上州などの空っ風対策として屋敷林に多く植えられ、関東の黒土という土壌によく適したことがその理由ではないかと言われています。樹形の美しさ、雄々しさ逞しさもケヤキの特徴のひとつで、竹ぼうきを逆さまにしたように四方八方に枝葉を広げたさまは、まさに広葉樹の王様に相応しい貫禄が満ち溢れています。
漢字では「欅」あるいは「﨔」と表わしますが、少し離れたところからこの木を見ると、枝のひとつひとつが一斉に空に向かって伸び、あたかも拳を天に突き上げているように見えることが名前の由来とされています。またその枝葉の多い姿形を表現しているとも。中国ではこの「欅」という漢字は「シナサワグルミ」を示し、ケヤキは「欅楡」と表わされるようです。いずれにしても欅という漢字は、木の特徴を端的に表わしていると思います。
私の生まれた昭和41年、東京では「東京の木」を決めるための都民投票が行われました。選定委員会があらかじめ決めておいた3つの候補の木の中で1つを選ぶというものです。その候補は、イチョウとソメイヨシノとケヤキ。イチョウもケヤキも街路樹として多く植えられ、都会の中のオアシスとして親しまれてきた木です。委員会では圧倒的にケヤキを推す声が多く激しいデッドヒートになりましたが、投票の結果はイチョウに軍配が上がりました。
明治時代に発刊された国木田独歩の随筆『武蔵野』は、武蔵野(昔の関東地域)の風景美を謳ったものですが、それは独歩の実体験に基づいているとされています。独歩が、もはやどこまでも続く武蔵野の原野は遠い過去の話で、今そこには広大な林(雑木林)が広がると述べていますが、明治時代の武蔵野の地にはケヤキをはじめとする雑木林が群生していたようです。ケヤキは関東に根づき関東人に愛され続けてきた木なのでしょう。
そんなハイリスク&ハイリターンの材を百戦錬磨のベテラン材木屋たちの皆さんと競り合う度胸も資金もありませんでしたし、身近なところでケヤキの教えてもらう人もいませんでしたので、銘木としてだけではなくケヤキそのものが次第に遠い存在になっていったのです。そこで、私は王道から逸れ、当時まだ手掛ける人の少なかったアフリカやヨーロッパ、中南米、東南アジアなどの特殊な木の世界に舵を切ることになっていったのでした。
生来、偏屈でひねくれ者なところがあって、圧倒的な力も持つ者やNO.1と呼ばれるものにはことごとく逆らってしまうのです。そんな事で、銘木の王様に背いた罪として、徐々にケヤキとの距離が開くようになり、祖その後自ら進んでケヤキを仕入れることも無くなったのです。当時はまだ銘木屋さんが幾つも健在でしたので、立派な銘木を購入するチャンネルも多く、自ら距離を置いた事により、次第にケヤキとのご縁も減っていきました。
自ら撒いた種でもありますが、一種のトラウマのようなものだったかもしれません。そのことが結果的に苦手な樹種を作ることになってしまい、ケヤキに対する無知でその後長らく苦労することになりました。やはり木は実際に取り扱って、見て触れて担いでなんぼのものです。しかしその反省が、木材に貴賤なしの精神で、すべての木に同じ価値を持たせる【森のかけら】の開発へとつき動かしていくわけですから世の中皮肉なものです。
いつまでも不得意な材を作っていては仕事にも支障が出るという事で、数年前からは少しずつケヤキも仕入れることにはしましたが、やはり貧乏性な性格が災いして、1枚で数十万もする高級銘木のケヤキの大黒柱や床板にはなかなか手が出ず、久万高原町産の小さな丸太のケヤキあたりから徐々にリハビリを始めているところです。という事が、弊社にケヤキの在庫が少ない事の理由でしたが、明日からはケヤキの特徴についてたっぷりとお話します。
★今日のかけら・#043 【欅/ケヤキ】 ニレ科ケヤキ属・針葉樹・宮城産
今まで多くの種類の木について材木屋の視点で書いてきましたが、日本の広葉樹を代表する『ケヤキ(欅)』について触れてこなかったのは、そういう機会がなかったわけではなく、あえて避けてきたのです。街路樹や公園などにも広く植栽されているケヤキの名前と姿を知らない人はいないでしょう。日本人にとっても馴染みの深い木のひとつです。建築業界においてもその存在感は別格で、古来よりあまたの社寺仏閣建築に用いられてきました。
ケヤキが使われるようになった時代背景は後術しますが、材としての利用は社寺仏閣にとどまらず一般住宅でも広く使われてきて、木としても材としても『日本における広葉樹の王』の地位を揺るぎないものにしてきました。なので、その性質や特徴、魅力などについては多くの書物に書かれで、口伝としても語られてきました。それほど広く認知された木を今更という気持ちもありましたし、それとは別にケヤキに対しては特別な感情も。
それは、私がこの仕事に就いた20数年前の話。その当時もケヤキは銘木中の銘木の存在でした。今ほどいろいろな種類の外材も流通していませんでしたので、木材市場においても立派なケヤキが出材されるとそのコーナーは異常な盛り上がりで、市場の華というべき存在でもありました。そんな銘木のケヤキを、ベテランの材木屋たちが数十万の値段で競り落としていく様は颯爽として威勢がよくて、私には眩しすぎる光景でした。
ケヤキの銘木は上手に仕入れれば、数倍に化けることもあるハイリターンの魅力がある木です。ところが、材の癖や素性を読み切れないと在庫している間に大きく反ったりねじれて暴れたり割れたりしてまったく使い物にならなくなってしまう事もあるハイリスクの側面も持っています。つまりケヤキは『目が利かなければ買えない木』なのです。経験も浅く、ノウハウもない当時の私にとってケヤキの銘木は手の届かない高嶺の花でした。
| 昨日に続いて、『カイヅカイブキ』の話。名前そのものの由来は分かりづらくとも、その存在感はピカイチで、最初に私が材としてのイブキに出会ったのは10数年前のこと。市場で見かけたイチイのような赤身とその香りに引き寄せられました。先日『今日のかけら』でご紹介した『ネズミサシ(ヒムロ)』に似た特有のツンと鼻をつく香りがします。個人的にはこういうアロマのような香りのする木は好きなので、出会った時はその香りと物珍しさだけで仕入れてしまいました。 |
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★今日のかけら・♯016【イブキ/伊吹(貝塚伊吹)】ヒノキ科ビャクシン属・針葉樹・岐阜産
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さらに輪をかけてややこしいのが、「イブキ」と「ビャクシン」という2つの名前が浸透していること。江戸時代には別物の木とされて、それぞれに桧柏と園柏という漢字が使われていたりとかなり混乱してます。柏という漢字は本来、コテノガシワという木の漢名なのですが、鱗片状の葉をつける木(ビャクシン類、ヒノキ類、コテノガシワ類、アスナロ類、イトスギ類)にも一般的に付けて使われてきた「伝統」があるので、扱いにくく、正直避けて通ってきた木の1つでもありました。明日に続く・・・ |
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