森のかけら | 大五木材


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松山市の柳井町商店街に元気があって個性的なお店が増えているということで、地元の情報紙で特集が組まれていましたが、その中の1軒がバイオリンやビオラ、コントラバスなどの製作、修理、調理などを行う『弦楽器工房 La chiave di bassoラ・キァーヴェ・ディ・バッソ』さん。店主の西村啓志さんが弊社にやって来られたのは昨年のこと。西村さんはイタリアの国立クレモナ国際弦楽器工房で楽器製作を学び、技術を身につけ昨年の春に故郷である松山に戻り、柳井町に工房を開設されました。

楽器に使う材というのは、弊社が家具や造作に使っているような木材とはサイズや木取り、グレード、乾燥状況などが違っていて、本来は楽器には楽器専門の材木屋がありました。しかしこのご時世、誰もがストラディバリウスのような超高級楽器を求めるわけではありません。楽器専門材木屋の業界も相当に厳しいようで、その数も激減。海外からでもネットで気軽に買える時代になってしまいましたから余計に実店舗での販売は難しい。

西村さんも重要な部分の木材は今でもイタリアから取り寄せられているそうですが、送料の問題もあって大きなモノとか汎用性のあるものはなんとか身近なところで手配したいという事で、弊社にご来店いただきました。楽器で使う木材の場合、乾燥しているという事が絶対条件になるのですが、幸か不幸か弊社にはよく乾いた木材が沢山あります(この時のために乾かしていた・・・わけではなくただ単にずっと売れなかっただけ)。西村さんは大きなコントラバスも製作されるのですが、バイオリンなどに比べると使用する材の自由度が高いのだとか。

 

イタリアでも素材にはポプラを使われていたとの事。私はただ単純にいろいろな木に触れたいという好奇心でポプラなど仕入れているわけですが、こうして正当な『出口』に巡り合う事が出来ると嬉しいし、待たせた材に対しても顔が立つというもの。年末には工房にもお邪魔しましたが、小さなものからすべて手作りで貴重な楽器製作の舞台裏を見せていただきました。この数年で「楽器の木」を求められる方急増!端材コーナーにも『音色の端材』スペースを増設しなければ!!




先月と今月の2ヶ月間で、大五木材としては珍しく幅1m級の大きな耳付板が6枚も売れました!もともといわゆる銘木と呼ばれるような高級な木材とは縁遠い材木屋ですので、サイズは大きいとはいえ、バリバリの無節で上品で雅趣溢れる杢のあるA級品というわけではありません。その表情には、森の中で長年にわたって豪雨や防風に耐え、虫や鳥たちに住処を与えたり、わが身を蝕まれた痕跡が深く刻みつけられた味があって、癖が強い脇役のような板ばかり。昔の俳優で例えれば、アーネスト・ボーグナイン、今ならロン・パールマン

決して主役は張れなくても、登場すれば完全に主役を食ってしまうほどの圧倒的な存在感を放つ個性派。昔からこういう役者が好きなんです。木も同じでこういう木にはわけもなく惹かれてしまうのです。大体こういう木って、「大トロ」を狙って大きな原木を挽いた時に、不本意に挽けてしまう「中落ち」みたいなもので、製材業者にとっても決して歓迎されるものではありません。なので木材市場でも本命の大トロの前に、これから大きなサイズが出てきますよ~といった露払い的な意味合いで並べられます。

そのサイズ感は目を引くものの、「サイズはいいけど節がね~、こんな大きな割れがあっちゃね~」なんて、大トロ狙いの銘木屋さんは歯牙にもかけません。多くの良識ある材木屋からも軽くスルーされてしまいます。そうなればそうなるほど、私の中の天邪鬼が騒ぎ出す。「そうそう、表面の美しさしか追わないあんたらにはこの木の良さなんて分らないだろうよ。こいつを生かして、世に出してあげられるのはこの偏屈材木屋だけよ!」高級銘木を買わない(買えない)自己弁解が私に「買う理由」を与えてくれるのです

お蔭様でそんな嗜好の材木屋には、そういう木にシンパシーを感じる木フェチがどんどん集まって来るようになって、更にこちらも増長して、いつの間にやら倉庫はそんな木ばかりで溢れかえっております。意外にもそういうそういう嗜好の若い人の方が多くて、小さな頃から本物の木に囲まれてきた経験が少ない若い世代だからこそ、割れや虫食いなどの上っ面の見栄えだけでない、本物だけが持つ迫力や質感に惹かれるのかもしれません。木だけの話ではなくて、モノに対する価値観が大転換期を迎えつつあるのを強く実感します




これは昨年作られせていただいたものですが、愛媛県産の『カヤ(榧)』の木を幅剥ぎして丸く切り出した円形のカウンター。カヤといえば将棋盤碁盤などとして有名ですが、その他にも適度な弾力があって、光沢があり、水質にもよく耐えることから風呂桶まな板船舶用材などの水に関わる場面で利用されています。将棋盤には高齢木のよく目の詰まった良質な材が求められ、中でも盤面の上下がともに緻密な柾目のものは、『天地柾』と呼ばれ最高級とされます。値段を聞けば気軽に将棋など出来なくなるほど!

まあ弊社の場合はそんな高額な材には縁の無い材木屋ですので、そういう立派なカヤを求めては居ませんが、カヤ自体は四国にはよく自生しています。ただし天地柾が取れるような材となると樹齢が200~300年クラスの大木になるのですが、そういうカヤはほとんど無くなりました。もしあったとして、その木で将棋盤を作ったとしても、バブル当時ならいざ知らず現在では投機の対象のような数百万もする価格では売れるかどうか。高級将棋盤や碁盤という用途も材質を活かした出口ですが、それに該当するのは超エリートのカヤのみ。

それ以外の多くのカヤは、もっと小さくて枝も多くて節があり、選ばれし栄光の舞台には立つことは出来ません。しかし私はそんなカヤの方に強く惹かれるのです。この節のある木をどう活かそうか、どういう場面に使えばカヤを使う意義が生まれるだろうか、節まみれのカヤの木を眺めながらそんな事を考えるのが楽しみ。折角縁あってうちにやって来た木には、なるべくならば『意味のある出口』を用意してあげたい。すべての木にそれが出来るわけではないものの、日頃からそういう事を考えておく事は大事なので、出口を考えることを習慣化させています。

しかしこちらが、いいと思った出口も相手があっての事なので、受け入れていただかなければ出口に導けません。今回はある飲食店のカウンターにお使いいただいたのですが、これが4m近いストレートのイチョウのカウンターと繋がります。この円型のカウンター、直径1200㎜あって、結構な大きさですが、生憎イチョウでは適サイズのものがなかったので、イチョウと同様によく水に耐えて、適度な弾力を持ち、質感も色合いもよく似たカヤをご提案したところ、快く受け入れていただきここに至りました。カヤの材を削るとは甘いバニラのような匂いがします(あくまでも私の個人的な感覚)が、この丸いカウンターが倉庫にある間は、大五木材の倉庫の中も甘いバニラの匂いに包まれていました。この丸いカウンターが使われたお店の情報についてはまた後日改めてご紹介します。




大五木材の朝は早い。早朝から仕事を始めていた大工さんに合わせるために、朝は7時前に社員が出社するので、私はそれより先に事務所の鍵を開けなければならないので、6時30分には会社に行かなければなりませんでした。若い頃はそれが苦痛で、独身の頃に深酒でもした日には朝起きれなくて、既に社員が出社していて倉庫で待ってくれていたこともしばしば。当時は大工さんたちが「棟梁」としてバリバリに活躍されていた頃で、会社を開けるとすぐに電話が鳴ったり、大工さんの軽トラがやって来たりと、早起きは必須の状況でもありました。

それから年月が経ち、大工さん自体が木材を持たない(工務店が木材を手配するように移行)ようになると、早朝から材木屋にやって来る大工さんも減ったのですが、今度は早朝から木材を積んで遠方にリフォーム作業に行く業者の方が増えて、時には玄関のカーテンを開けると、門の外に軽トラが停まっていたこともありました。なのでやっぱり朝早く店を開ける必要がありました。それからまた月日が流れ、早朝より営業するプロ対応の大型のホームセンターが登場すると、そういう人たちはそちらに流れていきました。

その後、すっかり木材の潮流はプレカットになり、個人の大工さんが木材を仕入れることが激減すると、早朝から訪れる人はいなくなったのですが、その頃からの長い商習慣と、歳をとったら朝が早くなる、朝の混雑を避けたいので早く通勤したいなどの理由で、やっぱり今も朝早くから店を開けています。昔に比べると少しだけ遅くなって、今はだいたい6時45分ぐらいに開店していますが、さすがにこの時期で天気も悪いと朝はまだ真っ暗。月明かりに照らされながら門を開けるという事もあります。

門が古いので開閉時にもの凄い音をするため、近づいてくる足音に気づかず、暗闇からすっと人影が現れたりしてドキッとすることがあります。それもこの季節ならではのことで、というのも2月の上旬にこの辺りがコースとなる『愛媛マラソン』が開催されるため、出場される選手たちが早朝からトレーニングしているのです。毎年、このドキッを経験すると、マラソン大会の季節になったなあと思うのですが、こうして朝暗いうちから重たい門を開け続けて30年。あとどれぐらい続けることが出来るのだろうかなんて考えます。




狭い倉庫ゆえ、ひとたび倉庫の奥の奥の方から引っ張り出した大きな材については、元に戻すことなくその際に売り切ってしまいたいというのが本心。特に長さが4mを超え、幅が1m近いサイズになると、保管できるスペースが限られるため、それをここに置いて、その上にあれを置いて、その隣にこの1m材を・・・といった風に、ジズソーパズルを埋めていくように隙間なく詰めていかないと元の状態に収まらくなってしまうので、埃を叩いたからにはもう元にも戻しませんの覚悟!

とはいえ、こういう大きなサイズの材はなかなかそううまい具合に出会いがあるわけではありません。カットしてしまえば足は早いでしょうが、それは最後の最後の手段。出来るだけ長いもの、広いものに対応する形で世に出したい。というわけで今回、奥の方から引っ張り出したのがこちらの大きな『モミ(樅)』の耳付きの一枚板。倉庫の主とした永らく君臨してきた大物。比較的大きくなりやすいモミですが、それでも直径1mサイズになると貴重です。長さは4m未満ですが、3,400~3,600㎜あります。

テーブルとすれば、片側に5~6人は座れるので、全体では10人以上が座れるビッグサイズです。一般住宅となるとかなり広いダイニング・スペースが必要にはなりますが、最近は間仕切りのない大空間設計の家も多いので、大家族の方、友達などの来客が多い方、いかがでしょうか?モミは針葉樹で材質的には軟らかいのですが、裏返せば温もりを体感出来るという事。このサイズになると重量も相当になりますが、乾燥は完璧なので見た以上に軽くて掃除などで移動させるのは楽です。

耳の変化は少ないので、そのまま耳付きで仕上げても面白い木です。こういう木って写真で撮ると案外その大きさが伝わりにくいので、昔は子供たちをモデルに使っていたのですが、さすがに高校生ともなるとモデルもやってくれません。比較対照が無いとサイズ感が分りにくいので、興味のある方は是非ご来店いただいて自分の目と肌で大きさを実感してください。勿論商業店舗のテーブルもOK!元の場所に戻すつもりはないので、この機会にどうにか「解放」してやりたいので、お値段も「解放」するつもりです!




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