森のかけら | 大五木材


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20101230 燃えてはいけない「華氏451」・・・B①昨日に続いて、フランソワ・トリュフォー監督の傑作映画「華氏451」についてですが、舞台の近未来都市では、互いが近隣を密告し合い、徹底した監視社会のもと、本を通じた知識の習得を禁止される恐ろしい世界。「人間にとって悪害である本を焼く」任務に忠実であった主人公が、本の魅力の虜になりやがて妻に密告され、追われる身となる。そして彼は、全ての本がこの世から消えても、それを後世に残すために自分自身が「本」になる事選んだブックマン(!)達の住む村を目指すのです。タイトルの「華氏451」とは、本の素材である紙が燃える始める温度(摂氏233度に値する)の事です。物語だけを目で追うと陳腐なSF映画のように思われるかもしれませんが、そこはブラッドベリ+トリュフォーの才気溢れる表現者のタッグ。凡庸なハリウッド映画が束になっても叶わない、語り継ぐべき傑作です!

 

20101230 燃えてはいけない「華氏451」・・・B②本を燃やすために火炎放射器を使うファイヤーマンは、その世界では特権的な職業ですらありますが、防火服に身を包んだ彼らの姿は異形で、人間らしさを捨て去った心なき無言の執行人にすら見えます。トリュフォーのエスプリの効いた演出のお陰で、管理社会への強い批判や痛切な皮肉は、救いようのない深刻なものにはなっていませんが、深く考えさせられる映画となっています。本を読む事が禁じられた世界でもなく、炎を消す立場のファイヤーマンが存在する時代に生きる幸せを感じさられました。

 

20101230 燃えてはいけない「華氏451」・・・B③映画の中で、保管していた大量の蔵書が見つかった老婦人が、本を焼くなら私を焼けと、自らの体に火をつけて本と共に炎に包まれるという場面がありますが、今時の映画であればCGでも使ってさぞリアルな映像を見せるのでしょうが、それこそメッセージが表現技術に追いつかないという本末転倒。燃え盛る炎は、ただの恐怖を越えて、様々な思いを想起させる契機となります。自ら考える事を放棄した愚民を描きながら同時に観客にも考える事を求められる映画です。

 

20101230 燃えてはいけない「華氏451」・・・B④実はこの時のカ撮影を担当したカメラマンが、後に流麗なカメラワークから映像詩人の名を欲しいままにっするとニコラス・ローグが担当していたんですね~。芸術とまで評された「華氏451」の炎は、明らかに「タワーリング・インフェルノ」のそれとは違って見えます。常々、大成郁生君(サンシン暖炉)が、薪ストーブの炎の揺らぎを芸術的だと賛美していますが、ひとつ間違えば恐怖ともなる炎が、癒しとも情熱ともアートとも感じられるから想像力とはいかに逞しいものか!そういえば、焼却炉で燃える炎を1点でじっと見つめていると、飽きるどころか集中力が高まっていくような感覚になる事があります。木材が灰に帰するのは寂しいけれど、森の火災がそれによって育つ植物もあるように、それもまた偽らざる自然の姿なのかもしれません。仕事柄、炎の恐怖に脅えながらも、時にはこういう映画を観直して、モノの見方を研ぎ澄ましておきたいものです。




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