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このセンという木は、ほぼ日本全国に広く分布していて、特に北海道や東北地方から良材が出てきます。四国にも生育はしているのですが、大きなセンが付近の原木市場に出たという話しはあまり聞きません。大きくなる木としても知られていて、大きいものになると高さ25m以上、直径は1mにもなります。柾目が美しい事から昔は、下駄にも使われた事もあるようですが、家具材として着色しケヤキの代用に使われる事も多く、その名が伏せられる事もしばしば・・・
1つの木に対して幾つもの呼び名があるというのは、木にとってはよくある話。例えばイチイの木が、アララギとかアカギ、オンコ、キャラボクとか呼ばれるという風に。ところがセンの場合は、図鑑などで調べても載っていなかったという声を聞く事があります。それは別名が幾つかあるというより、木として立っている時の呼び名と、伐られて材になった時の呼び名が違うという変わった慣習のせいでしょう。立っている頃は『ハリギリ』、伐られると『セン』となります。
なぜこういう呼び方が定着したのか研究者の間でもよく分かっていないようです。『ハリギリ』の名前については、同じウコギ科のタラノキのように鋭い針のような棘があり、その材質がキリのよう(あくまでも見た目の印象だと思います。硬さは全然違いますから)であることから命名されたようです。葉の形がキリに似ているという説もあるようですが、その形はキリというよりも大きいカエデというイメージで、別名『テングノハウチワ』とも呼ばれているぐらいです。
古いアイヌの記述には、この木で丸木舟を作ったとか、大きな木鉢や臼を作ったという記録もあるそうなので、ケヤキの代替材というよりも、密度の高いセンの特徴を活かした使い方をされていたようです。材としてのセンの名前の由来については不明ですが、材質が軟らかく素直で加工もしやすい『ヌカセン(糠栓)』と、色合いが淡く飴色で材質も硬く暴れやねじれの出やすい『オニセン(鬼栓)』のふたつに大別され、その用途に応じて使い分けされています。
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