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昨年、秋田に行く機会があったのですが、本当はその時数日早めに松山を出て八甲田山か白神山地にも行けないものかと画策したのですが、あまりに無謀な行程になるのであえなく断念しました。秋田には『秋田富士』とも呼ばれる美しい山・鳥海山もありますし、一度はゆっくり東北の山にも行ってみたいのですが・・・。ところで、映画『八甲田山』では、白銀の中に凛として佇む巨木たちの姿がありましたが、当然のことながらその存在についてはただの舞台背景として完璧にスルーされ触れられる事はありません。
映画の中に登場する木って、いくら立派な巨木とかでもほとんど樹種名が呼ばれる事はなく、ただの『木』としてしか描かれる事がないように思います。そんな事を気にする人なんて、ごくごく一部の木フェチなんでしょうが(戦争映画で画面の端にチョイ映りするレアな戦車に萌えたり、アクション映画で使われる銃に萌えるガンマニアの心境でしょう)。でも世の中に存在するマイノリティたちのために「この立派なケヤキはニレ科の仲間でなあ・・・」なんて台詞がひと言でもあれば心打ち震えるのですが。
さて、いよいよ本命の『網走番外地』!今更説明する間でもない名作ですが、公開されたのが私の生まれる前年、東京オリンピックの翌年という事ですので若い方向けにサラッとご紹介。元々実録モノの小説があったのですが、そこから網走刑務所という舞台設定とタイトルだけを拝借して、『手錠のままの脱獄』(名匠スタンリー・クレイマーが監督した1958年の作品で、囚人護送車が田舎町を移動中に、真夜中に転落事故を起こしてしまい白人と黒人の脱獄囚が手錠に繋がれた脱獄するが、人種偏見から反目するふたりが、修羅場を切り抜けていくうちに友情が芽生える・・・という話。トニー・カーティス、シドニー・ポワチエというふたりの名優が演じました)をベースに石井輝男監督が換骨奪胎して作り上げた刑務所映画の傑作なのです。
親分のための傷害事件で懲役三年を言い渡された橘(高倉健)は、前科五犯の権田(南原宏治)たちと網走刑務所にやって来る。房内を仕切る古参囚人たちとの軋轢に耐える橘のもとに、母親が病気で危険な状態であるとの知らせが舞い込む。橘の保護司である妻木(丹波哲郎)を心の支えとしてきたが、囚人たちの脱獄計画に巻き込まれる形で橘も脱走。奇しくも相憎しみ合う権田と手錠でつながれたまま雪の中を脱走し、怒りに震える妻木に追われる事となる・・・というのが大まかなあらすじ。
最初は看守に反発していた健さんも、やがて怒りのエネルギーを労務作業の森林伐採の斧に込めることになるのです。おお〜、ここにやっと健さんと木の融合を見ました!舞台設定は定かではないのですが、明治時代には刑務所に隣接する最先端の蒸気機関を有する工場で、囚人使役によるマッチ軸の製造が行われていたそうです。その原料確保の森林伐採も行われていたので、もしかすると健さんもポプラやシナノキ、エゾマツ、トドマツなどを伐っていたのかも・・・この項、明日完結(予定)。
遭難こそしなかったものの翌日は凍傷ならぬ筋肉痛に・・・。『八甲田山』は1977年度の日本映画の興行成績で日本一に輝いたものの、豪華出演者、長期ロケといった撮影規模の割には、製作費が三億円という低予算で、現場では『ひとでなし逸話』も数多く残されています。中でも、鬼カメラマンの異名を取る撮影監督木村大作にまつわるエピソードは凄まじく、あまりの寒さに動きの鈍った俳優たちを鼓舞するために、極寒の十和田湖に自ら飛び込んだ!という自殺まがいの無謀な行動。
その狂気は、スタッフたちにも伝染していき、俳優たちは連日撮影前に衣装に水をかけられ、凍った軍服を着せられた上に、更に雪をかけてリアルな寒さを演出したとか・・・。以前このブログで、突き抜けた狂気の監督と役者という事で、ヴェルナー・ヘルツォークとクラウス・キンスキーの事を書きましたが、あちらは、熱帯のジャングルの灼熱の熱さの中で身も心も狂ってしまいましたが、『八甲田山』は正反対に極寒の寒さの中で思考回路が凍りついてしまったのでしょう。
現場の狂気を、映画というフィルターを通して観る事に観客にしてみれば、その狂気が凄まじければ凄まじいほどに興奮し熱狂するのです。フィルムに記録され編集された時点ですべて虚構のドラマを盛り上げるための演出でしかないのです。だから本来私としては、NGシーンをサービスのように付けるのは興醒めでナンセンスだと考えています。さて、この映画で極限状況に憑りつかれてしまった人々は、懲りることなく何度も同様の危険で狂おしい現場へと導かれていきます。
その後監督の森谷司郎は、大正時代に木曾の駒ヶ岳で実際に起きた学生と生徒の遭難事故を描いた『聖職の碑』を撮ります。こちらも小説化したのは新田次郎ですが、この本は昔保母をしていた母親に薦められて読んだ記憶があり、しばらくは、先生は職業を超越した聖職なんだと信じてやみませんでした。その後も森谷監督は、漁夫が絶海の孤島に流される『漂流』(原作は吉村昭、その主役もこれまた狂気が伝染した北大路欣也!)、健さんと組んで青函トンネル工事を描いた『海峡』・・・
などなど追いつめられた環境での骨太の人間ドラマを描かせれば右に出るものはいない『極限状態映画の巨匠』の地位を確立したのです。なにせその前には『日本沈没』を撮り、最後は『宇宙からの帰還』(立花隆の原作(ノンフィクション)は、私を宇宙浪漫に開眼させ、〔神=創造主〕の存在を信じるようになったバイブル!)の映画化を準備中にお亡くなりになった方ですから。そのため映画『宇宙からの帰還』は、原作の面白さがまったく反映されないただのドキュメントフィルムになっていたのは返す返すも残念。もし森谷司郎が生きていれば、きっと原作を大幅にリライトして、『ゼロ・グラビティ』や『アポロ13』のような息づまる壮大なドラマに仕上げた事でしょう。究極の極限映画を撮りあげてほしかったものです。当然その時は、実際に宇宙ロケが行われ、宇宙ステーションでのドラマを、宇宙空間に飛び出した木村大作がカメラに収めていたはず・・・収拾つかず更に明日へ。
『居酒屋兆治』も『駅STATION』もいずれも舞台は北海道で、寡黙な耐える男・高倉健には北の大地が似合います。ただどちらも大雪が背景というわけではなく、「雪と健さん」といえばやっぱり『網走番外地シリーズ』と『八甲田山』。タイトルを聞くだけで、極寒の名場面の数々が思い浮かんで震えそうになるほど。とりわけ、『八甲田山』についてはかつてリバイバル上映で映画館の大きなスクリーンで観たため臨場感も半端なく、本当に劇場で手足の先が寒くなるような冷感体験を味わったものです。かなり脚色、創作はあるものの、この陸軍による雪の八甲田山行軍は明治35年に実際にあった(八甲田雪中行軍遭難事件)もので、行軍に参加した青森の連隊210人中、199人が死亡するという痛ましい事件で、新田次郎氏が小説として発表しました。
健さん扮する徳島大尉と北大路欣也扮する神田大尉は、上官の無謀な命令によって冬の八甲田踏破訓練の指揮官に選ばれます。いくら馬鹿げていると分かっていても上官の声は神の声、異を唱えよう事など出来るわけもなく、両隊は八甲田山ですれ違うという行程の雪中行軍が決行。最低限の少人数で長い行程を組んだ徳島大尉に対して、自分の見栄のためだけに自分も大隊本部として同行するように隊を大編成せよと唱える大隊長役の三国連太郎の憎々しいこと!
案の定、自然は彼らに牙をむいて襲い掛かるのですが、吹雪が舞う大雪原の中をCG無しの体当たりの熱(寒)演で、芝居を通り越して気の毒に思えるほど・・・ヒートテックなんて無い時代ですから、いくら厚着をしてカイロをしこんだところで、下手をすると本当に凍傷になりかねない超危険な撮影。実際にあまりに過酷なロケに耐えきれず、現場から逃亡した役者もいたそうですし、健さん自身も軽度の凍傷になったとか。3年にも及んだ撮影はまさに八甲田山の雪中行軍を地で行く無謀なものであったのです。
完全に道を見失い、荒れ狂う吹雪の中で北大路欣也がつぶやく「天は我を見放した~!」という台詞が流行するなど映画は大ヒットを記録しました。年末に何度も繰り返し観た私の脳には、膝まである雪の中を行軍する健さんの姿が焼き付けられ、ある忘年会の後は酔い覚ましもあって、少し歩いていたら、そのシーンが蘇ってきてウォーキングハイの状態になってしまい、そのまま街から自宅まで(約6.5キロ)たっぷり1時間半ほどかけて『独り行軍』してしまったのです・・・。更に明日に続く
実家で迎えた雪の正月、白銀の世界に一変した故郷の風景を見ながら頭に浮かんだのは、道なき道を歩く高倉健さんの姿!昨年末にご逝去されて、自宅でひっそりとひとり追悼DVD鑑賞会を開いていて、その間に何本もの健さんの映画を観ていました。世代的には、任侠映画の唐獅子牡丹の渡世人・花田秀次郎ではなく、元ヤクザで今は堅気として暮らしている無口でタフな初老の親父キャラとして受け入れてきました。主演映画で言えば『幸福の黄色いハンカチ』や『冬の華』、『動乱』、『野生の証明』などなど。
中でも私が一番好きな「高倉健」は、『駅STATION』と『居酒屋兆治』。かつて高校野球のエースとしてならした男が、栄光の青春時代と挫折を経て小さな居酒屋を夫婦で営んでいます。周辺からはお人よしとからかわれれもいつも頭を下げるだけ。学生時代の先輩(伊丹十三)に絡まれても耐えていた兆治の堪忍袋の緒が切れる瞬間のカタストロフィイたるや、まさに花田秀次郎の殴り込み!しかし何かに兆治に難癖をつけて悪態をつく伊丹十三の嫌なクズっぷりは、同県人として申し訳なくなるほどの名演。
「人が人を思うことは誰にも止められない」というキャッチコピーもよかったですが、舞台が場末の居酒屋という事で派手さはないものの出演者の顔ぶれを見ると豪華絢爛。人生いろいろありまして、それでも男は黙って生きていく的なお話と、そんな健さんに迷いなくついていく奥さん(加藤登紀子)。まあ今にして思えば、随分と男目線の都合のいい話ではあるのですが(兆治の元恋人が大原麗子で、火事騒動もあったり、警察沙汰にもなるものの)、それゆえに世の男の憧れのスターたりえたのでしょうが。
原作は山口瞳の小説で舞台は北海道の函館でした。ストーリーだけ文字で追うとかなり暗い話ですが、映像で見るとドライな印象を受けます。もう1本の『駅STATION』も舞台は北海道の札幌周辺ですが、こちらは脚本が倉本聰という事もあって兆治よりももっと抒情的な話です。それでも健さんとは『網走番外地』の頃からの古い付き合いの降旗康男監督が、抑制の効いた演出で、劇中テレビの紅白歌合戦で流れる矢代亜紀の『舟唄』のような大人の色気漂うしっとりとした印象を受けるのです。
実は兆治も降旗監督なのですが、同じ健さん主演でも雰囲気が随分違って感じられます。『駅』は、元妻にいしだあゆみ、飲み屋の女将に倍賞千恵子という配役もあり、他人との接触に控えめでドライな人間関係の『兆治』に対して、ひとの温もりに渇望するような『駅』の健さんに惹かれるのです。『駅』は、他にも永島敏行、古手川祐子、田中邦衛、小松政夫 、烏丸せつこ、根津甚八、宇崎竜童、室田日出男、池部良、佐藤慶、平田昭彦、大滝秀治など名優たちが総出演の大好きな作品です。続く・・・
昨日に続いてスティーブン・キングとジョン・カーペンターによる『クリスティーン』の話です。映画の赤い車はプリズマ(主人公の少年がクリスティーンと名付けます)、消防の車はランドクルーザーで、何の関連性もありませんが、普段街の中でそうそう目にすることのない全身真っ赤なボディーを見ると、私の頭の中でこの二つが結びつかづにはいられないのです。しかも闇の中でライトに照らし出されて、無機質なはずの車の赤色が妙に艶っぽく輝いて妖しい雰囲気が漂うのです。
小説、映画ではその名前からも分かるように車は女性に見立てられます。強烈な赤いボディーを舐めまわすように捉えたカメラワークは、被写体に恋した少年の眼。車がこれほど艶めかしく映された映画を私は他に知りません。さすがは変態カーペンター!そして主人公アーニーは、クリスティーンを大切にするがあまり車に恋心を覚えるのです。木フェチがいるように、車フェチがいるのも分かります。ただし問題なのは、恋した車が呪われた殺人車であったという事!クリスティーンはアーニーを独占しようとし、彼の精神も次第に蝕んでいかれるのです。
有機物である木と無機物の車を同列で比較するのは乱暴かもしれませんが、モノには心があるという点では同じこと。強い愛情で結ばれたモノに対する恋心は、初期段階の所有欲から次第にエスカレートして、独占欲、支配欲、それが高じて不信、妬み、嫉妬、憎しみへと変わっていく事があります。木フェチとしても、ほとんど知られていないマイナーな木がテレビなどで紹介されてみんなに知られてしまうと、途端に興味が失せてしまうというひん曲がった愛情を強く感じていますので・・・
モノに対する深い愛情がそのものに宿るという事について言えば、家についても何世代にもわたり長年住み続けた古民家などにはその家のひとの思いが宿っているというのが私の持論。それういうとすぐにネガティブなイメージで捉える人がいますが、決してクリスティーンのような殺人車でひとに悪さをするとか祟りがあるとかいう怖いイメージのものではなく、モノをただのモノ以上の存在にしてしまう事。キズや汚れを味わいやワビ・サビに変えていくのは、ただ時間の積み重ねでなくひとの思い。
何世代にもわたって人の暮らしを支えてきた古民家には、ただのモノ以上の不思議な力が宿ると思うのです。日本には昔から、長く生きたモノ(動植物)や長年使った道具には神が宿り、慈しみを持って接すれば幸運をもたらし、邪険に扱えば荒ぶる神となって禍をもたらすという『九十九神(つくもがみ)信仰』があります。例えば九尾の狐や唐傘小僧などで、それは妖怪として今にも伝えられますが、それはモノに対する接し方や大切さを教えた戒めであり、ものづくりに対する日本人としての心の在り方だとも思うのです。
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