森のかけら | 大五木材


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今日は下の娘(小1)のピアノの発表会です。数年前から子ども3人が習い始めたのですが、二人は挫折して今は一人で頑張っています。数ヶ月前から発表会の楽曲を選ぶのですが、私が以前から娘に「いつかこの曲を弾いてね」と言っておいたのを、ピアノの先生にも喋っていたようで、先生が気を利かしてその曲を選定してくれました。ただうちの子にはなかなか難しい曲みたいで、途中何度も投げ出しそうになっていました。父親の勝手な思いで曲が決まってしまったようで悪かったなと反省しています。その曲とは、ショパンの『別れの曲』です。気取って高尚な曲という訳ではありません。

大學の頃に観た、尾道を舞台にした大林宣彦監督の映画『さびしんぼう』に、この曲が重要なモチーフとして使われていました。20数年前、まだ感受性豊かな青春時代に観た心ときめく珠玉の一本です。ショパンの『別れの曲』を上手に演奏する女の子に憧れるボク、という一人称で語られるこの甘酸っぱい青春映画に、自分の姿を重ね合わせた男子は多かったはずです。当時の私も心を奪われ、3回も4回も映画館に通ったものです。後年、『転校生』、『時をかける少女』と合わせて【尾道三部作】と呼ばれるようになりますが、尾道を舞台にした淡い恋の物語は多くの観客を感動させました。

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その映画の中で、小さなピアノの形のオルゴールが登場します。当時そのオルゴールが欲しくて、欲しくてたまらず友人と尾道で買い求めました。それがこれです。

 

 

 

 

ca9qx3h5天板を開けると『別れの曲』が流れます。値段は忘れましたが、それほど高価な物ではなかったと思います。今はネットでも販売されているのかもしれませんが、当時は尾道にしか売っていなかったと思います。高級オルゴールという訳ではなく、映画を観て尾道に観光に来た人のお土産のような商品だったのではないかと思います。着色しているので、はっきりは分かりませんが軽軟でアガチスラワンのような木目です。当時はそんな事は考えもしませんでしたが、今はそんな事が気になったりします。職業病でしょうか。20数年前の物ですが、大事にしていたのでほぼ無傷で、ちゃんとオルゴールも聴けます。鍵盤の上のプレートには『CHOPIN』の文字が。

 

 

当時、映画を観て感動した私は、自分が父親になって娘が生まれたら、絶対ピアノで『別れの曲』を弾かそうと強く心に誓ったものです。しかし大人になるにつれ、そんな事もすっかり忘れていましたが、娘がピアノを始めた時に古い記憶が蘇りました。まあ中学生にでもなったら弾いてくれたらいいなあなどと思っていたのですが、思わず早くに願いが叶いました。少し緊張していたみたいですが、何とか頑張って無事に弾き終えました。2曲目は母娘で連弾。実は昨年も参加していたのですが、今年とは大分思いが違いました。壇上で『別れの曲』を弾く娘の姿とそれを観る父親の姿は、はからずも映画の一場面のようで、自分だけ別次元で感傷に浸っていました。

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木材は響音効果に優れ、楽器にも多く使われています。ピアノの鍵盤にはスプルースブナメープルが使われるようです。また化粧材にはマホガニーブラックチェリーなども使われます。他にもヴァイオリンではスプルースメープル、ギターではローズなどの銘木も使われています。今日の娘の演奏を聴いて思ったのですが、それは決して木の特性だけが理由ではなく、その触感や音色が人の心を打つからなのだと強く感じました。立木の時に刻まれた森の記憶が、演奏者の指に弾かれて増幅され、聴く人に爽やかな森の音色として心の琴線を振るわせるから、とまで言えば言い過ぎでしょうか。

ひとつのオルゴールを通じて、20数年前の思いが成就しました。映画『さびしんぼう』のキャッチコピー、「という字が、という字をおんぶして、しんぼう、しんぼうさびしんぼう・・・人が人を恋うるとき人は誰でもさびしんぼうになる」、久しぶりに懐かしい記憶が蘇りました。




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