森のかけら | 大五木材


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20120517 1文字通り世紀の天体ショー『金環食』が近づいていますが、私がこの言葉からイメージするのは、名匠・山本薩夫監督の映画『金環蝕』です。これは、私の生まれた1966年(昭和41年)に発表された石川達三の小説を原作とし、1975年に公開された日本映画の良心とも言える作品です。「金環食」の食の文字が「蝕(むしば)む」となっていますが、ドロドロした利権争いの闇の中で次第に人間性を失い、身も心もボロボロに蝕まれていく様がその文字からも伝わってきます。実名こそ出ていないものの、実際に起こった九頭竜川ダム落札事件を舞台としており(場所は置きかえられています)、登場人物もモデルとなった実在の人物を匂わせる際どいもので、今では到底考えられない作品です。私が生まれる以前の話なので、その落札事件について詳しくは知りませんが、そういう知識が無くても見応え充分!

20120517 2近づく「金環食」の話題の中で、この映画の事がほとんど出ない(私がたまたま観てないだけかもしれませんが、ラジオやテレビ、新聞、雑誌で見たことがありません)のは、あまりに素材がシュール過ぎてメディアが二の足を踏んでいるからなのでしょうか。主役となるのは、当時自民党総選挙でその席を争った佐藤栄作元首相と田中彰二、そして事件のもみ消しに動いたのは時の幹事長・田中角栄!今の原発利権とも重なるような政治絡みの話だけにどこからか圧力でもかかっているのでしょうか。

20120517 3今こそ金環食前後の夜にでもテレビで堂々と放送すべき作品だと思うのですが、『黒部の太陽』のように利権や版権などの問題で放送できないこともあるので(それはそれで、もうひとつの金環蝕・・・)、理由はいろいろあるのかもしれません。以前にも山本薩夫監督がメガホンをとった映画『華麗なる一族』や『不毛地帯』も、最近続々とテレビドラマ化されていますが、こういう政治と金の問題にも正面から切り込んだ骨太の映画を作られていて大好きな監督のひとりでした。

20120517 4テレビドラマでの限界もありますが、血のほとばしるような肉厚のステーキを素手でかぶるつくような山本作品の激しさに比べて、見た目だけ華やかなデザートのようで、原作そのもののメッセージ性は希薄。バラエティで笑顔を振りまく役者が演じても深みが伝わりません。それに比べて『金環蝕』の配役は、仲代達矢、三国連太郎、宇野重吉、神山繁、西村晃、高橋悦史、京マチ子、山本学、北村和夫、加藤嘉・・・画面の空気感が違って当然の面々!あんたらどれだけ悪やねん、と誰もが必ず突っ込みを入れたくなります。

20120517 5 すべての登場人物が個性的で魅力的(だから人や金が集まってきてしまう)で、教科書では語らえない大人の世界。あまりにもシュール過ぎて、今は絶対製作できない内容だと思いますが、それゆえに時の映画人の矜持を見る思いがするのです。映画での「金環食」は、金色の輪よりも、中のどす黒い黒い月が周囲の金の輪をドンドン飲み込んでいる、あるいは美しい太陽も中身は黒く腐っているという作品テーマの象徴となっていました。輝く金色の栄光の中で何が起こっているのか・・・今こそ必見の作品です




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