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4月に入りいよいよ本格的な花見のシーズンが到来しました。今年は例年よりも桜の開花が早くて、4月になれば葉桜になってしまっているのではと思いましたが、すっかり杞憂に終わりました。市内を走ってみても満開の桜が至る所で、我が世の春を謳歌するがごとく咲き誇っています。市内の道後公園は、この時期になると花見の席取りうやら昼間からの宴会やらで、日中でも人が溢れかえっています。不況の今だからこそ、こういう時ぐらいはパーッとやりたいという衝動にかられるのでしょうか。今年もお誘いが多かったのですが、残念ながら行事が重なり参加できません。今年は静かに、「花見飲み」ではなく「花見」を楽しみたいと思います。
昨日も繁華街の店舗の納品に行くと、大量の桜の花びらが風に乗って乱舞し、ドラマのようなシチュエーションに遭遇しましたが、パッと咲きパッと散るこの潔さが日本人にはたまらなく郷愁を誘うのではないでしょうか。なぜだが感傷的な気持ちになってしまいます。その後、行く場所行く場所でいい花見をさせていただきました。こうしてみると、改めて桜は春の訪れを知らせ『季節木』だなと実感します。コブシの花なども白く咲き、かつて農村では「春の訪れを示す季節木」としてよく植えられていました。
最近では食べ物もビニールハウス栽培が進み、いつでも何でも食べられるようになり、すっかり食の旬が分からなくなってきました。日常の生活の中でも『旬』や『季節感』が喪失しつつある昨今、桜は『これから春!』をはっきり意識づける貴重な存在かもしれません。散る桜を物悲しく思うか、咲く桜に心の高揚を感じるかはひとそれぞれでしょう。桜はその両面を表裏一体で合わせ持つアンビバレントな木でもあります。どからこそ人の心深くにまで入ってくるのでしょう。
最近、桜の大きな板が手に入りにくくなってきていますが、大きく見える満開の桜でも幹そのものは200~300㎜もあれば大きい方です。桜は大きく枝を広げる木なので、ついつい見た目よりも大きく思われがちですが、実際には小ぶりな物が多いです。そう考えると、板幅が800とか900㎜もある桜は、地に根を張っていた時の姿はどれほどの物かと恐れ多くなります。桜だからという訳ではありませんが、巨きな木の『行く末』については、やはりそれ相応の覚悟を持って臨みたい物です。
木は咲く場所を選べず、枝を折られることも拒めず、愚痴も文句も言わずひたすら寡黙に、寒い季節をじっと耐え、時の訪れに合わせて花を咲かせます。それはかつての日本人が手本とした、勤勉質素な生き方だったと思います。満開の桜も、厳しい寒さを経験せねば美しく咲くことはありません。桜を見ていて、耐えることも力を蓄えることだと強く感じました。
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