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さてようやく能登ヒバ造りのログハウスから『鳳至木材』さんの本社へ移動。鳳至木材さんは、全国屈指の能登ヒバ専門製材工場で、工場の中も見渡す限り能登ヒバ。わずかに地元のスギを挽かれることもあるそうですが、メインは能登ヒバで化粧材から構造材までありとあらゆる用途に挽かれています。分布が石川県の能登半島に限定される特殊な事情のある木ですから、他の国産材と比較しにくいのですが、ここでは能登ヒバが当たり前の素材で、それ以外の木の方が特殊材。
地域的にはほとんど流通の無い四国では、見かけることもない光景ですが、鼻腔をくすぐる能登ヒバの爽やかな香りをこれほど嗅ぐこともありません。昔、北海道に行った時も広葉樹専門製材の工場に行くと、ミズナラやタモやニレの結構大きめの端材を何の躊躇もなく、ストーブに薪としてくべていましたが、そこでは焼いて捨てるほどありふれて溢れている木という認識なので、私の「モッタイナイ・・・」にも、「何が?これのどこが?」と怪訝な表情を浮かべられました。
それと同じような感覚に陥ってしまいそうになるほど、右を向いても左を向いても能登ヒバ。材が希少であったり、手に入れるのが難しいという事情があるからこそ、わずかな端材でも無駄にすることなく骨までしゃぶってキッチリと使い切ろうと思うものだということを、逆説的に痛感しました。しかしここに居るから、そういう感覚に陥るだけで、石川県全体で考えればその造林面積は12,000ha程度しかなく、石川県としても絶対的な木というわけではありません。
愛媛に戻れば、運送料や需要等の問題から、途端に縁遠い木になってしまうのです。能登ヒバは、輪島・穴水地域に分布し、当地においては昔から利用され、信頼のあるブランドなのですが、遠く離れた四国では耳にする人も少ないほど知名度は低く、その存在すら知らない人も多いのが現実。以前は時々能登ヒバのフローリングを使わせていただいたのですが、最近私の怠慢で愛媛ではほとんど実用されていません。聖地で身を清めて、また愛媛でも能登ヒバを広めていかねば!
『能登ヒバ』はその生い立ちの特殊性もあって、非常に私好みのマニアックな木のひとつなのですが、なにぶん産地が遠いということと、愛媛での知名度がほとんど無いなどの理由で、愛媛の現場で私が実際に使ったことのあるのは内装材のみ。フローリングやパネリングの形状に加工されたものは、今までにいくらか取り扱ってきました。その頃は四住さんの鳳至木材製の商品ではありませんでしたが、それまで愛媛での使用実績がほとんど無い樹種だったのでいろいろトラブルもありました。
かの地(能登)では、十分に乾燥もされているといっても、そこは鉛色の空が支配する湿度の高い地域のこと。乾燥機から出た段階で再び湿気の多い大気に晒され、当地の気候に馴染みながら安定していくのだと思います。それを地場(能登や金沢)で使うには、材にとってもそれが最適なコンディションだと思うのです。ところがそこから県外の温暖な地域、それこそ愛媛なんかに送られると、湿度の高い能登で安定していた能登ヒバも劇的な環境の変化に戸惑いながら恐縮、いや収縮。
皮肉なものというか、地域限定の材がそこを離れ全国区へなろうとする時には必ず通らなければならない通過儀礼みたいなものなのですが、愛媛だけでなく、能登ヒバを使ってみよう~!と張り切ってパイオニアとして取り組まれた全国の新しいもの好きは、恐らく誰しも大なり小なり痛い目に遭っているのではないかと思います。私は若い頃に、同時期に全国のいろいろな木を使ってみようと、取り寄せては販売したのですが、能登ヒバと信州カラマツにはかなり強い洗礼を受けました。
それは、産地の問題というよりはこちら側があまりにも無知であったために起こったトラブルで、いい気になって木を建材感覚で捉えてしまった私の浅はかさと経験の無さ。遠方の珍しい木を持ってくれさえすれば面白がって売れると考えた、若さゆえの暴走でした。その地域にしか育たない木が、なぜその地域にしか育たないのか、適者生存の考えすら分かっていませんでした。今思えばその時の痛い経験が、私の血となり肉となり地域材を考える基礎となってくれてはいるのですが。
その時はまだ村本さんや四住さんとは出会ってもいませんでしたが、能登ヒバが全国に知られるようになったお話を伺うと、やはりいろいろとご苦労があったようです。温度差による乾燥収縮やねじれなどによってクレームや返品の雨嵐と、私とは比較にならないほどの大火傷を経験されたよう。しかし、その対応によって品質は改良され、乾燥精度も飛躍的に向上し、今は安心して使える内装材になりました。ひとつの樹種が認知されるようになるまでには秘められた多くのドラマがあるのです。
『能登ヒバ』については、以前に『今日のかけら』で6間日かけて全身全霊をかけて書き切りましたので、あまり付け足すことが無いのですが、その時に困ったのが、能登ヒバの原木の手持ち写真が少なかった事。思えば初めて能登に行った頃は、まだ周辺でもデジカメでパチパチ写真撮るって環境ではありませんでしたし、一応私も一眼レフのカメラは持って行ってものの、フィルムでしたからそうおいそれと連写もできなかったため、今と比べると写真そのものが圧倒的に少ない~。
今はデジカメで連写も含め、日に何百枚も写真を撮ることもあって、整理が追い付かないほどに画像が溢れていますが、一ヶ月に数万円にも及ぶフィルム代+現像費を払っていた当時から考えるとまさに隔世の感があります。今は瞬時に画像の確認も出るため、バンバン写真を撮って大量の画像を保管していますが、あまりにもカメラに頼り過ぎて、ついファインダーを覗くことばかりに心を奪われて、実際にその場で木に触ったり、まじまじと観察出来ていなかったりと反省も多いです。
まあそれでも目の前で木を見てしまうと、ついカメラに手が動いてしまうのです。特にそれが遠方での出会いとなると、次はいつ来れるか分からないからと、余計に撮影にのめり込んでしまうのです。いずれブログで取り上げる時に、こういう角度の写真は欲しいとか、違う画角の写真も欲しいとか、純粋な材木屋とは違う視点で見てしまう癖がすっかり身についてしまいました。ここは輪島の原木市場で、そのほとんどが能登ヒバで占められていましたが、その多くには「鳳至木材」の木札が。
日光に晒されて表面が銀灰色に日焼けしてしまっていますが、ひと皮剥けば能登ヒバの黄白色の艶やかな表情と香気が蘇ります。この写真でも分かるように能登ヒバにはねじれながれ成長するという特性があるため、丸太の表面にも深い溝が刻まれるものの。能登ヒバは、大きく「クサアテ」(比較的軟らかく造作向き)、「マアテ」(堅くて構造材向き)、「カナアテ」(幻の高級品種)の3つの品種に大別されるそうで、それぞれ材の特徴に合わせて用途が使い分けられます。続く・・・
遂に㈱ムラモト本社を離れ、別の場所に移動することに。といっても、本社から歩いてわずか1、2分の、道路を挟んだ向かいにあるのですが・・・そこにあるのはコンセプト・ハウス『流季(るき)の家』。地元の工務店が一般消費者に「スタンダードな木造住宅」の基本を学んでもらいながら、理想の住宅取得のお手伝いをサポートする会、それが『流季の会』です。村本さんをはじめこの後登場していただく鳳至木材の四住さんや角永商店の角永君たちも入っている地元有志の会。
そのメンバーが、大手ハウスメーカーに対抗するために地元でしかできないこだわりを持った住宅を作ろうということで、実際にそのコンセプトを実践させてモデルハウスを作ってしまわれたのです。ここでイウ「スタンダード住宅」とは、『国産材・県産材を使うこと』、『手刻みで建てること』、『真壁工法にすること』、『透湿・調湿する壁で構成すること』で、それは決して新しいことではなく昔から引き継がれてきた、金沢という高温多湿の風土に適した家づくりの基本。
流季の会には、材料を提供する材木屋やプレカット会社、建材店、また設計士、工務店などメンバーがいて、そのコンセプトに共感された方はこのコンセプトハウスで実際の収まりや、使用された木材の質感や色合いなどを確認することができます。会員による消費者向けのセミナーや勉強会も頻繁に開催されていて、利用頻度も高いということです。工務店にすれば維持費の高い自社の展示場を持たずとも、実物を見せれる場があるというのは強力な営業支援になると思います。
ハウスメーカーにおける常設住宅展示場を構えての営業スタイルは、高額な維持管理費や急速なモデル仕様の変更に柔軟に対応出来ない等の問題もあって、完成現場見学会に移行しつつあります。その方がより最新の仕様で、よそ行きの豪華絢爛ではないリアルな生活感のある家が見られるからです。なので、これからは「我々はどういう考え方で家づくりを考えているか」を示す流季の家のようなコンセプトハウスみたいな形のモデルハウスに変わっていくのではないでしょうか。
この造りの家を坪いくらで建てれます、というメーカー都合の押し付けではなく、それぞれの地域に合わせた形で、こういう環境で家を建てるのであればこれこれこういう素材が適しているので、それを使うことによってどういう暮らし方が出来るのか、そういう考え方そのものを提案していかないといけなくなってきていると思います。「便利」や「使いやすい」、「見た目がいい」から、家としてもっと本質的な事を考えるとき、やっぱり木という素材は欠かせない存在だなあとつくづく・・・。
本日も映画『レヴェナント:蘇えりし者』についての話。本作は不屈の男ヒュー・グラスの凄まじ復讐の物語という事だけではなくいろいろと考えさせられる事の多い映画でした。亡き先住民の妻が遺した言葉、「強い風が吹くときに木の前に立つと、枝は折れそうになる。けれど地面にしっかり根を張った木は、風でも決して倒れることはない。」は、文字通り先住民たちが自然との暮らしの中で学んで知恵ではあるものの、人生の中で多くの事を示唆する意味深な言葉でもあります。
あるゆる事象置き換えられ、受け取る人によってその対象が変わるでしょうが、強い向かい風を受け進むこともままならない時に忍耐強く辛抱し、エネルギーを貯めて逆境を乗り越えていく。言葉の受け取り方はさまざまながら、実際に大木は大雨や台風に見舞われようとその場を動くことなどできません。激しい風にもっていかれそうになる根や枝を踏ん張り、重い雪で折れそうになる枝を支え、それでも悠然と耐え続けます。その格闘の記憶は、伐採後に枝の周辺に如実に現れます。
その痕跡から激しく枝が揺さぶられた様子を思い浮かべるとき、樹という巨大で無口な生き物が内に秘めた生への強い執着と尊厳を感じずにはいられなくなるのです。そういうこともあって、映画の冒頭でグラスたちのハンターチームが林の中で、全住民の襲撃を受けて木々が荒らされ火が放たれる場面では、撮影終わったら早く消火してやれよとか、簡単に傷つけてるけど結構大きな木だそモッタイナイとか、雪の影響でロケ地がカナダからアルゼンチンに変わったそうだけどこれは何の木?
等々、職業的な視点が飛び出してなかなか集中出来ず。どこまでがカナダロケでどこまでがアルゼンチンか分かりませんが、いずれにしても雪をかぶった大森林地帯を見ていると、日本とは比較にはならない森のスケール感に圧倒されっぱなし。大きな木の元では、大きな物語やドラマ、大きな夢が膨らむなんて言ってしまえばそれまでですが、これを林業とか森林資源なんて同じ物差しで語るのはあまりに空しいということは間違いない。映画のスケールは風景が作る要素が大きい。
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