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世の中には不思議なご縁というものがあるもので、それは何かをやり遂げさせるために遣わされた見えざる力のような、あるいはあうキーワードに触れる事で次々と過去の事象が連鎖し、その物語を風化させないために誰かの口を通じて語らせ記憶させようとする意思の力に拠るモノ・・・なんてことまで考えさせられたのが最近身近で起こりました。先日までこのブログで、年末に亡くなられた高倉健さんへの哀悼を込めた言葉を綴っていましたが、その中に出てきたのが北海道の網走刑務所。
北海道という土地は材木業を営む私にとって、広葉樹の産地、木工クラフトの聖地としてとりわけ神聖な意味を持つ場所でもあります。実際に行った回数こそ少ないものの、北海道産材は数多く弊社の倉庫にも並べられており、日頃から身近に接している感覚もあります。その健さんのブログを書いていた時、『おとなの部活動』でお世話になっているyaetcoの高瀬英明君が、フェイスブックで1冊の本について触れていました。それが、吉村昭著の『羆嵐(くまあらし)』という小説です。
たまたま私も、健さんの主演した映画『八甲田山』の森谷司郎監督が、極限状態に追い込まれた人間を描くのが好きという事で、無人島に漁夫が漂流する話『漂流』の事を紹介していたのですが、その著者が同じ吉村昭氏だったこともあり、目に留まりました。また、「自然とは。動物とは。人間とは。生命とは・・・真理と向かいあう一冊」という高瀬くんならではの煽りの言葉にも惹かれ、早速Amazonで購入。220ページほどの中編でしたが、届いたその日に一気に読破。
著者の吉村昭氏は、菊池寛賞はじめ多くの文学賞にも輝くフィクション作家の第一人者で、「彼ほど史実にこだわる作家は今後現れないだろう」とも言われるほどその周到な取材と緻密な構成には定評があります。決して大風呂敷を広げない淡々として筆致と、場面の詳細な状況説明や風景を現わす記述がとても視覚的で、大好きな作家のひとりです。読んだ作品の中でもっとも好きだったのは、四度の脱獄を実行した囚人・佐久間清太郎の生涯を描いた『破獄』でした。明日に続く・・・
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