森のかけら | 大五木材


当ブログに記載の商品の料金、デザインは掲載当時のものであり、
予告無く変更になる場合がございます。
現在の商品に関しまして、お電話、又はオンラインショップをご覧ください。

20150115 1小説の人物たちは一部名前が替えられているもののほぼ史実通りで、吉村昭の綿密な取材による描写は、まさにその場で逐一見てきたが如く生々しい!羆の体長は、九尺(およそ2.7m)、体重百二貫(383キロ)という恐るべし大きさ。憎い敵を倒したものの村民たちはやがて村を捨てました。そこに勝者はなく厳しい現実があるだけ。最後に銀オヤジは村人を罵倒する「きさまらはずるい。ペコペコ頭を下げたりおべっかを使ったりするな。それですませようとするきさまらのずるさがいやだ!」

 

20150115 2自然には決しておべっかやお世辞は通用しない。生きていくという事は真摯な事なのだ。そこに、たった独りで山に入り巨大羆と戦うマタギの矜持を見る思いがします。小説では風景描写にも一切の手抜きが無く、トドマツエゾマツ、ニレ、ナラという風に固有名詞で樹木が描き分けられています。実はそこにも『網走番外地』の囚人使役の森林伐採とも絡みが出て来るのです。小説では冬眠する穴を見つけそこなった『穴もたず』のクマが空腹で凶暴化した事が原因ではと村民は推察しています。

 

20150115 3しかしその後同じようなケースの事件が発生していない事から、江戸時代後半からこの地方で頻繁に行われている沿岸部での鰊粕(にしんかす)の製造用に薪を得るための大規模な森林伐採と、明治以降の内部開拓によって野生動物と人間の生活圏が重なったことが原因だったのではと検証されているようです。小説においては、当時鰊が豊漁で、痩せた耕地を耕す貧しい山の民との対比として、豊かな漁村の姿が描かれるのですが、それが一層三毛別の村民の置かれた境遇の悲劇性を増すのです。

 

Exif_JPEG_PICTURE北海道の広大な大森林を伐採して開拓するという現実が、一方では脱獄を拒む天然の監獄という舞台背景として傑作映画を生み出し、一方では貧しい開拓者に更に過酷な獣を遣わせることになります。魚を捌く時の血にすら拒否反応を覚える情けない男としては、捉えた熊を捌くなんて卒倒ものの場面ですが、わずかながらも北海道の木を扱わせていただく者としては、読んでおかねばという使命感で凄惨な場面の文字も追いました。「羆にすればただ胃袋を満たすだけの餌なのだ!」これぞ自然界の真理、半端モノは生きられません。

※ ラジオドラマ『羆嵐』・・・https://www.youtube.com/watch?v=wEcIcPx7Wz0




オンラインショップ お問い合わせ

Archive

Calendar

2015年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
Scroll Up