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昨日に続いて、『ダリナ』の捜索についての話です。ちなみにAngelin の名前で呼ばれているのはアメリカ、ブラジル、ペルー、イギリス。ブラジルでは他にもUchyranaとも呼ばれます。ホンジェラスではGuacamayo、スリナムではRode kabbe、コロンビアではCongo、プエルトリコとキューバ、メキシコではMoca、ギアナではKoraroという具合に呼称がバラバラ。ダリナというのがどの地域で使われている名称なのかどうしても辿り着けませんでした。
でも調べたお陰でいろいろな事が分かりました。エルサルバドルの呼称はAlmendra de rio(アーモンドリオ) 。春頃にバラ色~紫色の花が咲き、多肉の果実をつけるそうです。その実の事をAlmendraと呼ぶのだそうです。木の事を調べていて、突然別のキーワードで結びつくと嬉しくなるのです。遠い存在であったダリナの木が随分と近づいてきたような気がします。またイギリスではPartridge wood(パートリッジ・ウッド)とも呼ばれています。
パートリッジというのは、鳥のヤマウズラの事ですが、私の推測ですが恐らく名前の由来は鶉の複雑で美しい羽に似た木目からきているのではないでしょうか。その点からもますますダリナとアンゲリンの一致点があるように思えます。ちなみに日本でも『鶉杢(うずらもく)』㊨という言葉が使われます。これは古くから使われてきた言い回しで、雅趣に溢れた美しい鶉の羽のような杢目に対する呼び名ですが主に屋久杉に対して使われています。
ダリナがアンゲリンだと断定できるわけではありませんが、そうだとすれば気乾比重は0.63でやや重くて堅い。ただし見た目から感じる重量感の割に乾燥は早いようで、在庫しているモノもかなり乾燥が進みました。切削や研削も問題ないようです。接地での耐久性は高く、産地では橋用材や杭、自転車、家具、ビリヤードのキュー、傘の柄、杖などに利用されています。今後更に調査を進めるので更なる情報が得られたらアップさせていただきます。
★今日のかけら番外篇・E24 【アンゲリン】 Angelin マメ科・広葉樹・中南米産
昨日、海外の木の中にはその正体がよく分からないモノのあるという話をアップしましたが、かなり情報が出るようになった現在でも、「この木何?」という木にしばしば出会います。240種も木を扱っていてまだ知らない木があるの?なんて言われる事もあるのですが、勘違いしてはいけません。たったの240種です!一説によれば、世界中にはおよそ10万種の木があると推定されています。ちなみに植物は30万とも・・・気が遠くなる数字。
【森のかけら】は、端材を捨てるのがモッタイナイという母親と、世界中の木を見てみたい、触ってみたいという好奇心の父親という両親から生まれたというのがコンセプトですが、10万種となるとライフワークどころか一族としての使命?!さて、そんな初対面の木がこちらの『ダリナ(darina)』という木。木材市場で買ったのですが、見たのも初めてならその名前を聞くのも初めて。しかも情報はほとんどなくて分かっているのはその名前だけ。
仕入れた材を削って見たりして見る限り、印象はマメ科っぽい雰囲気で非常に木目が緻密。あれやこれやと文献を引っ張り出しては調べましたがなかなか正体がつかめず!探す事数日、僅かな手がかりを元にようやく辿り着いたのが1つに名前。メキシコの中部から南米の北部に至る地域に分布(一部は熱帯アフリカにも)しているマメ科の木、『アンゲリン(Angelin )』。これはイギリスでの呼称で、ブラジルでもこの名が使われています。
落葉性の木で通常は樹高が6~15m程度だそうですが、この木には小型から大型のものまで含めておよそ30種あって、中には直径が1~1.5m、樹高が30mにも及ぶ巨大なものもあるそうです。芯材の色は黄褐色から濃赤褐色までいろいろで、木理はかなり通直で肌目は粗く重くて堅い等の材の特徴から考えても、ダリナの正体がアンゲリンではないかと推測しました。ただこの樹種は分布が広く、各国で様々な呼び名があってダリナは確認出来ず・・・。更に明日へ
本日は『コブシ(辛夷) 』の木の最終話。3〜4月頃、葉に先立って小枝の先に純白の大形の花をつけ、北国では春を告げる木として親しまれていています。私が興味深いのはこの材の特徴よりもその名前の由来。和名であるコブシとは、そのまま『拳(こぶし)』の意味で、果実の形がが手を握り締めた拳の形に似ているからだとされています。そう言われればそう見えない事もないですが先人たちの詩的な想像力には惚れ惚れするばかりです。
花には芳香があって香水の原料にもなることから銘木の世界では『香節』の漢字が使われています。若い頃は、無知ゆえに辛夷と香節が別モノだと思っていました。香る木というぐらいだから幹からも香りがするのかと匂いを嗅いだりしたこともありました。では辛夷という漢字が使われる理由は何か?それは漢方で、モクレンの蕾(つぼみ)を陰干しした生薬を『辛夷(しんい)』といい、鎮痛剤や鼻炎などの薬として用いられている事に由来しています。
辛夷というのは、その実が辛い事から。日本にはそのモクレンが自生していなかったため、その代用として同じモクレン科のコブシやタムシバが使われてきたため、そのまま辛夷の漢字が充てられたのです。そのためコブシには『山木蓮(ヤマモクレン)』の別名もあります。他にも『田打桜(タウチザクラ)』の別名もありますが、田んぼの土を起こす田打ちの作業を始める頃にサクラに先駆けて咲き、農作業の時期を決める目安にもなっています。
愛媛でも「コブシの花が咲いたらトウモロコシの種を撒け」と言われる地域もあります。また愛媛の方言名には『ユウレイバナ(幽霊花)』というのもありますが、これは白色の大振りの花が咲いた様子を、夕方や月夜に遠くから眺めるとまるで幽霊にように見えることに由来しています。田んぼや畑の近くに咲く事が多いのも、コブシが日陰に耐えて生育する性質を持った耐陰性の木で、やや湿った場所を好むことによるのかもしれません。
コブシの種は果実を食べた小鳥によって運ばれますが、種子は乾燥に非常に弱く、一旦乾燥してしまうと発芽が悪くなるそうです。樹皮や枝葉からは『こぶし油』が採取されたり、木炭としても金銀などの研磨剤にも使われるなど、意外と言っては失礼ですがコブシにはしっかりとした用途の出口が定まっていたのです。従来の茶室や床の間だけでなくこういう丸太を意匠的に使おうという動きもあり、私自身もこれを契機にコブシの木を見直してご縁を持ちたいところなのですが、現在松山市内での銘木の流通はかなり細っており、昔のように頻繁にコブシのような材に巡り合うのも難しくなってきているのが少々不安なところ。ちなみに英語名はKobus Magnolia。コブシの咲く春はもうすぐです!
本日も『コブシ(辛夷)』の話。銘木屋に行くと、床の間や茶室などの飾り柱や落とし掛けとしてさり気なくコブシが提案されていたのです。ただし残念ながら若かった私はまだ『かけらの洗礼』を受けてなく、スギやヒノキといった今日目の前を駆け抜けていく飯のタネとしての木にしか興味を抱けれない人間でしたので、コブシと聞いても何の感慨もありませんでした。タイムトラベル出来るならばその当時に戻って、自分を覚醒させてやりたいものです。
コブシは大きくなってもせいぜい15m程度にしか成長しないのと量がまとまらない事から、加工して材として利用される事はほとんどありません。私も【森のかけら】で35㎜角に削ってみるまで、コブシの木肌を見たことがありませんでした。材面の色調は淡い灰白色で正直それほど特徴があるわけではありません。時に小物や漆器木地にも利用される事もありますが、コブシとしての利用の多くは皮付きのまま使う床柱や化粧垂木がほとんどでしょう。
コブシの丸太の樹形には雅な趣きと樹皮にはワビサビの風合いがあるため好んで使われます。今まであまり『コブシ』と意識して使ってきたわけではありませんが、茶室や床の間に雰囲気のある木として何度か収めさせていただきましたし、何気に仕入れていました。そのうちの1本が残っていて先の現場でご提案させていただいたのです。改めてコブシとして意識した頃には在庫もなくなっているというのが皮肉なものですが・・・。
どちらにせよそいうい丸太は直径がせいぜい60〜90㎜程度のものなので、【森のかけら】には使えませんでした。直径が100㎜もある丸太であれば『かけら』になるのではとよく勘違いされるのですが、芯は使えませんので、35㎜角のかけらを取るためには木の曲がり具合も考慮するならば最低でも直径180〜200㎜ぐらいは必要になります。かけら用のコブシは、宮城県の材木屋さんから大き目の材を分けていただきました。明日に続く・・・
★今日のかけら・#047【辛夷/コブシ】 モクセイ科モクセイ属・広葉樹・宮城産
先日の『陶工房もちの木』さんの内装に使っていただいた木の紹介の際に少しだけ触れましたが、ニレの踏み台の小壁に使われた『コブシ(辛夷)』の丸太。このコブシという木は、ホオノキやモクレンなどと同じホオノキ科の落葉高木で、成長すると15mほどになります。北海道から九州、そして朝鮮半島にまで広く分布して、花木としても植栽されているのですが、野生のものとなると四国に関しては徳島県内でわずかに自生しているだけだそうです。
四国の山中でコブシに似た木を見つけたら、それはコブシではなく同じモクレン科モクレン属で日本固有種の『タマシバ』の事だという事です。日本海側にはコブシよりも小型で葉の細いこのタムシバが、北日本ではコブシよりはやや葉の大きな変種『キタコブシ』が分布していますが、なるほど辞典を見れば確かにコブシとキタコブシ、タマシバ、それぞれ花の形、似たようなというかそっくり!自慢じゃありませんが私にはその違いが分かりません。
北日本の方には街路樹や公園木としても馴染みの深い木だと思うのですが、私がこのコブシの名前を初めて知ったのは、「白樺 青空 南風 こぶし咲く あの丘 北国の ああ 北国の春 ・・・♪」で始まる千昌夫の名曲『北国の春』。この曲でコブシという木の存在を知りました。ただ当時はコブシの木や花の事などまったく知りませんでしたので、コブシの咲いている風景がどういうものなのかよく分からず、漠然としたイメージでしかありませんでした。
それから10数年後、まさか自分がコブシを扱うような仕事をするとは想像もしていませんでしたが、『陶工房もちの木』さんでも使わせていただいたようにコブシはもっぱら樹皮がついた丸太のままで使われます。コブシ=拳という言葉のイメージからすると何だかズシリと重たい硬質の木のように思われるかもしれませんが、実際のコブシを持ってみれば材としてはかなり軽量の部類に入る方の木です。それでは明日からコブシの性質や名前の由来について。
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