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最近弊社の倉庫で、新築の住宅の内装や家具などに使用する木材を観ていただく機会が増えています。そのほとんどは事前にアポイントを頂いて、工務店さんあるいは設計士さんと施主さんと私の3者で材を観ながら検討していくのですが、このブログなどを見られて突然に会社に来られる方も増えてきました。その際、私が居ればいいのですが、生憎打ち合わせや配達などで不在の時も多く、近所の方であれば再度時間をお約束してご来店のお願いをするのですが、遠方の方の場合はそうもいかない場合があります。
私としては直接自分の言葉でご説明とかしたいので、なるべくお会いしたいのですが、先方さんにも都合があるので、不在の場合でも観るだけ観させて欲しいとおっしゃる場合は、簡単な案内をして自由にご覧いただいています。ただ、数100枚の在庫が常に出入りしていますので、1枚1枚に説明文や値段を付けられないでいました。それは言い訳でただの怠慢なのですが・・・。ですので、観ていただくといっても無造作に立て掛けてある名前も値段も分からない板をただ観るだけという事になります。
さすがにそれでは折角来ていただいたのに申し訳ないと反省し、怠慢に鞭を打ち、せめて樹種名とサイズ、簡単なコメントだけでも付けておこうと少しずつタグを貼っております。最近倉庫内を観られた方は、「?」と思われるかもしれませんが、とりあえず手前に立て掛けた板からタグを付けている最中です。これもあまり複雑にすると長続きしなくなりそうなので、コメントもシンプルに1行にしました。あくまでも私が不在でも、名前と産地、サイズ、値段程度が分かるレベルの簡単なネームプレートのような物です。
他の業界の人からしてみれば、今まで商品にタグも無かったなんて、何て非常識なんだ!と思われるでしょうが、本当にお粗末だと反省しています。1枚の板を製材して割れば、商品が2つに増えて値段がそれぞれに違い、時間が経つと劣化したり、逆に価値が高まったりというと唯一無二の天然素材の特殊な事情があるといえ、やはり目安は必要だと思います。全部の板にタグを付けるには数ヶ月ぐらい掛かりそうですが、何とか頑張ります。本当はタグを付ける前にドンドン売れるのが理想なのですが。
そうです、闇の中からゴールデンバットが、いやコウモリが現れたのです。しかも子供たちの奇声は私の少し先の天井の高いの所から聞こえています。「キャー、コウモリが出た~!」狭い洞窟の中でエコーする子供たちの嬌声、奇声に驚いたのか、この景色を必死にカメラに収めようと、一人遅れて最後尾でキョロキョロしながら歩いていた私の方へ向かってコウモリ達が飛んできました!屈んでいた私の顔のすぐ横を風のようなスピードで飛んでいきました。ぶつからないと分かっていてもやっぱり恐いものです。それでも勇気を振り絞って、コウモリたちをカメラに収めようと頑張ったのですが、1枚も写ってはいませんでした・・・。動揺でカメラも揺れる、揺れる。コウモリといっても特別珍しいわけでもなく、松山の自宅の傍でもこの時期よく群れをなして飛んでいるのですが、これほどの接近戦は初めて。
幸いにも最後尾であったために大人の動揺を子供たち見せなくてすんだのが幸いでした。その後もかなり数のコウモリが頭の周辺を飛び交いましたが、これだけ撮って写らないという事はもしかして幻?少し行くとコウモリゾーンは終了して、また静かな「軽めの絶景」が現れます。足元やライトなどきちんと整備されていて危険度は少ないのですが、部分的に狭い箇所が幾つかあり何度か頭と背中を痛打しました。ヘビー級の方はダイエットしてから来ることをお勧めします。仕事柄、自然素材の中でも木にばかり目が行きますが、石も1万年もの悠久の時を経ると物凄いものに「進化」するものです。たまたまこうして穴神遺跡は発見されましたが、日本には人目に触れることない太古の絶景がまだまだ眠っている事でしょう。誰かに見られるために在るわけではないでしょうが、やはり何だかもったいない気がしてしまいます。
子供たちはどんどん先に進んで姿も声も聞こえなくなると、洞窟には静寂が訪れます。ライトの届かない先には、どこまでもどこまでも続く漆黒の闇・・・。一人で静かな洞窟というと、子供の頃に観た映画が脳裏をかすめます。昔は洞窟の中というシュチュエーションは、もっぱらSF映画の主戦場で、何といっても幼心に深く洞窟の恐怖を刻み込んだのは『続・猿の惑星』(1970年)に登場する地底人です。今見直せば、とてもテープなメイクではありますが、当時は(日光を浴びないので色白になり)血管が浮き出したような表情とテレパシーで会話をするという設定が衝撃でした。映画とは分かっていても、もしかして世界のどこかには地底人がいるのではという男の浪漫を覚醒させてくれました。物語は何でもありのかなり強引な展開でしたが、このシリーズはどれも大好きです。
それと、どうしても名前が出てこない映画があるのですが、それは私に狭い地下空間の閉塞感を植え付け、今でもそれがトラウマになっています。舞台はエジプトで、王のミイラをピラミッドに埋葬するのですが、そこで棺をかついでいた部下達が王のミイラと共に生き埋めにされるのです。ちょうど、両親が出掛けていて、たまたま自分だけでテレビの古い映画を観ていたのですが、これは子供ながらに恐かったです。心底ビビリました!6人の女達が洞窟で体験する『ディセント』(2005年)というホラー映画がありましたが、その百倍は恐かったです。それからしばらくは、地下に閉じ込められる夢を見るようになりました。その影響から今でも狭いところは苦手です。特に屈みこんでは進まねばならないような暗い狭小空間は避けれるものならば避けたいのです。ようやく希望の灯りが見えてきました。
映画だけでなく子供の頃に感じた事象は大人になっても忘れるどころか、行動の指針になったりします。それを考えると、ほとんどの人が人生に1回しか経験出来ない家造りという大事業の中で、ご縁があって弊社の材を選んでくださるお客さんに、少しでも心に残るような『木の物語』やエピソードをご紹介したいと思うのです。しかしながら、個人の能力はいかんともし難く、思いばかりが先走っているのですが・・・。何の材を使うにしても、『使うことには意味がある』事を知っていただきたいのです。もっと頑張らねば・・・。
お盆で帰省している時に、こども達を隣町の城川町のプールに連れて行くのがこの最近の恒例行事となっていて、今年も例に漏れず集団で出掛けました。地元の野村町ではなく、隣町というのがミソで、こちらの方が距離的に近いという事もあるのですが、知り合いの数も圧倒的に少なく、気兼ねなく子供と遊べます。短いながらもウォータースライダーもあって子供たちは大満足でした。いつもはヘトヘトになるまで遊ぶのですが、今年は猛暑で早めに切り上げました。着替えも終えちょっと時間を持て余していると、『鍾乳洞』の看板が!
えっ、こんな所に鍾乳洞があったかなと思っていましたが、町の施設で訊いてみると、プールから車で5,6分の距離にあるという事でまさに灯台下暗し。何かの予感に動かされ、皆で行ってみる事にしました。通常は鍵が掛かっているが申し込みがあれば開けていただくという事で、早速スタッフの方が現地で待っていただいていました。その名は、『穴神鍾乳洞(あながみ)』で、市の指定文化財(天然記念物)となっていました。消えかけた看板の文字が否が応にも雰囲気を盛り上げます。何~?看板には「縄文草創期」の文字が!1万2000年前の事です。
自分の無知を恥じながらも闇の入り口の前に。そこは鉄の扉が固く閉ざされていて、開錠していただくとまだ入ってもいないのに足元に冷気が伝わってきます。違う意味で冷たくなりそうです!中に入るといきなりほぼ直角に梯子があるのですがせ、狭い!そこを登ると更に奥に続く通路も更に狭い~!小さな子供たちはキャーキャー言いながらもスイスイ通り抜けて行くのですが、こちらは腹を引っ込め、背中を丸めなんとかかんとか奥へ奥へと。短パンにスリッパでしたが気分だけはインディ・ジョーンズです!
この鍾乳洞は昭和44年に地元の小学生がコウモリを取りに入って偶然発見したものらしいです。たくさんの土器や石器、動物や人間の骨もたくさん発見されたようで、かつてこの地で人の暮らしが営まれていた事を物語っています。コウモリ?嫌な予感がしましたが、子供たちの手前動揺を見せてはいけません。少しビビリながらもドンドン奥に進んで行くと、それぞれに名前のつけられた芸術的石筍(せきじゅん)や石柱が現れてきます。派手さはありませんが、結構見どころもあります。高さが7,8mもある所もありますが、屈まねば通れない狭い所も多く、75mという全長以上に長く感じます。小学生が最初に発見した時には当然明かりもなかったことでしょうから、さぞかし驚きと恐怖もあったのではないでしょうか。何でも「最初の人」、「ファーストランナー」は偉大です。しばらく進むと子供たちの悲鳴が・・・!
昨日の『クヌギ』の話の続きですが、原木を小割りするのはチェーンソーでミカン割りしてから、帯鋸で徐々に小さくしていきます。丸い木を四角にしていくわけですから、その工程で右の画像のような三角形の半端な材が出てきます。この辺りでは、木皮(こわ)材と呼んだりしますが、【森のかけら】用にギリギリまで木取りしているので、残った『こわ』は本当にペラペラの薄い物になります。通常焼却されるゴミ扱いでしょうが、根が信じられないくらいに貧乏性な私は。これも何かに使えないかと捨てずに取って置いたら、すっかり自然に乾きました。
しかし薄い三角の変形ですから、へこへこになってねじれたり反ったり、更に外皮の部分は虫害の被害を受けやすいので、ピンホールもそこかしこに開いています。それでも短くカットして使える用途がありそうな気がして(!)どうしても捨てる気にはなれないのですが、さすがに溜まりに溜まるとどうしようもないので、泣く泣く最終仕分けをしました。「こんな物が使えるか!」と思われるかもしれませんが、サイズ云々ではなく、『愛媛県産の乾燥したクヌギ』という履歴こそがこの『こわ材』の価値なのです。
そんな事を考えるのは私ぐらいかもしれませんが、履歴ありきで端材を探すと案外見当たらないものですし、それなりの価格になってしまうと思うのです。広葉樹の場合、本当に端材まで使える可能性が潜んでいます。その用途は建築や家具のマテリアルだけではありませんでした。井桁組みした材をめくっていくと、中からはこんな物が!そうです、鳩の巣です。以前から雛の声が聞こえていたので勘付いていたのですが、近づくと警戒するので巣立つまでそっとしておきました。雛が巣立った事を確認してからの作業です。
空気の通風をよくして乾燥を促すために透かしていた隙間を利用した巧みな親鳥の作品です。上述の『こわ材』達が、この巣の上部に重なり合い、屋根の役割を果たしていました。びっしりと鳩の糞も付けられましたが、ひと削り加工すれば綺麗になります。こちらが意図したものではなく偶然の産物であり、急いで使わなければならない材であれば、巣立ちを待てなかったかもしれませんが、たまたまそこに『クヌギ』が在ったのではなく、すべての要件をクリアして安心して子育てが出来る場所を選んで巣が作られたのかもしれません。そんな気がして仕方がありません。だからといって、この『こわ材』の価値が上がるわけでもありませんが、人ではないモノの命を育んだ材です。やっぱり捨ててしまうには可愛そうな気がします。もうちょっと置いとこうかなあ。
★今日のかけら・#040【クヌギ/櫟】ブナ科コナラ属・広葉樹・愛媛産
先日発売させていただいた『今だからこそこどもに伝えたい日本の木36』にも【クヌギ】を加えさせていただいたのですが、この【クヌギ】は愛媛県松山市産です。三新機械の大成郁生君から、薪ストーブの薪用に仕入れた原木の一部を分けてもらったのが約1年前の事です。【森のかけら】にするための材でしたので、原木を細かく45㎜角に荒割して井桁組に重ねて自然乾燥させます。結構な数の原木を分けていただいたので、全て小割りするのに数日かかりました。「H21.8.28」とマジックで書かれた数字は、この井桁が組まれた日です。 |
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