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★今日のかけら・#045 【高野槙/コウヤマキ】 コウヤマキ科コウヤマキ属・針葉樹・岐阜産
『今日のかけら』で取り上げるにはまだまだ実例不足ではあるのですが、高野山真言宗の寺である栄福寺さんの話題でここまで引っ張らせていただいた感謝の気持ちも込めて、高野山つながりで『コウヤマキ(高野槙)』の登場です。その名前からもお察しのとおり、和歌山県の高野山に多く自生していたことが名前の由来です(他には奈良と三重にまたがる大台ケ原が有名ですが、更に福島、高知、大分、宮崎などでも山中にわずかながら点在しているとか)。この木は、日本産の一科一属一種の木でもあります。
太古の昔には世界中に分布していたそうですが、洪積紀( 約170万年前~約1万年前までの期間)にはすっかり滅んでしまったそうです。ですので現代では日本固有の木とされています。長野の木曽地方では、ヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロと並んで『木曾五木』の1つに数えられていますし、高野山ではヒノキ、モミ、アカマツ、ツガ、スギと共に『高野の六木』としても有名な木です。久万高原町には樹齢500年で県の天然記念物となっているコウヤマキがありますが、通常はほとんど見かけることがありません。
木曽五木にしても、高野六木にしてもそれらすべてが常緑の針葉樹であるのは、常に青々として生命力の象徴ともされる常緑樹の小枝を仏前に捧げた風習の影響ではないかといわれています。コウヤマキに限らず、クスノキやシキミなど香りの強い木は昔から邪気を払ったり、悪霊を退ける、魂を浄化させるなどとされ宗教的儀式とは深い結びつきがあったので、特に真言宗の総本山である高野山において、日々執り行われる儀式に際し、独特の芳香のあるコウヤマキは珍重されたのではないかと類推されます。
この矛盾に満ちた名前はなにもニヤトーに限った事ではなく、例えばブラジルの『セドロ』も広葉樹でありながら、『スパニッシュ・シーダー』の別名があります。しかもブラジルなのにスパニッシュ!これは『今日のかけら/セドロ』で詳しく説明させていただきましたが、かつてブラジルがスペイン領であったことと、削るとシーダーのような香りがするからという事で、地域で使われる木の名前がいかに材の特徴を現わしたものであるのか、またいかに分かりやすい木に見立てられるのかという事の証明です。
そう考えれば、PNGでも赤身を帯びたニヤトーをペンシルシーダー(一般的には、北米原産のヒノキ科の高木インセンス・シーダーを現わす俗称として使われる。これこそ本当の鉛筆の木。カリフォルニア香杉 とも呼ばれる)のような香りのする木に見立てて表現したのかもしれません。木の名前って日本でもそうですが、本来の言葉が訛ったり、変化したり、つけ加えられたり、短縮されたりしながら口伝で形成されてきたものだと思うので、そのルーツって案外聞き間違いとかということだってよくある事。
また日本人の感覚では考えらない概念もあって、やや赤身の薄いニヤトーを『ホワイトナトー』、あるいは『レッドシルクウッド』と呼ぶに至っては、何がホワイトで何がレッドなのやら・・・。でもその曖昧さ、おおらかさこそが誰にも愛される自然素材・木の醍醐味なのではないかと思うのです。それが人を騙すためとか市場を混乱させるためというのなら別ですが、自然発生的に起きた命名であるならば、それはそれである種その木の人気のバロメーターのようなものではないかと思うのですが。
そのニヤトーのまあまあ重たい方バツの敷居サイズと、比較的軽い方のニヤトーの板が少しだけ残っているのですが、この辺りでの需要を考えると『端材』扱いで、『森のかけら』や『モザイクボード』などに小割して使った方がいいのかもと思案中。全国的にみれば、今もふんだんにニヤトー一族が流通している地域もあると思われますが、愛媛については「終わってしまった木」という感覚になってしまっているのが寂しいところ。やはり活躍できる場面がなくなると出番のない木は次第に忘れれてしまうもの・・・
細かく割り返して使うのは最終手段で、何か大きなままで利用できる場面がないか出口の探求は続けるのですが、性質が似ている南洋系の木については、個々の木で明確な使い分けが定まりにくいというのが実情です。特にニヤトーはシリカが含まれているため刃先を痛めるため尚更なのです。でも昔はこの木を造作や内装、建具にまで使っていたのですから、今よりも木の個性に寛容だったというか、あるものは何でも利用してしまえの精神が旺盛だったのか、怖いもの知らずだったのか、今があまりに神経質なのか・・・
★今日のかけら・#185 【ニヤトー】 Nyatoh アカテツ科・広葉樹・東南アジア産
以前に鉛筆に使われる木『イチイ』の項で、少しだけ触れたことがあったのが、『ペンシルシーダー(鉛筆の木)』の名称を持つ『二ヤトー』という木。インドシナ半島から東南アジアの島を経てパプア・ニューギニア(以下PNG)、南太平洋、オーストラリア、ニュージーランドまで広く分布しているアカテツ科の数属の比較的軽軟な樹種の総称です。100種以上もの樹種の総称として使われているということもあって、「二ヤトー・グループ」に含まれるメンバーの個性も呼び名もさまざま。
主なものだけでも、ナトー/Nato(フィリピン)、Palai(インド)、Masang(タイ、ソロモン)、Viet(ベトナム)、Sacau(フィジー)、Nato(フィリピン)などなど。日本での一般的な呼び名であるニヤトー(Nyatoh)が使われているのは、マラヤ、サワラク、ブルネイ、サバ、インドネシアなど(国と地域)。そして問題のペンシルシーダー(Pencil cedar )という呼び名が使われているのがPNG。そこでは色調に合わせてホワイト・プランチョネラ、レッド・プランチョネラとも呼ばれています。
100種を超す大グループですから呼称が多いのも当然で、その個体差にも幅がありひと口にニヤトーといっても重さも硬さもさまざま。気乾比重も0.47〜0.89までと相当幅があるのですが、サバでは0.88以下のものをニヤトー、それより重いものをニヤトーバトゥ(Nyatoh batu )と呼んで区別しています。なのでこの辺りでもニヤトーとバトゥ(愛媛ではバツと言いますが)と、それぞれの名前で呼び分けられていましたが、今ではそのどちらも使われる量が激減していずれの名前を聞く事もなくなりました。
昔はよくバツを敷居などに使ったものですが、なんといってもこの木は重い!また、肌目が粗くシリカを含んでいる事から蝋を触っているような独特の触感があり(それで敷居など滑りを求められる場所に使われるのですが)、持ち運び中に粗いそげらが手に刺さる事もしばしば。ところでなぜにこの木が『ペンシルシーダー』と呼ばれるのかという理由は今もまだ分からない(鉛筆に使われているわけでもないのに)だけでなく、なぜ広葉樹の木なのにシーダー(スギ)という針葉樹を指す言葉が付いているのか?
それよりも私の心にすっと入ってくるのはアフリカに伝わる次の話。「バオバブは地球上で最初の木であった。その次に、やしの木がやってきた。やしの木は、 スレンダーで、上品であった。バオバブがそれを見たとき、もっと背が高くなりたいと泣き出した。その次に、真っ赤な花をもつ美しい火炎樹が登場した。バオバブは花を咲かすことがねたましかった。次にフルーツを実らす、いちじくの木が現れた。バオバブもフルーツを実らせたいと拝んだ。それらを見ていた神様は、怒り、バオバブの根を引っこ抜き、さかさまに地面に突き刺した。」
これはアフリカの民芸品などを扱う店で昔買った、バナナの木の皮で作ったというバオバブの木のオブジェです。これを眺めながらいつの日にか、神さまが人に『足るを知れ』と教えられたバオバブの木の実物を見に行きたいと空想しておりますが、異常気象が原因で続々とバオバブが枯れているという話を聞くと、あの異星を思わせるエキゾチックな光景がいつまで存在しているのか不安にもなります。映像を見る限り、立木のまま朽ちるというよりは、水分がなくなって枯れるという感じでした。
そうであれば、伐採後の二次利用というような事も恐らく難しいのでしょう。不謹慎かもしれませんが、木が倒れたり枯れたりする姿を見ると、木をなりわいとする者の本能として「そのまま朽ちさせるなんてモッタイナイ!」と感じてしまうのです。せめて第二の樹生(人生)を違う形で生かせないものかと考えてしまうのです。特に実際に手にしたことの無い木、例えばこのバオバブのような木だと、その思いは尚更膨らむのです。元気で立っている木に対しては湧かない感情なので偽善的と言われればそうかもしれませんが。
商売人ですからまったく打算が無いわけではありませんが、それでも日頃からアフリカの木も扱わせていただき生活の糧とさせていただいている身としては、枯れるバオバブが残念でなりません。例えばその軟らかなバオバブで何かしらの商品を作って、売り上げの一部をバオバブの保護などに充ててもらうとか、あるいはフェアトレードのようなものでも出来たらなどと妄想は広がるのですが・・・まずは「星の王子様」の完読を目指しましょうか。ちなみにバオバブとは、アラビア語で『果実が多い』という意味に由来しています。
さて、バオバブの木の続きですが、本日は具体的にその木について触れてみます。私たちがバオバブと聞いてイメージするのは、上下を逆さまにしたような造形の姿(アップサイドダウンツリーとも呼ばれます)ですが、実はバオバブというのは複数の木の総称なのです。アフリカに1種類、マダガスカルに固有種が8種類、オーストラリアに2種類が存在していて、先日テレビで放送されていたのは南アフリカの国立公園でしたので、Adansonia digitata(アダンソニア・ディギタータ)というアフリカ原産種。
マダガスカルのモロンダバ郊外にある「バオバブ・アベニュー(バオバブの並木道)」に呼ばれる小道に巨大なバオバブが立ち並び、違う星にでも来たかのような錯覚を覚える光景はよくテレビなどのメディアでも紹介されていますが、こちらのバオバブはAdansonia grandidieri(アダンソニア・グランディディエリ)という種類で、アフリカのそれとは少し印象が違います。高さは20m、直径10m前後で、平地を突き破って地下から生えてきたような違和感のある姿はなんとも不思議に思えてなりません。
フランス人のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが書いた小説「星の王子様」に登場するバオバブは、アフリカ原産種だと言われています。主人公の「ぼく」の操縦する飛行機が不時着するのがアフリカのサハラ砂漠ですから、間違いないと思いますし、確かに有名な挿絵に描かれているのも、背の高いマダガスカル産ではなく、ずんぐりむっくりとしたアフリカ産のようです。名前だけならほとんどの人が知っているであろうこの超有名な小説ですが、恥ずかしながら私は完読した事がありません。
実は文庫本まで持っていて何度も挑戦しているのですが、最後まで読み切った事がないのです。体裁は児童文学ということになっていますが、最初に出会った小学生の頃に感じた「翻訳の言葉のリズムの違和感」に体が拒否反応を覚えてしまったのと、何だか抽象的というか哲学的というか回りくどい言いどうしても馴染めず途中で投げ出してしまった事がトラウマとなっていて、おとなになってから何度も挑戦しているのですが(バオバブの木のネタとして)、どうしてもうまく着陸できないようで・・・。
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