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本日から再び『能登ヒバ』の話に戻ります。石川県の県木である『能登ヒバ』は県下で多くの物件で利用されています。ということで、実際に利用されているところを拝見させていただくことになりました。輪島市三井町にある『石川健康の森 総合交流センター』。実はここ、四住さんの『鳳至木材』さんが指定管理者になられて、管理・運営を行われているそうです。さすがはレッドキング、守備範囲も広うございます!この施設の中にはキャンプが出来る様々は施設があります。
テントサイト、ログハウス、バンガローなどのオートキャンプ場がそれですが、その中のログハウスにご案内いただきました。ログハウスなんで当然すべて木造りなんですが、その素材が『能登ヒバ』。今からおよそ20年ほど前に施工された建物ということでしたが、内装はもとより外部もそれだけの年月が経過したとはとても見えないほどにしっかりしていて、能登ヒバの耐朽性を体現していました。言葉やデータで説明するよりも一目瞭然で能登ヒバの実力を知ることが出来ます。
先に訪れた原木市場に置いてあった能登ヒバもそのほとんどの原木に『鳳至木材』の札が付いていましたが(鳳至木材さんが買ったという意)、四住さんは輪島における能登ヒバの第一人者で、能登ヒバの取り扱い量についても他社を圧倒されています。ここのログハウスの能登ヒバを収められたのも勿論鳳至木材さん。全国各地から能登ヒバを見学しにやって来られる方(設計士や工務店、施主、材木関係者等々)は後を絶たないようで、すっかり観光コースが出来上がっているようです。
能登ヒバには『蚊帳(かや)いらず』の別名もありますが、中に入ると静謐な空気が漂っている感じがします。職業病というか、毎日木の中で仕事をしているせいもあって、木の匂いに鈍感になってしまっているようで、しかも弊社は狭い倉庫にギュウギュウ詰めにいろいろな木が入っているので、その匂いも混じり合ってかなり濃厚なのですが、私には微香。それでも会社に来られる一般の方は、倉庫に入るなり「木の匂い、凄~い!」て仰るのでかなり匂いがあるのだと思います。
なので、このログハウスも私にはあまり匂いが感じられなかったものの、一般の方には刺激的な匂いがするのだと思います。ウッドデッキもありましたが、とてもこれが20年経過したものとは思えないほどのコンディションを維持していて驚き!適者生存で、自身にとって最良の環境を得た能登ヒバだからこそ、ここまでの品質を保てているのだと思います。これがそのまま温暖な愛媛でも通じるかどうかは疑問ですが、それを考えると木にとって生誕地に勝る環境はないのかも・・・。
書いているうちに『能登ヒバ』そのものからは脱線してきましたが、気になることがあると調べておきたいので脱線ついでに昨日ご紹介した『櫟原北代比古神社(イチハラキタシロヒコ)』についてもう少し。私の認識では、『櫟』の字は「クヌギ」だ思っていましたが、調べてみれば「クヌギ」以外にも「イチイ」と読むと記してありました。しかしそれは、鉛筆の素材として有名なイチイ科の針葉樹『イチイ(一位)』の事ではなく、ブナ科の広葉樹『イチイガシ(一位樫)』の事。
以前に(といっても見直したら2009年の7月でしたのでもう7年も前の事ですが)『今日のかけら』で、『イチイガシ』の名前の由来については触れていますが、改めて記すと・・・『イチイ』を『一位』と表記するのは当て字のようです。名前の由来は、最火樫(いちびがし)からきていて、意味はもっとも良く燃える木という事で、この説が有力とされているようですが、他にも諸説あるようです。この事から、地名や苗字などでは『櫟』と書いて「イチ」と読むこともあるようです。
では、その神社の周辺にイチイガシの木でも群生しているのかしらと調べてみると、日本海側に面した海岸に位置する櫟原北代比古神社の社叢林(しゃそうりん)は、海に面して季節風の影響を強く受ける急崖にはクロマツやケヤキの林。風背側にはタブノキの林をはじめ、ヤブツバキ、ヤブニッケイ、ヒメアオキ、トベラ、オニヤブソテツなど多様な樹種が豊かな林相を形成し、能登の自然植生を示す標本として学術上、貴重だそうです。ちなみに社叢林とは、鎮守の杜とも呼ばれるもの。
石川県には、後でその付近まで行くことになる『獅子吼高原(ししくこうげん)』やUFOの町として知られる『羽咋市(はくいし)』など非常に興味深い地名が沢山あるものの、そればかり書いていると、難読地名ブログになってしまうので、地名に関する話はこれぐらいにして『能登ヒバ』の話に戻ります。ちなみに非常にそそられる『獅子吼高原』の由来ですが、奈良時代の僧・泰澄がその周辺で4宿したことから「ししゅく」となり、「獅子吼」の文字を当てたという事で現実は残酷。
ところで前から、能登のこの地で『能登ヒバ』以上に気になっていたものがありました。それは四住さんの会社にもなっているその地名『鳳至(ふげし)』。なんせ、「鳳(鳳凰)が至る」って事なんですからさぞや高貴な伝説のある地に違いない!初めて四住さんとお会いした時には読むことすら出来ませんでした。いつかこの地名の由来を訊かねばと思っていたのですが、今回ゆっくりお話しする機会があったので、長年の謎を訊いてみたところ・・・「由来なんて考えたことなかった」。
ええ~っ!つまり由来は知らないし、生まれた時からそうなんで気にしたこともなかったと言われるのです。まあ確かに先祖代々その名前をごく普通に使っていれば、記号のような存在になって深く意味など考えたりしないものかもしれません。後からその言葉が入ってくるから興味や関心が湧くのかも。私も生誕地の由来は調べた事もありませんが、松山に移り住んでから地元・平田町の由来が妙に気になって調べました。由来は辺り一帯が平らで広い地形であったからというごく平凡なもの。
ならばと自分で調べてみましたが、ネットや書物をいくら調べてみても「不明」。世の中には同じようにこの名前の由来にご興味をお持ちの方も多いようで、何人もの方がその謎解きに挑まれて独自の説を打ち立てられているものの、核心部部は想像の域を出ず。その中で私がもっとも共感を抱いたのは以下の説。鳳至木材から9キロほど離れところに、櫟原北代比古(イチハラキタシロヒコ)神社という由緒ある神社があって、その昔(1186年)源義経が北国下落の時参詣したとか。
石川県指定天然記念物にも指定されている神社で、かつて鷲嶽八幡宮(ワシオカハチマングウ)と言われた時期もあったそうですが、その後現在の社号に戻されたそうです。鷲嶽という名前は、この地に鳳至比古(フゲシヒコ)という神様がいて、民を苦しめる悪鳥大鷲を退治し、その骸を埋めて現在の社叢が出来たと言われています。鳳至=「オオトリに至る」と考えれば、その大鷲がオオトリだったのかもという説。大鷲は冬になると南下してシベリアから日本にやって来ます。
日本で見られる猛禽類としては最大で、大きなものになると羽を広げると2.5mにもなるそうで、銃の無い時代には恐らくこの巨鳥のなすがままでさぞ恐怖が募ったことでしょう。ただ一方で、鳳凰は聖天子の出現する時この世に現われる縁起のいい瑞鳥とされています(鳳が雄で凰が雌)ので、かつて能登にも生息していたもうひとつに珍鳥・朱鷺(トキ)の可能性も考えられています。昭和30年代には能登では絶滅したそうですが、空を舞う白い鳥の姿は神々しく見えあたのかも。
非常にロマンを感じさせる説で面白いのですが、一方では『もともとフゲシと呼ばれていた地名に〔フゲ+シ〕という分析を加えて、そのフゲに「鳳」を、シに「至」を宛てたことによるもので、そのような「好字」を選んだ結果として、この地名に《鳳が至る》という意味が生じましたが、それはあくまでも漢字の音を借りた表記に後から意味を持たせたに過ぎない』という冷静かつ残酷な見解もあるのですが、それでは男のロマンが台無し。真偽は分かりませんが断固大鷲・朱鷺説を支持!
石川県の話を初めて20日目ですが、実際には石川県で動き始めておよそ4時間が経過したところ!このままのペースでいけば石川の旅の全貌を伝えるのに2ヶ月ぐらいは必要になりそうなので、さすがにここから多少はスピードを上げていくつもりですが、心に残る旅だったのでスルーしてしまうには勿体無くて勿体無くて。『能登ヒバ』の原木市場を見た後は、四住さんの会社・鳳至木材に移動して能登ヒバの製品を見せていただいくのですが、その前に食事をしようということに。
能登は、能登半島の北岸に位置し、古くから港町として栄えてきた歴史があり、輪島の朝市が有名ですが、新鮮な海の幸に恵まれていて、寿司も有名。四住さんの会社の近くの寿司屋さん、寿司処 伸福さんで能登の旬の魚介類を堪能させていただきました。地元の牡蠣も半端ではない大きさ、肉厚でプリプリしていて美味でした。ここで食事をしながら四住さんと村本さんにいろいろ能登や輪島の話を伺ったのですが、その地の歴史や文化を知ることもその地の木や森を知ることの第一歩。
ということでなるべく地のものにも挑戦しておかねばと思い、有名な『魚醤(いしる)』の味見をさせていただいたのですが、もともと魚介スープとかは得意でない私の「お子様舌」には、ちょっと味が濃厚すぎました。能登はその地理的条件ゆえ、古くから日本海側の物流の要所として繁栄してきましたが、それは江戸時代の「北前船」に依るところが大きいようです。江戸時代に鎖国が行われていた当時でさえ、能登では海外との交易もあって人々の暮らしは今では考えらえないほど豊かだったとか。
かつては花街もあったそうで、往時の繁栄が偲ばれます。能登ヒバもその北前船によって能登にもたらられたモノのひとつですが(最近の調査ではもともと能登にもその種は存在していたとされていますが)、当時は禁木として厳しく管理されていた『青森ヒバ』が当地では環境に順応してうまく根付いて成長した事と、その名を秘するための隠語として『档(アテ)』と呼ばれるようになったのです。その档の字も最初は読めませんでした。全国いろいろな産地を廻ると新たな出会いがあります。
『能登ヒバ』はその生い立ちの特殊性もあって、非常に私好みのマニアックな木のひとつなのですが、なにぶん産地が遠いということと、愛媛での知名度がほとんど無いなどの理由で、愛媛の現場で私が実際に使ったことのあるのは内装材のみ。フローリングやパネリングの形状に加工されたものは、今までにいくらか取り扱ってきました。その頃は四住さんの鳳至木材製の商品ではありませんでしたが、それまで愛媛での使用実績がほとんど無い樹種だったのでいろいろトラブルもありました。
かの地(能登)では、十分に乾燥もされているといっても、そこは鉛色の空が支配する湿度の高い地域のこと。乾燥機から出た段階で再び湿気の多い大気に晒され、当地の気候に馴染みながら安定していくのだと思います。それを地場(能登や金沢)で使うには、材にとってもそれが最適なコンディションだと思うのです。ところがそこから県外の温暖な地域、それこそ愛媛なんかに送られると、湿度の高い能登で安定していた能登ヒバも劇的な環境の変化に戸惑いながら恐縮、いや収縮。
皮肉なものというか、地域限定の材がそこを離れ全国区へなろうとする時には必ず通らなければならない通過儀礼みたいなものなのですが、愛媛だけでなく、能登ヒバを使ってみよう~!と張り切ってパイオニアとして取り組まれた全国の新しいもの好きは、恐らく誰しも大なり小なり痛い目に遭っているのではないかと思います。私は若い頃に、同時期に全国のいろいろな木を使ってみようと、取り寄せては販売したのですが、能登ヒバと信州カラマツにはかなり強い洗礼を受けました。
それは、産地の問題というよりはこちら側があまりにも無知であったために起こったトラブルで、いい気になって木を建材感覚で捉えてしまった私の浅はかさと経験の無さ。遠方の珍しい木を持ってくれさえすれば面白がって売れると考えた、若さゆえの暴走でした。その地域にしか育たない木が、なぜその地域にしか育たないのか、適者生存の考えすら分かっていませんでした。今思えばその時の痛い経験が、私の血となり肉となり地域材を考える基礎となってくれてはいるのですが。
その時はまだ村本さんや四住さんとは出会ってもいませんでしたが、能登ヒバが全国に知られるようになったお話を伺うと、やはりいろいろとご苦労があったようです。温度差による乾燥収縮やねじれなどによってクレームや返品の雨嵐と、私とは比較にならないほどの大火傷を経験されたよう。しかし、その対応によって品質は改良され、乾燥精度も飛躍的に向上し、今は安心して使える内装材になりました。ひとつの樹種が認知されるようになるまでには秘められた多くのドラマがあるのです。
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