森のかけら | 大五木材


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私のとっておきだった墨流しのクロガキが手元から無くなって数日後のこと、再び「大洲の異能なる変態さん」からご連絡がありました。お店で大人数のパーティなどをするときに料理を乗せるための木のプレートを探しているとの事。それでご来店いただきいろいろ見てもらったのですが、長さ1m前後の小幅の『エンジュ(槐)』が、辺材と心材の色のコントラストが面白いということで、数枚ご購入いただきました。辺材分部に多少ダメージがあったりピンホールもありますが、そんな事を気にする人ではありません!

そしたらついでに欲しいものがあると、またもや危険な倉庫の奥へ!そこにあったのは例のクロガキの挽き落としのペラペラの薄板。もともと仕入れた際は厚みが5寸近くもある分厚い板だったのですが、それでは中身の美味しいところを味わいつくせないと思って、私が半分ぐらいに製材したのです。その際に、少しねじれがあったのでレベルを出すため補正して挽いた時に出来たペラペラの薄い板。厚みは薄くともその体には立派な墨流しの柄が刻まれています。しまった、これも見られていたか!後悔先に立たず・・・

もう先に親が取られてしまっているのですから今更何を言おうと防ぎきれるものではありません。どうぞどうぞと差し出しました。といっても挽き落としの薄板で端は割れて反ってもいます。これをどうやって使いこなせるものか思っていましたが、お店を訪れて納得。あのクロガキを厨房のカウンターとして、そこから立ち上がって壁面にその薄いクロガキは使われていました。塗料を施されて黄色と黒の縞柄は明瞭に。嗚呼、ここまで使い切っていただけたんだなあと脱帽です!木を単なるマテリアルと考えていたら思いつかない発想。

うちの倉庫で初めてクロガキを見たあの日あの時、堀江君の頭の中にはこの光景が浮かんでいたのでしょう。私の大好きなクロガキに素晴らしい舞台を与えていただき本当に感謝です。木を高く買っていただくのも勿論嬉しい事なのですが、木に惚れて買っていただくというのはそれ以上に嬉しい。木は決してひとのためにだけ生まれてきたわけではない。ならば木を使う者はその木に感謝し敬意を払い愛を注ごう!さあ、木を愛するフェチの皆さん、大洲の『Horie Gastronomy Inc』に美味しい料理を食べに行こう。愛ある異能の変態に会いに行こう

Horie Gastronomy Inc(ほりえ ガストロノミー ) 

定休日 :不定




ビーチのスポルテッド材を選びに来た時に、私は別のところで設計士さんや大工さんと図面を見ながらおさまりについて話しているのに、堀江君は独りで倉庫の奥の方にずいずいと入り込んでいって何やら熱心に見入っていたので、やばいとは思っていたのですが、案の定私の貴重なお宝に目をつけていました。以前にも紹介した『墨流しのクロガキ』です。こちらに売ろうという気がないというのが大問題ではあるのですが、どうもその時から彼の狙いはそのクロガキに定まっていたようでしたが、あえてその日はクロガキには触れることはせず。

そもそも設計士さんから聞いた話では、そのクロガキを使うようなところは構想はなかったのです。まあ変態なのでこういうマニアックな木に関心があるのだろうなと思って、正直ほっとしていました。というのも、販売目的というよりは濃いいお客さんが来られた時に見せるため、語るために看板というか、ネタとして、自分のフェチ度を見せびらかすために買ったクロガキなので、手放したくはなかったのですしかも以前にこのクロガキを気に入られて泣く泣く数枚手放してしまっていたので(左写真)、残りはあとわずかになってしまっていたのでなおさら。

堀江君から私の携帯電話に連絡が入ったのはそれからしばらくしてのこと。ちょっと見たいものがあるのだけど・・・。前に買ってもらったモミジバフウがあと少し足りないので購入したいという話でした。その件はすぐに片づいたのですが、他にも欲しいものがあると倉庫の奥へ。ギクリ!やはり本命はあのクロガキでした。あの日以来彼の中ではクロガキへの熱い思いが沸々と煮えたぎっていて、遂に今日強奪に、いや購入に訪れられたのです。同じ匂いのする人間、どう言ったところで守り切れないのは覚悟しました・・・

ここに置いてある以上いつかは手放さなければならない運命。本当であればもっともっと骨まで語り尽くすまで手元に置いておきたかったけれど、まあここまでの変態に見込んでもらえるならばクロガキも本望であろうと、泣く泣くクロガキとの決別を割断。たぶん店に置いたら誰にも相手にもされなくとも延々とクロガキへの偏執的愛を延々と喋り尽くすんだろうな~。変態的な材木屋のおっさんとの激しい交渉を経て手に入れた話もするだろうな~。綺麗に仕上げてもらってお洒落な店の中で大勢の人に愛でてもらいなさい。さあ、薄暗い倉庫から華やかな舞台にお出なさい(涙)!




スポルテッドというのは自然の気まぐれで生まれた副産物のようなものなので、アーティスティックな柄になっているものもあれば、腐食が進んでスポンジ状になってしまってただただ朽ちる寸前のものもあります。その中からコンディションのよいものを選び出して買うのは真性の変態ではありません。そんな分別のある人はインターネットで木を買えばよし。とりあえずあるだけ全部買う、これが真性の変態スポルテッドビーチが私の元を離れれから数か月。改装工事がほぼ終わったとの連絡はいただいたものの中々機会を得ませんでした。

先日、ようやく南予方面の配達も兼ねてお店にお邪魔する機会が巡ってきました。今回改装されたのは、今まで使用されていなかった元通路だった場所。そこに夜のみ営業するオシャレなバーが出来上がっていました。お邪魔させていただいた時間が昼間だったのですが、明るい時間帯でも見てもスポルテッドビーチの存在感は際立っていました。長さが2mの板を繋いで幅剥ぎにしてカウンターとして使うという事は図面で分ってはいたものの、こうして完成した姿を見ると、よくぞここまで仕上げていただいたものだと感慨もひとしおといったところ。

スポルテッドの柄もバランスよく配置されて、あれだけ癖の塊に思えたその風貌も、この店の中ではスッキリと納まっています。堀江君から夜のお店の様子の写真も送ってもらいましたが、夜になって薄暗い灯りの中に浮き上がるスポルテッドビーチは妖しい雰囲気を醸し出していて、まさに真骨頂発揮!堀江君イメージした空間がこれならば、確かにこの木でなければならなかった理由が分ります。これならば私が倉庫に数年寝かせて独りで味わい尽くすよりも数倍も価値がある。多くの人に愛でていただきたい。

一緒に買っていただいたブルースティンの入ったモミジバフウもまったく無駄にすることなく、あるものは棚板となり、あるものはレジ台となり、あるものは手洗いのカウンターとなって骨の髄までしゃぶり尽くしていただいておりました。さすが、私がその変態性を見抜いただけのことはある。よ~く、分っていらっしゃる!ところで、完成するまでに堀江君はその後も何度か弊社を訪れてくれました。その都度、木材も買ってもらったのですが、初めて来た時からどうしても気になる木があるという・・・。明日に続く




堀江幸治君は愛媛県大洲市で仕出し料理店「ほりえ」を経営する傍ら、ミュージシャンとしても活躍するなど多彩な才能を持った人物。そんな堀江君が大五木材にやって来たのは、お店を一部改装するにあたって何か面白い木を探していて、一緒に音楽活動をしていた清家ユカリさんがうちに誘って連れてきてくれたのが最初の出会いでした。それまでまったく面識がなかったものの、二言三言話しただけで同類だということはすぐに分りました。更に倉庫の中に案内して、木を見る姿を見たときに、ああ真性のそれだと気がついたのです。

その時には確かまだ店の改装の件は、設計段階だとかで、何の木を選ぶというような状態ではなかったと思うのですが、まあ普通の人なら足も止めないであろう木に視線を送るその背中に、必ずこれはまた来てくれるとの確信を得たのです。驚くかな、その確信は次の日にやって来ました。今近くに来ているのだけど寄ってもいいですか?まだ図面もできていないはずなのにどうしたのかと思ったら、昨日見た『森のりんご』が気に入ったので購入したいとのこと。そう、彼は危険を顧みず自ら進んで底なし沼に突撃するタイプの木フェチ野郎だったのです!

そしてそれから数か月が経って、正式に図面も出来たので材料を選びに、設計士さんと大工さんを伴って再び大五木材にやって来られました。それまでに数回、木の小物などを購入していただいていたので電話やメールなどでやり取りはしていて、まともな木材など得るために大五木材に来るわけではないということは互いの共通認識となっていました。探しているのはインパクトがあって、癖が強くて、普通ならば誰もが敬遠するであろう訳アリの木。倉庫の中を隅から隅まで嘗め回すように探す堀江君と、次から次へと曲者を紹介する私。

数ある曲者の中で堀君のハートを鷲掴みにしたのは、ビーチのスポルテッド腐朽菌によって筋状の黒い染みが出来たスポルテッドは、自然が偶然作り出したネガティブな芸術作品。実はこのビーチのスポルテッドの板材、仕入れてまだ日が浅く、本音を言うと私自身が楽しみ尽くしていなかったのでまだ売りたくはなかったのですが、堀江君の惚れ込みようを見た時に、恐らく彼以上にこの木に愛情を注いでくれる人はいまいと感じ、手放す決断をしました。ついでにブルースティンのモミジバフウの板もまとめて大量にお買い上げ!収まるべきところに収まった。続く・・・




昨日、つい調子に乗って自社のことを『変態材木屋』と書いてしまいましたが、あまりにも僭越でした。弊社ごときが変態材木屋を名乗ろうなどとは100年早い!変態に憧れる材木屋に、訂正・お詫びさせていただきます。最近、さまざまな分野で少しマニアックな商材を扱ったり、物言いをするとすぐに『変態』というフレーズをつけたがる傾向にありますが、『変態』などというのはそんな簡単に使っていい言葉ではないのです。木材関係でいえば、ただ多くの樹種を扱っているとかマイナーな木を持ってるとか、そんなのは論外で、変態呼べるにはそれなりの格が必要なのです。

誤解があってはいけないので、まずは『変態』という概念について私の考えを説明させていただきます。辞書によれば、〔変態とは・・・普通の状態と違うこと。異常な、または病的な状態〕とあります。私の中では、ある特定のものについて偏執的に、病的に執着して極めている、ある意味どうしようもない人という解釈です。もちろん最大級の賛辞であり、外道・邪道の世界を往くものとしては、目指すべき世界!常識人からすれば、なぜそんな事を?と思われるような事に異常なほどに執着してしまう木材フェチズムの極北。

以前に、日本の最高学府を卒業して染め物職人になった京都の変態から、「変態を目指した段階で、もはやそれは誰かのコピーであって、本来の変態とは似て非なるもの。ピカソやマティスのような決して真似の出来ないような異端の才こそが変態として崇められるものであって、その線を少しでも意識して狙った時点でそれは普通の人が変態をコピーしただけのもの。なりたいと思ってなるものが変態ではなく、周囲が自然とそう呼んで認めものこそが本物の変態。だから決して変態を目指してはいけない。」と教えられました。

だからあまり気軽に「変態」なんて言葉は使えないし、使うべきではないのですが、最近わざわざこんな材木屋を訪ねてやって来られる人の中には、畏敬の念を込めて「変態さん」と呼ばずにはおられないような方が急増しています。そんな変態さんのひとりが、初めて大五木材にやって来たのは今からおよそ1年ほど前のことでした。中学・高校の同級生で、DJや音楽活動も精力的にこなしている清家ユカリさんが、合わせたいひとがいるからと連れて来たのが最初の出会い。そのひとの名前は、Koji Horie(堀江幸治君。明日に続く・・・




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