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昨日ご紹介したように、強い毒性を持つアセビの葉や枝は虱(シラミ)退治や蛆(ウジ)殺しなどとしても利用されるます。その毒性は鹿さえもその葉を食することを避けるほど。繁殖力の強いアセビは、天敵すらいない地域で圧倒的な存在感を示し、アセビの群生が現われる事になります。成長してもせいぜい4m程度にしかならないため、用材としても人気が薄く、定まった『出口』が無い事から伐採も進みません。付近の木々が鹿などに喰い尽くされる中、アセビだけがやたら繁茂するというバランスを逸した森が各地で出現。
実は全国各地で同様の事態が発生しており問題となっています。新芽が出るたびに鹿に食べられ次世代の幼樹が育たず、アセビなど有毒植物だけが繁殖した偏った森をどうにか出来ないものか、という事で密生したアセビを伐採することで針葉樹や広葉樹の成長を促し、自然植生を回復させるという取組が行われています。神戸の六甲山でもアセビの大繁殖が問題となりその伐採が進められているのですが、伐採後の使い道を拡げられないだろうかという事で、巡り巡って私の元にやって来たアセビの木。
材木屋として日々木に触れて担いで接していると、木が決して温かみがあって優しいものだと感じられない事は多々あります。アフリカのマメ科の木が足先に落ちて文字通り血豆が出来る事などしょっちゅうですし、ラワンをはじめとする東南アジア系の針のような鋭利なそげらが爪の間に刺さって地獄の苦しみを味わったり、モアビの粉塵を嗅げば一日中その鼻と喉が痛痒くなります。他にも糞尿臭のある木、粉塵が喉を襲う木、尋常じゃないぐらい重い木、思わぬところに潜むヤニの襲撃等々・・・。
まあそのほとんどがこちらの注意不足と慣れによる取扱いの作法怠慢が原因なので、木が悪いわけではないものの、そういうアクシデントに見舞われた時は、『木の神さまが怒っていらっしゃる』と素直に反省することにしています。ただし、私を傷つけた端材は【森のかけら】に使ってやらずに焼却炉に放り込むという陰湿な仕返しをするのです!?。それはともかく、優しいばかりが美しいばかりが木ではありません。使いにくいとか、毒があるからといってもそれはあくまで木の個性。
アセビの木を加工したのは初めてでしたが、径は大きなモノでも150〜160㎜前後、曲がりくねった樹形なので短かくカットしても丸味が付いてしまいます。材は緻密で結構な硬さがありましたが、青染みが全体に広がっていたり、虫穴や節があったりで、やはり用材としては気軽に扱えるというものではないようです。この六甲山のアセビの詳しい出自についてはまた後日詳しく触れますが、こういう木と対峙すると俄然燃えてきます。誰も手を出さないなら私が・・・危険な香り?!
今日も『アセビ(馬酔木)』の話の続き。そのアセビですが、愛媛県内ではいろいろな方言名で呼ばれることもあり、アシビ、アセブ、ウマヨイギ、ドクギ、ドクシバなどがあります。アシビは古名の名残りかアセビの音便(語が連接する時、発音しやすい別の音に変わる現象)。アセブは久万高原町や旧面河、九柳谷などで使われる方言名ですが、「アセブ谷」という地名も残っていますので、アセビの群生があった場所だと思われます。しかもその場所からは縄文後期の遺跡も発掘されています。
ウマヨイギは馬酔木の訓読み。ドクギは有毒性を示したもの。このアセビ谷に関わらず、アセビの名前がつく地名は方言名を含めると北は青森から近畿・紀伊半島を経て、中国、四国まで全国各地に多く残っています。万葉の古き時代から日本全国に分布しながらも、ほぼアセビかアシビ、アセボ、アセモなど大きな変化が見られないという事は、余程その毒性が認知されていたという事なのかもしれません。各地で鹿や馬が誤飲して痺れたのか、その逸話だけが各地に伝えられたのか・・・。
アセビはツツジ科の植物ですが、ツツジ科にはアセビに限らず有毒植物が多くあります。例えば『アザレア』(別名、西洋ツツジ、オランダツツジ)は、葉に含まれるグラヤノトキシンやロードヤポニンという成分により、嘔吐、下痢、痙攣、昏睡などを引き起こし、摂取量が多いと死に至る場合もあることから猫に危険な有毒生物として知られているし、『レンゲツツジ』㊨は『羊躑躅(ようてきちょく)』という漢字が表わす通り、 羊がその葉茎を食べると立ち止まりうづくまるほど有毒。
そのように有毒植物として知られるアセビですが、扱い方次第では毒も薬になるということで、実は日本人は古来よりこのアセビの毒性を利用してきました。アセビの葉を煮て、その煮汁を牛や馬にたかる虱(シラミ)などの殺虫剤としたり、汲み取り式の和式便所に入れて(あるいは枝葉ごといれた)蛆殺しとしたり、大根などの野菜の害虫駆除にも使われてきたのです。また材は、皮付きのまま床柱にされたり、ろくろ細工や寄木細工、櫛、薪炭などにも用いられてきました。更に明日に続く。
本日は歌や文学的世界にも登場するアセビ(馬酔木)という木について。『まほろば』という曲で存在を知ったアセビですが、若い頃は実際にその姿を見たこともありませんでしたし、私にとっては曲の世界の中でしか興味の対象としかなりえませんでした。それは木を取り扱う仕事に就いても同様で、建築材としてほぼ無縁のアセビは、その姿はおろか名前すら木材市場で聞く事はありませんでしたので、(住宅や家具などの)木の仕事には無関係な木という印象でしかなかったからです。
改めてアセビの森の写真とかみれば、太陽の光を遮りその曲がりくねった樹形はいかにも魔女の出てきそうな妖しい雰囲気があります。昼さえ薄暗いアセビの森、夜になってフクロウの鳴き声でも聞えた日には・・・。アセビの材の出口については後述するものの、この光景って何かに似ていると考えていたら、ティム・バートンがやサム・ライミの描く映画の世界に出てきそうな悪魔の森へいざなう異空間。そういう映画のロケ地として招致すれば意外と使えたりするのでは?!
さて、見ようと思わなけば、その木が目の前にあっても気づかないものです。曲のイメージから、てっきり奈良の辺りに生育する特殊な木とばかり思っていて、山に入るようになっても愛媛の山にあるアセビの存在はまったく見えていませんでした。アセビは、温帯中部以下の山地に広く分布する常緑の中~低木で、四国では標高標高1000m以下で多く出現するようです。春から初夏にかけて釣鐘形の小さな白い花が穂になって垂れ下がり、満開時にはまるで枝に雪が積もったように見えるほど白い花で包まれます。
この木の枝葉には、アセボトキシンという動物の神経や呼吸中枢を麻痺させる有毒成分が含まれていて、牛や馬、鹿などの大型生物でもこれを食すると酔ったように足がふらつき、足が痺れて動けなくなってしまう。そのため鹿などの草食動物はアセビを嫌うので、鹿の多い場所ではアセビが群生することがあるようです。しかし鹿はそれをどうして知っているのか?匂いなどから危険性を知るのか?万葉の時代から日本にあったわけですから、遺伝的に情報が継承されているのでしょうか?
いずれにせよ馬(鹿)が食べると酔ってしまうから、馬が酔う木で馬酔木(アセビ)。あるいは、酔って足が痺れる事から足痺れの木が縮まってアセビになったとも言われていますが、いずれにしてもその漢字が表わす通り、この木の持つ有毒性を如実に表現したうまいネーミングであることに違いはありません。名前の由来としてはこの他にも、『シキミ』同様に「悪(あ)しき実」から来ている説や、果実が割れる事から「はぜ実」から来ているというのもありますが、ちょっとパンチがないなあ・・・続く。
弊社におけるかなりディープな木の愛好家の皆さんが辿り着かれる頂きの1つが『森のりんご』。プレミアな木(あくまでも私の独断と偏見による)の出口として作った、見た目は可愛いけれどかなりマニアックな商品。「これ買ってどうするの?」なんて問いかけはご法度です。まあ、そんな事を仰る方はまず買われる事もないのでいいのですが。ただリンゴの形にしてみたというだけのもの、そう、それだけのものです。ただの木で作ったリンゴです!
当然食べられません!ただのリンゴではありますが、素材となっているのはチューリップウッドやボコーテ、ゼブラウッド、アマリロ、リグナムバイタなど、もうその名前を聞いただけで鳥肌の立つような(あくまでも私の場合ですが)綺羅星の如きスター軍団!鮮烈な赤や黒、ピンク、緑、縞柄のそんな木がズラーッと並んだ姿を想像しただけでもう興奮が頂点!嗚呼、そうなんです、これって自分が並べて楽しみたいというそれだけの理由で作ったのです。
『いろいろな色柄のものがある1つの決まった形で揃う』、そういうシチュエーションが大好きなんでが、もうこれって本能なんだと思います。それは別に木で無くてもいいんです。例えば石(鉱物)とかスプーンとか皿とかクレヨンとか、とにかく種類が沢山あるということに異常に萌えてしまう性質なんです。バリエーション・フェチというか何というか・・・こんな嗜好の人間が世間にどれぐらいいるのだろうと思っていましたが、結構いらっしゃったようです。
そんな『森のりんご』ですが、種類が増えるにつれて樹種の名前をどうやって判別させようかいろいろ試して最終的にはお尻の部分に小さくレーザーで通し番号を彫字する事にしました。弊社の場合、3桁の番号で【森のかけら】と240種とプレミア36(Pから始まる3桁)は管理していますので(詳細は240種リストをご覧ください)、それで樹種の特定は可能です。背番号が入ったスター軍団、ますま眩しく輝きを放っています!
スター軍団、プレミアりんごのメンバーは以下の通り。()内は背番号。カイヅカイブキ(016)、神代ケヤキ(058)、ウェンジ(137)、コクタン(154)、ゼブラウッド(171)、レースウッド(236)、アマレロ(P020)、シャム柿(P013)、ソノケリン(P016)、チューリップウッド(P019)、ボコーテ(P032)、リグナムバイタ(P035)、シキミ(E017),キンモクセイ(E023) 価格はいずれも¥5,000(消費税別)
★今日のかけら番外篇・E23 【金木犀/キンモクセイ】 モクセイ科モクセイ属・広葉樹・愛媛産
先日ご紹介した『森のりんご』の中で、【森のかけら240】にも『プレミア36』にも含まれず、レア中のレアな存在なのが、この『キンモクセイのりんご』!キンモクセイは、漢字では金木犀と書く事からも分かるように、白色のギンモクセイに対して、橙色の花をつけるところからそれを金に見立ててその名前が付けられたモクセイ科モクセイ属の木。庭などにもよく植えられる灌木で、遠く離れていても濃厚で甘い香りを放ち、その開花期間は短いながらも強い香りで秋になると存在感を強くアピールしています。
キンモクセイ自体は珍しいものではないでしょうが、あくまでも観賞用の低木・灌木ですから、大きくなったとしてもせいぜい10m、立派に成長すれば18mになるものもあるとされていますが、一般的にはせいぜい3,4m程度で、それが用材として木材市場に出回る事はまずありません。花としては馴染みがあっても、材としてのキンモクセイはほとんど知られていないと思います。このキンモクセイは、家内の実家で植えたあったものですが、事情があって伐採したものをいただき、しばらくの間乾かしていました。
直径が200mm前後の木でしたが、通直ではないので短くカットして『森のりんご』にする事に。果樹林や庭木などの低木は、横に枝を広げているものが多く、曲がりくねっていて、どう使おうか悩むことも多かったのですが、今はひとつの出口として『森のりんご』を考えています。ただし『りんご』に加工するためには、荒木で最低でも55mm角が必要となるため、もう少し小さな木は『森のこだま』にするなど、手に入った材をなるべく無駄なく骨の髄までしゃぶり尽くすことこそが、木に対する礼儀だと思うのです。
私も今回初めてキンモクセイの材を加工しましたが、非常に目が詰まっていて緻密で滑らか。木そのものからあの甘い香りはしませんが、キンモクセイという言葉に惹かれる木フェチは必ずいるはず!ただし、1本のキンモクセイの木ですから、それほど多く作れるわけではありませんし、それが無くなってしまえば、次にいつご縁があるのか、はたまたもう無いのかもしれませんが・・・とりあえずあるだけ発売させていただきます、¥5,000/個(税別)。りんごフェチ、金木犀フェチ、木フェチの訪問をお待ちしています~!
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