森のかけら | 大五木材


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栂(ツガ)はとても奥深い木で、エピソードも多彩です。まずその名前の由来ですが、葉が並ぶ時に下側に長い葉、上側に短い葉が並ぶ様子が「継ぎあう」とか「番(つが)う」ところから、きているといわれています。これによく似ているのが樅(モミです。同じような生育環境を望み、よく一緒に混じって生えていることから【モミ・ツガ】としてまとめて市場に出される事もあるほどです。立木の時の見分け方のポイントは、葉の先が二股に鋭く尖っているのが【樅】で、葉の先端が丸みを帯びているのが【栂】

材木屋といっても実際に山に入って立木を見て、これが何の木かを言い当てれる方は多くありません。樹皮や葉に特徴のある桜や、建築材として利用される事の多い杉、桧、松などは誰にでも分かりますが、広葉樹は似たものも多く難しいです。材木屋は大体が板にした状態の特徴しかが頭に入っていないので、立木は案外分からない物です。私も立木はさっぱり分かりませんでした。愛媛大学農学部が毎年実施している『樹木博士養成講座』に参加して、大学の先生方にいろいろ教えていただきほんの少し分かるようになりました。

これが分かると実に楽しいものです!山を散策していて、これが何の木、あれが何の木と分かれば楽しいです。しかし真の樹木博士の道は厳しく遥かに遠いのであります!【栂】の話に戻ります。木偏に母と書く漢字の由来は、諸説あるのですが私が聞きおよんで気に入っているのは、①ちょうど母指(おやゆび)ぐらいの大きさの実がつくから ②樹皮から白っぽい樹液が出ることがあるが、その様子が母親のお乳に似ていることから 栂の葉は落ちると堆積しちょうどよい肥料となり母のごとく豊穣な大地を育むからの3点です

勿論異論反論もあるでしょうが、もともとアカデミックな話をするつもりはありませんし出来もしません。【栂】という材の特徴を考えた時、上記のどのエピソードも実にしっくりときます。この種のエピソードは、語り伝えられるうちに尾ヒレ背ヒレがつくものです。小さな話が大きく膨らんで、全然違う木の話も巻き込んで転化して伝えられたりすることも少なくありませんが、それはそれでいいのではないでしょうか。今のネット時代、調べようと思えばキーボードひとつで簡単に検索できます。しかし、だからこそ真実かどうかも分からないあやふやしたエピソードが人の記憶や心の中に生き残ってもいいと思うのです。木という媒体を通じて、人は自分の人生や思いを投影し、納得してり心の支えとするのではないでしょうか。私はアカデミックな話はまるっきり弱いですが、こういうエピソードは大好きです。

偏屈者の私としては、全てが理路整然と解明されてしまっては面白くないのです。「え~ホント?」と思わせる遊び心もあっていいと思うのです。自然は偉大で何でも分かると思ったら大間違いです。謎あるからこそロマンがある!【栂】という木は日本固有の木で、学名は『ツガシーボルディー』といいます。これは幕末の頃に活躍したドイツ人の医師、博物学者シーボルトを讃えてのことだといわれています。学名に個人の名前が使われているのは非常に珍しい事。シーボルトは、長崎に鳴滝塾をつくった事や、日本における妻お滝さんにちなんでアジサイの学名を「ハイドランゲア・オタクサ」と名づけたことでも有名です。

よく【米栂(ベイツガ】と混同されますが、こちらは本来は【ウエスタン・ヘムロック】という木で、ツガの名前がついているのでややこしいのですが、材質としてはかなりの差があります。輸入された時に、その特徴が【栂】によく似ていることから、アメリカのツガという意味で【米栂】と名付けられたというのですが、正直比べるのは酷な気もします。確かに【栂】も【米栂】もどちらもマツ科ツガ属で色目は白っぽくて似ていますが時間が経つとその差は顕著になります【栂】は時とともに渋い艶がでて鈍い光沢を放ちます

植物性油を塗っておくと、まさに黄金色の趣きになります。対して【米栂】は、挽きたてこそ淡いクリーム色で美白ですが、経年変化でややくすんで黒ずみます。また強度の、粘りがあって硬く締まった【栂】に比べて、【米栂】は軽軟でただしこれはそれぞれの木の特徴ですから、だから【米栂】が劣っているとかという事ではありません。木にはそれぞれの特徴があるという話。最近【土佐栂】のフローリングに、【アオ染み】や【小傷】のある物に植物性油塗料で黒っぽい塗装を施し店舗などに使われるケースが増えています。

黒く塗ると一層杢目の妙味が際立ち、通常B品扱いされる材が低価格でより魅力的に使えます。黒は黒でもどの配合の黒がいいのか、試行錯誤しました【土佐栂】は、冬目と夏目の年輪差が明瞭で、黒く塗ると反発して白くなります。そのため白と黒とのコントラストがくっきりと浮き上がってくるような表情が生まれます。店舗以外にもシックな雰囲気を求める空間で使われると面白いです。【アオ染み】も全然気になりません。これだけ立派な木を、ただアオ染みがあるから使えないなんて言ったら罰があたります。骨までしゃぶるつもりで大切に使い、木の醍醐味を堪能しましょう!

 




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