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秋になって空気が乾燥してきたせいでしょうか、あちこちで火災のニュースが報じられています。火事は木にとって最大の大敵です。とても他人事とは思えません。毎年海外でも、よくカリフォルニアとかオーストラリアで四国の何倍分とかいう大陸的なスケールの大規模な山火事が起こっていますが、その使命を全う出来ずに消失してしまう事は無念でしょう。
先日も岩手県で旅館が全焼したという記事を見かけましたが、この旅館は『座敷わらし』が出るという事で有名な旅館でした。その真偽は定かではありませんが、よくテレビにも登場していたのでその存在は知っていました。その旅館に行った事はありませんが、こんな時代にまで「座敷わらし」という言葉を生きながらえさせてくれた場所がなくなるという事実に感傷的な気持ちになります。死者が出なかったのは不幸中の幸いでした。
特別お化けマニアというわけではなく、普通の子供以上に子供の頃から暗いところ嫌いのお化け嫌いでした。それが、子供の頃に読んだある漫画を読んでから、お化けに対する感情が「恐れ」だけではなくなりました。それが’81年に雑誌に掲載された手塚治虫さんの『いないいないばあ』です。今は手元にないので曖昧な記憶ですが、物語はある少年が古い温泉旅館で悪戯好きの可愛らしい座敷わらしに遭遇します。そして大人になった彼は新婚旅行で再びこの旅館に泊まります。そこでこの旅館が火事になり、座敷わらしに火事を教えられるのですが・・・。初めて読んだ時思わず涙がこぼれました。座敷わらしが可愛いだけに、その悲しい結末が余計に切なくなって涙を誘うのです。この頃の手塚作品の短編は素晴らしい物が多いです。かなり涙を搾り取られました。お化けアレルギーも少しは改善されました。
しかし同じ漫画といえども、つのだじろうさんの『恐怖新聞』などはとてもページをめくる事が出来ませんでした・・・あの画のタッチが(特に目つきとか、指先の曲がり具合!)。今でもお化けは苦手ですが、好奇心ばかりが大きくなりましたので、リアルではないお化けには興味が芽生えました。数年前に木青連の中四国地区の理事会で鳥取に行った時も、大人だけで念願の『水木しげるロード』や『水木しげる記念館』にしっかり行きました。しかも当日は、ソフトバレーで『肉離れ』していたにも関わらず・・・馬鹿です!
今年の春先に家族で岡山の倉敷に行ったのですが、そこに『倉敷ゲゲゲの妖怪館』というショップがありました。『ゲゲゲの鬼太郎』にちなんだ商品をたくさん取り揃えています。いろいろなお化けグッズがあり、子供たち以上に私も童心に返って楽しみました!私が子供の頃は、『ゲゲゲの鬼太郎』も怖い方の分類に入る漫画だった(私にとっては)のですが、最近は正義のヒーローの要素が強くなっているようです。こちらの方は、楽しく面白いショップですが、鳥取の本家ではかなりシュールに展示してありました。
そもそもお化けは、心の恐怖感や邪心、恐れ、罪悪感、後悔などが形になって現れるのだと思いますが、悪事への戒めなどの意味合いもあるのだと思います。ある程度、怖いもの、恐ろしいものという側面が必要だとは思うのですが、何でもかんでも可愛くカリカチュアしてしまうのはどうかと思うのですが・・・。
水木しげるさんの作品だけではなく、古い書物にも『樹木子(じゅぼっこ)』という樹木の妖怪が登場します。戦争などで多くの死者が出た跡地などに生え、見かけは普通の木と変わりないのですが、死者の血をたくさん吸って妖怪化しているので、血に飢えていてその木の近くを通りかかった人を無差別に捕まえて、人間の血を吸いつくしてしまうという恐ろしいものです!新鮮な血を吸った『樹木子』はいつまでも青々と若々しい・・・という結構おどろおどろしい物です。今も『樹木子』の妖怪木はあるのでしょうか。あるとしたら悲しい事です。木が自分で望んで妖怪になったわけではないでしょう。人間の作り出した自分勝手な悲劇が原因です。現代の『樹木子』は別の形で人間に襲い掛かってきているのかもしれません。昨今のゲリラ豪雨などで地盤が緩み、山そのものが崩落する災害も、木々の手入れがなされず未成長で根が浅いという現実が起因しています。それも姿こそ違えど、放置された木々の怒りではないでしょうか。
しかし妖怪と人間が共生することも決して不可能ではないと思います。冒頭の岩手の旅館の火災では死者は出なかったということです。『いないいないばあ』のように座敷わらしが火事を教えてくれたのかもしれません。妖怪は決して恐ろしい人間の敵ではありません。自然や動物からの人間への警鐘でもあります。昨今の経済状態は、妖怪も人間も生きにくい時代ではありますが、妖怪を見ることの出来る(心に住まわせる事の出来る)心のゆとりや遊び後ごろも持っておきたいものです。
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