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すっかり秋めいてきました。味覚の秋、食欲の秋。いろいろな物が実りを迎えています。中でもこの時期の旬といえば、やはり『秋刀魚』でしょう。たっぷり脂の乗った秋刀魚の味は何とも言えません。炎の上に落ちる脂が燃えるジュワッという音は食欲をそそらずにはいられません。先日、東京だったと思うのですが、ビルから大きな白煙が上がっているのを見た近所の方が消防署に通報して、消防車が駆けつけると秋刀魚を焼いていただけだったという笑えないニュースがありました。ガスコンロで秋刀魚を焼く場合は2匹までにして下さい、とのコメントが何とも可笑しいような、物悲しいような・・・。
先日、弊社の裏の敷地で近所の子供たちと一緒に秋刀魚を焼きました。ドラム缶を半分に切断した物で豪快に8匹焼きました。白煙も匂いも関係ありません。ジュワ、ジュワと脂が弾けます!魚の相場という物を知りませんので、高いやら安いやら分かりませんが、1匹80数円だったという事ですから、多分相当安いのだと思います。魚の1匹の命の値段80数円が高いか安いか意見の分かれるところでしょうが、杉の30、40年生の原木1本の山元での値段が数百円です。やっぱり原木の評価は異常に低過ぎます。
子供の頃、私は食卓に魚が出されただけでも顔を背けるほどの大の魚嫌いで、ほとんど魚を口にしたこともありませんでした。それが社会人になった頃から急に味覚が変わってきて、何故だか突然魚が食べられるようになりました。それは不思議な感覚でした。20数年の間、ほとんど口にした事のなかった物が新鮮でした。あれほど苦手だった秋刀魚もバクバク食べられるようになりました。そのおいしい事、おいしい事!内臓の苦味もいまや大好物、白いご飯がいくらでも食べられます。脂の乗った秋刀魚、たっぷり堪能致しました!
学生の頃、私にとって秋刀魚は食べる物ではなく、読むものでした。佐藤春夫さんの詩『秋刀魚の歌』によって、私の秋刀魚観は形成されました。食べた事もないにも関わらずです・・・。いつか自分が秋刀魚を食する風景は、畳の上のちゃぶ台でひとり、白いお皿の上に秋刀魚が1匹、その上に蜜柑の酢をしたたらせて、涙を流しながら食べる姿こそが『大人の男の秋刀魚の食べ方』だと信じて疑わず、いつかそれを実現させたいと願っていたものです。よく考えれば、物凄く切ない風景ですが、秋刀魚の味を知らなかった私は妙にその風景に強い憧れを持っていました。小津安二郎監督の映画『秋刀魚の味』も何度も何度も観直して、少しずつですが苦味を含んだ大人の味が分かってきました。
『秋刀魚の歌』は、「さんま、さんま、さんま苦いか塩っぱいか」のフレーズが有名ですが、実はこのフレーズは詩の最後の1節です。しかも、『人に捨てられんとする人妻と』とか『妻にそむかれたる男』などのフレーズも登場する悲しく切ない詩です。当時はその意味もよく分からず、そのフレーズのリズムの良さが気に入ってましたが、のちにこのシチュエーションを知って驚きました。詩人で友人でもあった谷崎潤一郎の妻に恋した佐藤春夫が、谷崎の留守中に家に上がり、妻とその妹、娘と卓を囲みながら秋刀魚の食べ、その苦味に中に横恋慕の思いを綴った詩でありますから。そんな哀感のこもった『秋刀魚の詩』の一節をご紹介します。
さんま、さんま、さんま苦いか塩つぱいか
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんま食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ、げにそは問はまほしくをかし。
秋の刀の魚と書いてさんまですが、秋といえば木偏に秋と書く木もあります。木偏に春で『椿(つばき)』、木偏に夏で『榎(えのき)』、木偏に冬で『柊(ひいらぎ)』は有名ですが、木偏に秋はあまり知られていません。木そのものがあまりメジャーでないので仕方ないのかもしれませんが。木の話や木のクイズなどをやらせていただいても、これが読める方はほとんどいません。『楸』で、「アカメガシワ」または「ヒサギ」や「キササゲ」と読みます。ヒサギの古名といわれる事もあるし、その木そのものとしても使われているようです。私は「アカメガシワ」と教わったので、そのように認識していますが、こういう風に曖昧なところもいまひとつメジャーになりきれない所以かもしれませんね。木もそれほど大きくなる木ではないので、建築用材などに使われる事はほとんどありません。【森のかけら】にも残念ながら入っていません。ということで、「秋の漢字のついた魚」と「木の話」でした。
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