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今晩、テレビでドラマ『不毛地帯』を観ました。今月末に映画『沈まぬ太陽』の公開も控えており、山崎豊子さん原作が今ブームなのでしょうか?詳しい関連は知らないのですが、昨年もテレビで『華麗なる一族』がドラマ化されて放送されて話題になっていましたが、こういう時代にあって山崎豊子さんの骨太の物語が見直されているのでしょうか。そういえば、少し前にも『黒部の太陽』がドラマ化されていましたが、こう過去の名作の焼き直しが続くと、テレビ業界の創作現意欲の減退、アイディアの枯渇などと詮索してしまいます。見方を変えれば、時代を超えてなお色褪せないほど原作に力があるという事でしょうが・・・。
いつの頃だったでしょうか、経済小説というようなジャンルの本を読み漁った時期がありました。それまでほとんど興味もなかったのですが、1冊読んでみるとその面白さにのめり込んでしまいました。ドロドロした業界の人間関係や閨閥、生き馬の目を抜くような駆け引き、特異な因習など、業界は違えど『商売』の世界に身を投じ、世の中の仕組みが少しずつ分かってきたところでしたので、余計に物語が現実味を帯びて感じられました。最初に読んだのは城山三郎さんの『価格破壊』でした。ダイエーの創業者・中村功氏をモデルにし、「価格破壊」の語源となった有名な小説です。これは抜群に面白く、丁度ダイエーが拡大路線を突き進み、隆盛を極めていた時期でしたので余計に引き込まれました。
山崎豊子さんの小説は何度か挑戦しましたが、残念ながら最後まで読みきったものはありません。むしろ映画での印象が強いです。言葉での丁々発止の商戦を生きた人間が演じる映画やドラマは、別のジャンル物として面白いです。更に山崎原作が、私の好きな社会派映画の職人・山本薩夫監督がメガホンを取られた物が多く、正面からドスンと描いた骨太の作品になっていました。『白い巨塔』しかり、『華麗なる一族』、『不毛地帯』、いずれも2時間を越える熱のこもった長編で素晴らしい名作です。他にも『金環食』や『ああ野麦峠』、『皇帝のいない八月』など傑作揃いで、大好きな監督の一人です。
いろいろ制約もあるでしょうが、戦後の混乱期の物語を世界ロケを敢行し丁寧に描かれていました。そもそも登場人物が膨大な話ですから、きらびやかなカメオ出演のような配役になってしまったのは仕方ないのかもしれませんが、カメラの精度が良く画質の抜けが良すぎて、細部が写りすぎて画に奥行きがないデジタル画像にはどうにも馴染めません。役者の背景がうす暗いような画が好きなもので・・・。また、『不毛地帯』といえばどうしても、映画で仲代達矢さんが目をぐりぐりに見開いた鬼気迫る形相が忘れられません。深刻なテーマを更に重くしていた印象があり、唐沢寿明さんの(いかに顔を黒く塗ったりボロ着を起用とも)爽やかさとのギャップがなかなか埋められませんでした。そんな中で存在感があったのは、原田芳雄さん。さすがに別格ですね!映画では仲代達矢さんの脇を田宮二郎・小沢栄太郎・大滝秀治・丹波哲郎・小松方正などの重厚な名優が固めている訳ですから、カメラの抜け同様にドラマが平坦に薄っぺらく見えてしまうのは仕方ないことです。唐沢寿明さんは熱演でした!
ドラマの前半は、捕虜が強制労働を強いられたロシアが舞台でしたが、木1本、草1本生えない程極寒の過酷で厳しい環境から『不毛地帯』と呼ばれるという重いナレーションでタイトルがかぶります。それは戦えど後には何も成果も残さない虚しい経済戦争にも例えられているのでしょう。そんな場所で強制労働として丸太を積み上げさせられていましたが、ロケはニュージーランドで行われたようです。瞬間でしたが、表皮から見てニュージーランド松(NZ松)だったように見えましたが・・・違ったかな?
不毛とも思える厳寒の地にも木はたくましく育っています。世界の森林面積の1/3を占めるといわれているロシアの大針葉樹林タイガは、冬には零下40℃にまで下がる厳酷の地ですが、そんな場所でさえも木は生きるのです。そこに芽を出したが最後、一生自分の力では移動する事のできない木だからこそ、伐採後の運命(家の材料や家具)にもしっかり責任を持たねばならないと思うのです。それにしても、木は偉い!
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