森のかけら | 大五木材


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CA343500木と医療というと、煎じた皮から漢方薬になる『黄蘗(キハダ』とか、そのものズバリ『目薬の木』が思い浮かぶかもしれませんが、実は数年前からもっと直接的な立場で、『木製医療器具の開発』という事に関わらせていただいております。もっとも、病院の先生が考案された器具を木で作らせてもらうお手伝いという立場です。一般的に誰でも使えるような健康器具とは性質が違うので、オープンに販売しているわけではありません。ご興味のある医療関係の方は、済世会松山病院へお問い合わせ下さい。(松山済生会病院リハビリテーションセンター:TEL089-951-6111) その松山済生会病院のリハビリテーションセンター長首藤貴先生が、5年ほど前から独自に取り組んでこられたライフワークとも呼ぶべき執念の運動器がこの『2METSボード』です!それが今月号の日経BP社の『日経メディカル』という医療雑誌に掲載されました。弊社の名前は出ていませんが、関わらせていただいたものが世に出るというのは嬉しいものです。

CA343501首藤先生はいつもニコニコされた温厚な方ですが、この『2METSボード』には、鬼のような執念で挑まれ、度重なる改良、臨床に挑まれました。地元の多くの病院の先生方も集まられて、開発のための会議を何度も重ね、熱い議論を交わされました。私も同席させていただきましたが、器具の使用時における血圧や心拍数など、医療の専門用語が飛び交い(当たり前の話ですが、私だけ素人ですから)、正直チンプンカンプン?あまりに難しくてさっぱり分かりません。

議論がひと通り終わったところで、ではこれを作ってもらいましょうとなる訳ですが、家具にしても住宅に使われる材という物は、まず最初に図面ありきというのが常識なので、具体的に数字で何ミリ大きく小さくというのは分かるのですが、くるぶしに負担のかからない角度とか、荷重がかかった時に滑りを滑らかにとか、抽象的な注文には当初なかなか馴染めませんでした。なにしろ人間が負荷をかけて訓練する医療器具を作る、などという体験は初めての事で何もかもが戸惑う事ばかりでした。

 

080215_1445~0001試作品を作っては臨床で試して、作り直しの連続です。出来上がった試作品を病院に持って行くのですが、病院に不似合いな作業服で(明らかに現場で事故して診察に来た人!)、入っていくのも最初は物凄い違和感がありました。それから、いったい何十回病院に通ったことでしょうか。患者でも、お見舞いでもなく病院に行くというのは不思議な感覚でした。最近はすっかり慣れましたが!材料は、器具の滑りやすさと軽量化から【ソフトメープル】と、触感とデザイン性から【ブラックウォールナット】を選ばせていただきました。加工は、地元の『スタジオモック』の谷公彦さんです。丁寧で洗練されたデザイン性のある家具を作られます。こういう細やかで長期間にわたる根気のいり作業には最適の職人さんです!

 

20090901 済生会4決定図面があるわけではなく、首藤先生の原案を作って、実際に使ってみて不具合を調整しながら改良していくわけですから、これで完成ということはありません。何度も何度も作り、途中で先生にひらめきがあると根本的に改良という事もありました。家具などと違い、先の見えない仕事に迷いや不安もありました。しかしそれも首藤先生が自ら作られた幾つもの歴代の試作品を見れば、勇気づけられました。ご自分で材料を買ってこられて、鋸や金鎚で作られたパイロット版は玄人はだしの出来栄えで、その熱意にはただただ頭が下がります。どこからこの情熱が湧き出てくるのか・・・。

 

それは、この器具で『廃症候群の予防や治療に役立たせたい』とう先生の思いからきています。商品名の『2METS』というのは、歩行するのにかかる負荷が3METSという事ですから、座るのと立つのとの中間程度と同等の運動量を示す単位しています。その程度の軽い運動量を、自分のペースで安全に出来るという事がこの器具のミソです。『廃用症候群』というのは、入院前に歩く事が出来た患者でも、高齢のために治療のため2週間ほど寝ているだけで、立てなくなったり歩けなくなったりする症状の事です。首藤先生は、その廃用症候群から患者を救いたいという一心でこの器具の開発に取り組まれてきました。

 

20090901 済世会3先生の理想は果てしなく高く、まだ先生の望む完璧な商品にはなっていませんが、それでも今までにパーキンソン病の神経や人工透析などの多くの患者さんがこれを使い、廃用症候群の予防や治療に役立ってきました。寝たきりで歩く事もできなかった患者さんが、この器具で運動して自分の足で歩かれているビデオを見せていただいた時は熱いものが込みあがってきました。まさかこうして、医療の分野に関われるような事があるとは夢にも思いませんでした。まだまだゴールは遠そうですが、この仕事のお陰で異業種の方々と一緒に仕事をするという貴重な体験が出来、後の【森のかけら】での異業種とのコラボに相当役立ちました。

 

まだまだ微調整の必要な段階で、手造りのため大量生産も出来ませんが、これで一人でも多くの廃用症候群の方を救えたら素晴らしい事だと思います。木にとっても材木屋にとっても、価値のある仕事をさせていただきました。首藤先生には、意義のある仕事に関わらせていただいたことに心から感謝しています。木の可能性はまたひとつ広がりました、これぞ21世紀に生きる材木屋の本懐!首藤先生、ありがとうございました。そして、これからもどうぞよろしくお願い致します!




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