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今のようにネットなどの無い時代、映画館の無い田舎に生まれた私たち映画ファン少年にとっても唯一無二の情報源は、ロードショーやスクリーンといった映画雑誌でした。キネマ旬報などお堅い雑誌を読むずっと昔の話。まだ両誌ともそれほどアイドル路線ではなかった時代で、結構まともに映画を扱っていて、昔の映画なんかもしっかり紹介してくれていました。年に1回発行される「男優・女優・監督名鑑』は宝物で、文字通りボロボロに擦り切れるまで読み込んだものです。
親も呆れるほどに映画に傾倒していたのですが、悲しいかな地元に映画館は無くてもっぱらテレビで放送される吹替え映画が当時の私にとっての映画でした。でもその映画に対する凄まじい渇望が、活字の中の情報を元に脳内スクリーンに再現して、それが今こうして仕事にささやかながら役に立っている(?)と思うと、人生万事塞翁が馬。子供のころにその名鑑にかかれた作品をどれだけ観れるのかを自らのノルマとしていたのですが、その中で燦然と輝きを放っていたのが『ベン・ハー』!
アカデミー作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞をはじめとする主要11部門を受賞して、その後『タイタニック』と『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』に並ばれるまで、アカデミーの歴史に輝く金字塔だったこと、現在の価値で54億円の製作費と撮影に6年の歳月をかけ、全世界で大ヒットを記録し、破産寸前であった映画製作会社MGMは、この1作で経営を立て直したともいわれるほど記録づくめの作品でした。残念ながらテレビで出会ったもののその迫力は圧倒的!
まだCGなど無い時代ですから、カメラに映りこむ人はもちろんすべて本物の人間で、その大物量方針は、海戦で使われるガレー船を忠実なサイズで再現したために、1隻動かすのに300人もの人手がかかったというほどの壮大なスケール感。今となっては決して作ることのできないであろう人海戦術で、スペクタクル映画の代名詞となっています。再現された、15000人が収容可能な円形競技場での対決シーンは圧巻でしたが、今回それらの伝説の名場面がどのように再現されたのか興味津々。でも本当はこれこそ史劇が得意のリドリー・スコットに撮ってもらいたかった題材でした。
エイリアンが地球にやって来る映画にしても、極限状態の宇宙船が襲われる映画にしても、もうありとあらゆるアプローチの作品が作られているのに、今更どんな作品を観たってコピーみたいなものなのに面白いか?と思われる人もいるかもしれないですが、ルーティンの中でいかにそこを少しだけずらして物語を構築させるか、歳を重ねるほどに水戸黄門のマンネリ感が心地よくなるのに似て、頭の設定から奇想天外、前代未聞の型破りなのものよりは、ほどほどに手垢のついた設定の中でルーティンを少しずつ外していく手法にほくそ笑むのです。木の仕事にしたって同じようなものかもしれません。
木の玩具や木製クラフトにしたって、ありとあらゆるものが作られてきて、今更誰もが見たこともない斬新で衝撃的なモノを作るなんて、そう簡単なことではないし、まただからといって売れるとも限らないわけで、それだったら今あるものに少しだけ改良を加えたモノを作っちゃおうって話になりがち。弊社としては決して目新しいものではないですが、古来から大切にされてきた素材感を強調し、『誕生木』というエッセンスを振りかけて、各月の出口商品を作っていますがなかなかの難産。
最近素直に映画も観られなくなってきていて、何千人もの人物が登場するような大作とかになると、嗚呼これだけのエキストラを集めるのにどれぐらい前から人集めしたんだろうか、弁当代とかいくらかかるんだろう、メガネとか腕時計とか時代考証の説明とかどこまで徹底させるの大変だろうなあとか、ロケ地にはバスとかで送迎するんだろうななどとつまらぬゲスの勘繰りをしてしまうのですが、そんな邪心するいだかせぬようなスピーディーでパワフルな映画を期待しています。人が沢山必要という意味では歴史もの。そんな歴史大作としてキワモノ的な呼び声が高いのが、日米合作で、中国の世界遺産「万里の長城」建設の真実を描く『The Great Wall』。
あの万里の長城が実は怪物除けの結界だったという、私を含むその手の人間にはたまらない設定ですが、マット・デイモンを主演に据えるという時代考証全面無視の潔さぶりは中国ならでは。予告編では、兵士たちが空から降り注いでくるような場面もありましたが、かなり型破りな歴史絵巻になっていそうな予感。怖いもの見たさで見ておこうと思います。もうひとつ歴史大作としては非常に楽しみにしていて映画館で観たいと思わせるのは、かのウィリアム・ワイラー監督が1969年に作った、キリストの生誕、受難、復活を描いた『ベン・ハー』の40数年ぶりのリメイク作、その名も『ベン・ハー』!詳しくは明日に続く・・・
映画の中に出てくる木の話、『THE STORY OF THE TREE IN THE MOVIE』。無ければ自分で書くしかないのか・・・。『今日のかけら』に続くライフワークが見えてきましたが、その多くが立ち木となるため、これはかなり難しい!やはり材木屋としては、材となった木でいくしかないのか。これって本来は、木の話をなるべく身近なところや暮らしの中で楽しんでもらうために、映画という媒体を使って木の話をご紹介しようと考えて書き始めたものだったのですが、そのネタとなるべき手引書が無いので自分で書くというのは、本末転倒な話なのかもしれませんが、自分にしか出来ない仕事という意味では(仕事か趣味かは相当に曖昧ですが)これも天命なのかも・・・。
さて、リドリー・スコット先生に関する待望の作品。実に34年ぶりの続篇となる『ブレードランナー2049』。リドリーは製作総指揮に回って、監督はカナダ人のドゥニ・ヴィルヌーヴ。日本公開は11月。前作は2019年が舞台でしたが、今回はそれから30年後の2049年という設定。御年74歳のハリソン・フォードも出演するということで様々な意味で話題となっているものの、その後のSF映画に絶大なる影響を及ぼした前作のインパクトにどこまで迫れるのかという意味でも興味が尽きません。願わくば続篇に成功作なしの例外として、『ゴッドファーザーPARTⅡ』と共にその名を歴史に刻んでもらいたいところですが、リドリー先生の精力的なご活躍にはただただ頭が下がるばかりなのです。
さて、その『ブレードランナー2049』の監督を務めるドゥニ・ヴィルヌーヴは、先に手掛けたSF映画『メッセージ(原題/Arrival)』の高評価から大抜擢されたそうですが、そちらは5月に日本公開。謎の宇宙船が世界各地に飛来し、宇宙生命体とのコミュニケーションを測ろうとする内容ですが、その予告編を観て、『ブレードランナー2049』に対しても大きな期待が湧きおこりました。こちらもあまり情報を入れたくないので、詳しい内容はよく分からないのですが、切り取られた1枚1枚のショットから気概が伝わってきます。オモシロイに違いないと!ただ惜しむらくはこの安直な思わせぶりのタイトル・・・。その他多くの同類SF映画の中に埋没してしまっていて実にモッタイナイ。
そういう意味では、正直『キングコング』映画に関して言えば、もうかなりお腹いっぱいではあるものの、『キングコング』と聞いてしまうと食指が動いてしまうのは、『猿の惑星』同様に子どもの頃に刷り込まれた衝撃的の印象の賜物。もともと『巨きなるモノ』に対してはジャンルを超えた強い憧憬があるので、作品の出来不出来は脇に置いといて、巨きなる猿を見てみたいというのが本心。巨きなるモノへに対する信仰のような憧れは、木材の仕入れについても露骨に現れています。
かなりこじつけ的に言うならば、サルの出てくる映画には、その棲み処として必ずジャングや森が登場しますので、材木屋としての血が騒ぐのかもしれません。どこにもありそうなのにどこにもないような不思議な独特の空間創造演出には定評のあるリドリー・スコット先生待望の「エイリアン」の正統続編、『エイリアン:コヴェナント』の予告篇にも木が出ていましたが、見たことのあるような、無いような巨木。宇宙船「コヴェナント号」は人類の植民地を探して、“未開の楽園”と思われる惑星に到着したが、そこには・・・という異星という設定なので、現実的ではない木なのですが、その「現実にありそうなリアル感」が作品に命を吹き込んでいくのです。
内容としては、リドリー先生の出世作『エイリアン』第1作に直接つながる前日譚ということですが、あまり情報を入れずに日本公開の9月を待ちたいと思います。ちなみに副題のコヴェナント(Covenant)というのは、誓約者、契約者、聖約、盟約などと訳されるらしく、原題のままで(宇宙船のなめ)意味深ですが、あまり一般的でなく耳慣れない英語をそのまま安易に邦題につける流れはどうにかならないものか。まあ、1作のノストロモ号なんて言いにくい言葉ですら今となってはカルトのアイコンとして市民権を得ているわけですから、コヴェナントもいずれマニアの間で語り継がれるアイコンとなるのかも(作品の出来次第ではあるものの)。
話は突然変わりますが、木(樹木)が大きな意味を持ったイコンとして登場する映画は数多くありますが、ザックリと木とか森、樹木といったくくりで語られることがほとんどで、樹種名までキッチリ表現している映画ってあまり観たことがありません。職業柄、観ていて何の木なのか気になるのですが、樹種名や木について詳しく記してある解説本など見たことがありません。木に対して造詣の深いライターがいない(少ない)のだと思いますが、映画の中の木についてまとめた本あれば買うんだけど。
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