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5月28日のNHKの『クローズアップ現代』は、『新たなエネルギー、木くずでCO2を減らせ!』というテーマでした。住宅不況から材価が低迷し、林業従事者の高齢化などで手入れが行き届かなくなり山に放置された木を、行政と民間が手を組んでバイオ燃料にして利用しようというものでした。高知県も事例も紹介され、町が間伐した材で木質バイオマス発電をして、削減されたCO2を東京の企業に売る取組がされていました。このバイオ燃料に対する取り組み自体は、随分前から行われていて、木材関係の人間から見れば特別目新しいものではありませんでしたが、私はこの手の『間伐材=バイオマスエネルギー』的な報道を見ていると、いつも何かしっくりこないような妙な違和感を感じずにはいられません。
何がどうと論理的に説明できないのですが、あえていえばこの問題に対する切り口があまりに綺麗過ぎるということでしょうか。本当にそうなのか、それでいいのか?という感覚です。山の木は、そのままの姿で利用することは出来ないので、製材するとか削るとかしなければなりません。その最大のマーケットは建築と思われるでしょうが、実際には『製紙・パルプ』に利用される量の方が圧倒的に多いのです。製紙の原料となる木材は、細かくチップに粉砕され加工されます。今は非木質系の材料を使う取り組みもされているようですが、やはり現状では木材が主な原料です。巨大な製紙工場にはチップの小山が溢れ、それは異様な光景です。その感覚と似ています。
チップにされたり燃料になり燃やされてしまうと、木ではない別の「マテリアル」のように見えてしまうという視覚的、感情的な思いですが、その工程を見ると良い悪いという問題ではなく、何か消失感のようなものを感じてしまいます。そういう私の所でも、加工後の木屑やプレーナー屑は焼却しています。【森のかけら】などに使えるものは当然使っていますが、それでも焼却するものが圧倒的に多いです。その時にも、「ああ、勿体ない・・・」という気持ちで、何かこれを利用できないかと考えています。国の林業、燃料問題という大きな視座で見るとき、チップもバイオ燃料も有効なものかもしれません。私などには到底想像も出来ませんが、巨大な量が動く世界で、一時の感傷に惑わされる時間はないのでしょう。丸太1本をチマチマと気長に加工する作業と同じ土俵で比較してはいけません。これは国の施策ですから・・・。
今後もバイオ燃料の取り組みは一層拍車がかかるものと思われます。今の経済活動や生活水準を維持すべく石油燃料の代用として山の木が伐られ燃やされていく。そのあと地には植林がなされ、リサイクル可能な燃料として今後も半永久的な供給が望める・・・あまりに綺麗過ぎないでしょうか?あまりにうまい話ではないでしょうか?これが本当に継続していけるのでしょうか?お上のほうでは、きちんとした理論やデータもあり明確に解析されているのでしょう。森は地球が育んだ大切でありがたい資源であることに間違いはありません。私たちもあるゆる立場でその恩恵を受けています。放置された森をほったらかしにしておいてはいけないのも当然の話です。前述した材価の低迷や林業従事者の高齢化など、問題の解決は一筋縄ではいきません。そんな中、今後も安定して大量の材の利用が望めるということでのバイオ燃料だと思います。
いろいろな難しい問題もまとめて複合的に解決していく魔法のような発想なのかもしれません。それでは、他にどういう方法があるかと訪ねられても答えもありません。けれど、ちっぽけな材木屋の脳みその中では、ある日突然山の木が伐りだされ、ほとんど誰の目にも触れることなく、ただ燃料として燃やされていく木々の姿にわが子たちが生きる未来がシンクロしません。
今日の愛媛新聞に、八幡浜市の食品加工や農家の後継者で結成された「たしかな目ネットワーク」の取り組みが紹介されていました。その一環で、杉の端材を使った積み木【木のお風呂】で遊ぶ子供達の写真が大きく写っていました。愛媛木青協のメンバー、井上剛さん(㈲マルヨシ)の仕業です!よく紹介させていただいている【久万郷】のような、地域の有志の活発な動きが起きています。全国一律で何かするのはもういいのではないでしょうか。地域地域の特徴を活かして暑い思いでつながっていけばいいと思います。【木のお風呂】は5000個だそうです。重ねてしまえばわずかな量かもしれませんが、これを作るのにどれほどの労力を費やしたことか、頭が下がります。木の形が残ればいいというものでもないでしょうが、子供達は間違いなく【木】を認識して遊んでいます。
山から切り出された木が、姿を変えながらも人の目に触れ、感謝や畏敬の念を持つように使わなければ、何十年も生きた木とそれに関わった人達に申し訳ないとう気分になってしまうのです、伐採・製材という危険で大変な作業をした物を分けていただいているちっちゃな材木屋としては。
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