森のかけら | 大五木材


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20150715 1自分が大学生の頃と比べると、バブル真っ盛りだった経済環境は別としても、私が出会ってきた今どきの学生は真面目だし、社会との関わり方も圧倒的に豊富。そういう事を書くと、今では信じられないと言われそうですが、学生時代の私はもの凄く引っ込み思案で、みんなの前で自ら手を挙げて発言する人など羨望の眼差しで見ていたほど。何かをして成功する喜びよりも、失敗しない安心感の方を優先するような性格だったので(今はその反動)、『おとな』に対して何の気負いも無く自然体で冷静に相対する学生たちを見ていると、本当にどっちが大人か分からなくなります。

 

20150715 2話は突然変わりますが、今その時の事を思い起こしてこの文章を書いていると不意に、先日中学2年の息子と観た映画『バケモノの子』の事が頭に浮かびました。『サマーウォーズ』や『おおかみこどもの雨と雪』などで知られる細田守監督のアニメで、人間が住む渋谷とバケモノが住む渋天街という2つの世界が交錯するなか、幼くして父と分かれ母を亡くした少年とバケモノの奇妙な親子の絆を描いた物語。実は観たかった別の映画が満席で入れず、息子の希望で急遽変更したのですが、子供向けアニメと高をくくっていました。

 

20150715 3そんな思いがいかにあさはかであったか、冒頭わずかで猛省させられることになります。何の先入観も無く作品世界に没頭できたことは幸運だったかもしれません。晩年になるにつれドンドン観念的になっていった宮崎アニメには私はちょっとついていけなくっていましたが(その作画スタッフたちもかなり参加したというだけあって画のタッチは似ていますが)、こちらは非常に分かりやすく主題も明快。でありながらも大人の鑑賞にも充分耐えうるだけの(父親は男泣き必至の)抑制が効いて丁寧に作られた素晴らしい作品でした

 

20150715 4絶望と怒りの中でバケモノの世界へ迷い込んでしまう少年。結界を越えたそちらの世界では、少年の自我が目覚め『おとな』との本格的な対立が始まります。おとなになるための通過儀礼の中で少年は、幼い頃に両親が離婚したために体験する事になかった父親的なる存在に戸惑い葛藤します。それは天涯孤独のバケモノにとっても同じことで、不意に出来た弟子という名の『息子』とどう接すればいいのか分からず罵るばかり。不器用で、素直になれず、母親のように優しい言葉もかけれず、喧嘩し狼狽するバケモノの姿に、多くの父親が共感を覚えるに違いありません。

 

20150715 5しかしそれは監督の体験談ではなく、自分の父親は若くして亡くなったので、映画の中で描かれているのはもし父親がいたら成長した自分とこうやって葛藤しただろう(したかった)という細田監督の切なる願望の姿なのだそうです。隣の席でポップコーンを頬張る息子ともそのうち、こうして激しく口論する時が来るのかと思うと切ないような頼もしいような複雑な気分。私にとって父は学生時代と社会人になってからはまったくの別人となりました。働き始めてからは上司、社長としての距離感で接するようになり、亡くなるまでその距離感は変わる事はありませんでした。

 

20150715 6なので、ほとんど感情の無い事務的な話ばかりでしたが、今にして思えばそれは他人様の飯を食うことなく親の経営する会社に勤めるようになった息子への愛の鞭だったと思うのです。似たような境遇の頑固な二人が互いを罵り合う場面で不意に自分の父親の事を思い出し、一方で隣には自分の息子が座って一緒に映画を観ているという現実がいる、とてもかけがえがなく幸せな事のように感じ不覚にも涙が溢れそうになったのです。そんな事が脳裏に交錯して、父親的な感情から学生たちがこのために準備にかけた時間や思いが激しく私の心を揺さぶったのでした、バケモノの眼にも涙




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