森のかけら | 大五木材


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世界中のいろいろな木を見てみたい、触ってみたいという好奇心と端材を捨てるのがもったいないという思いで作り始めた森のかけら】。初期のパイロット版から数えるともう10年以上が経過しました。10年経って木材を取り巻く環境も大きく様変わりしました。もともとは100種で始まったかけらが240種になり、プレミア36まで作って、当初の野望に向かって着実に進んでいる一方で、昔は容易に手に入ったのに今ではなかなか手に入りづらくなっている木も沢山あります。この傾向は今後もますます強くなると思われます。新しい樹種を開拓する一方現状の木を確保することも重要になってきます。

もともと希少で一般的な流通ルートに乗っていない木というのは当然入手が難しく、更にワシントン条約などに新た加えられたりすると一層手に入れることが難しくなります。例えば『チューリップウッド』や『キングウッド』などがそうですが、しかしこういう希少性の高い高価な木は、あるところにはあったりするもの。専門性の高い材木屋仲間を頼れば、かけらサイズの端材ならどうにかなったりすることもあります。蛇の道は蛇というやつです。それよりもある意味でそれらよりも難しかったりするのが、決して希少性が高くなく廉価で汎用性の高かくよく見かけていた木

私の場合は、それがロシア産のカラマツ、いわゆる『ロシアンラーチ』です。私が最初にロシア産のカラマツに出会ったのは、フローリングとしてでした。中国産のメープルなどと共に、大手のフローリング専門商社が世界のさまざまな木を使ったフローリングを手広く扱い全国で販売を始めた頃に、年輪が詰まった高齢木のカラマツフローリングも人気を博しました。SNSが普及していない時代、どの地域にどういう特色がある木材があるのかもよく分かっていませんでしたが、木青連(日本木材青壮年団体連合会)の全国大会などに参加して徐々にそれが理解できるようになりました。

出向していた当時の会長が富山の方だった事もあり、何度か会議で富山にも行く機会があったので、当時は国内で『北洋材の基地』と呼ばれていた富山の製材の方たちとも親しくなり、北洋材の事についてもいろいろと教えていただきました。寒いロシアで育ち目の詰まった良質で安価な北洋材製品は全国を席巻し、愛媛でも多くのロシア製品が流通していました。なので、弊社にもごくありふれた光景としてロシアのカラマツ(野縁などの羽柄材)がありましたし、富山の仲間を通じて容易に入手することが出来ました。そんなロシアのカラマツでしたが、ある時にその環境が激変することが起こるのです。続く・・・

 




春を告げる木』としても知られるモクセイ科の広葉樹『コブシ(辛夷』が今年も裏の土場の一角で純白の花を咲かせました。以前にブログでも紹介しましたが、愛媛のある地方では夕方暗くなった頃にコブシの花を見ると、その大ぶりで白い花がぼんやり浮びあがって、まるで幽霊のように見まがう事から『幽霊花(ユウレイバナ』なんて呼ぶところもありますが、確かに日暮れや月明かりの中でも白い花がぼうっと浮かんで見えてその存在だけが際立っています。幽霊扱いするのは可哀想ですが、山の中で出会うとその花の白さは怖いぐらいに映えるのかもしれません。

床柱など丸太として意匠的に利用されることはあっても、板材などとして見かける事はほとんどありません。愛媛では自生していないと言われているので、どれぐらいの大きさの丸太があるのか分かりませんが、床柱などに使われているの大きくてもせいぜい3寸程度。うちで花を咲かせているコブシは、幹の方でも3寸程度。床柱で少し傷のついたB品もありますが、それもそれぐらいの大きさなので、芯と節を外して35㎜角を取ろうとすると結構厳しく、【森のかけら】を取るのだって容易なことではないのです。あ、読み返したら前に取り上げた時も同じような内容の事を書いてました(汗)。それぐらい材としては馴染みが薄い。

数年前から地元で庭木や神社の木、街路樹などの『一般的な用材としてはほぼ見かける事の無い木』にも手を出すようになってから、その木の種類などを見極めるために不慣れだった葉っぱや花の事も気にするようになりました。なので、それまではコブシのように特徴的な花を咲かす木でも、目には見えていても気にしてもいませんでした(まあ見えていなかったという事です)。今にして思えば随分ともったいない事をしてきたとは思いますが、材と違って保存の難しいところですから現物コレクター派としてはかけらほどは萌えなかったかも。

歳を重ねてきたからは、現物が無くてもその画像や物語などのソフトを収集して満足感を得られるようにもなってきたので、そういう意味ではコブシなどは非常に興味深い木です。木にまつわるエピソードって収集すればするほど関連性が出てくるので、話にも広がりが出てきます。コブシはその花の白さから「幽霊木」と呼ばれますが、幽霊と木といえば思い浮かぶのがシダレヤナギ(枝垂柳)まだ水路が未整備の頃に水の事故を防ぐために、暗くなると水路や河川に近づけさせないために生まれたのが柳の下の幽霊』エピソード。木にはいろいろな形で人の暮らしに関わっています。

 




うちの土場の奥で子育てを始めたセキレイですが、しばらくするとそのあたりからピイピイという複数の可愛い鳴き声が聞こえてくるようになりました。どうやら卵が孵ったようで、そっと巣を覗いてみると巣の中に産毛に包まれた小さな雛の姿が5,6羽見えました。私の気配に気づいて身をすくめる雛たち。あまり怖がらせても可哀想なので、詳しく確認は出来ませんでしたが雛たちは元気そう。私がその場から離れると、すぐに親鳥がかいがいしく餌を運び入れます。口数が多いので親鳥も大変、その奮闘ぶりが身につまされます。


歳時記の七十二候では、3月21~4月4日は春分でますます春らしく暖かくなり、スズメが巣作りを始める『雀始巣(すずめはじめてすくう)』ですが、大五木材においては『鶺鴒始巣(せきれいはじめてすくう』ですが、これってうちだけのことではなく、主役がスズメからセキレイに代わっているところ多いと思います。それから数日は社員も代わる代わる雛たちの様子を見にっていました。その間も親鳥たちはかわるがわる昆虫などを咥えてきてはいそいそと巣に餌を運び続けます。さて、巣立ちはいつ頃になるのだろうかとその時を楽しみにしていました。

そしたら昨日、いつものように親鳥が口に餌を咥えて屋根に家にいるのですが、様子が少し変。辺りをキョロキョロ見回して巣の周辺をグルグル回っています。雛に何かあったのかしらと巣の様子を見に行くと、昨日まであれほど押し合いへし合い5,6羽がすし詰めになっていたはずの巣が空っぽ。もしや巣から落下したのかと下の方を探しましたが見当たらず。ヘビか野良猫にでも襲われたにしては巣がまったくの無傷。しかし雛たちの姿はどこにも見当たらず。親鳥も明らかに慌てているようで周辺を飛び回っています。

倉庫の中にヘビや野良猫が紛れ込んでいることはあるのですが、ヘビが動き出すにはまだ少し早いように思われるし、何者かも襲撃を受けたにしては巣が無傷。セキレイの雛失踪事件の手がかりもなく、突如5,6羽もの我が子たちを失ってしまった親セキレイの悲痛な鳴き声(そう聞こえた)に同情しながらも仕事に戻りました。親たちの捜索は夕方まだ続いて、子を持つ親としては不法占有ではありながら、守ってやれなかったことに対して少しだけ後ろめたさも感じていました。そしたら仕事終わろうかとしていた4時過ぎ頃にスタッフが土場の片隅をヨチヨチ歩く1羽の雛鳥を発見!

なんと、数日前にはまだ産毛が生えたばかりのように見えていた雛がすっかり逞しくなって巣立ちしていたのです。それで巣が綺麗なままだったのか。無事でなにより、それにしても他の雛は?と積み上げられた木材の奥の方をよく見てみたら、小さな動く影がいくつか。どうやら巣立ちはしたものの倉庫の奥の隙間とかに迷い込んだみたいで、親も見つけられなかったようです。それから続々と雛が現れ、親とも無事再会。そのうち徐々に飛び上がるようになり、しばらくすると親と共にどこかに飛んでいきました。少し頬の緩んだ今年の『鶺鴒始巣』でした。

 




毎年、この季節になると弊社の土場のあちこちで鳥たちの巣作りが始まるのですが、今年も類に漏れず、朝から土場では鳥の鳴き声が喧(かまびす)しい。以前はハトやらスズメやらが来ていたのですが、この数年多いのはやたらと甲高い声でピイピイ啼いて、チョコチョコと走り回り、飛び方が独特な鳥、セキレイ。セキレイにもいろいろ種類があるらしいのですが、とにかくせわしない鳥で、その姿をカメラに収めようとしても動き回るのでアップの画像を撮ることが出来ず、ハッキリ分からないのですが恐らく『セグロセキレイ』ではないかと思います。

ハトの場合は、とにかく木材の上に糞をするので極力木材の上部での巣作りにはご遠慮願っているのですが(可哀想だけど巣が完成する前に撤去させてもらう)、小さな鳥だとどこに巣を作っているのか気づかない事もあります。巣を見つけたとしても卵が産まれていたら、巣立ちまでは不法滞在を認めることにしています。今年は少し奥のクスノキの板の間に巣を作っていて、見つけた時には既に既成事実が出来ていたので、見事セキレイが占有権を獲得。しばらくの間はクスノキの板は動かせない事になりました。

セキレイは尾をフリフリさせるので特にその姿が目に付くということもあるのかもしれませんが、最近この辺りでスズメの姿を見かけなくなりました。それで気になったので調べてみると、なんと衝撃の事実が!ある調査によると、スズメの生育数が全国的に激減しているらしい。この20年で最大80%減、50年前と比べると90%も減っているそうです。その理由のひとつに、住宅産業界が関係していると知って重ねて衝撃。昨今の住宅は洋風化が進み、軒の出が無いスッキリしたサイディングの壁面が多くなり、スズメが巣を作る隙間スペースが無くなってしまっているのです。

その他にも田畑の減少や、雛の餌となる昆虫が生育できる場所が減った、逆に急増しているカラスに雛が襲われるなども原因とされているそうですが、巣作り出来る和風の木造家屋の減少はこういうところにも影響を与えていたのかと思うと複雑な心境です。そうして少なくなったスズメにかわって生育範囲を広げてきたのが、環境への適応能力が高いセキレイだということ。うちに巣作りしているセキレイはすっかりこの場所を自分のテリトリーとしたらしく、堂々と土場の中を飛び回っています。明日に続く・・・

 




新しい元号が「令和」になり、間もなく『平成』の時代も終わろうとしています。思えば『昭和』から『平成』になった時は、大学4年生でした。その春に大学を卒業して平成元年に大五木材に入社しましたので、平成の歴史がそのまま私の今日までの社会人としての歴史と一致します。バブルに浮かれた大学時代を過ごし、あれから早や31年が過ぎました。あっという間の平成時代でした。あの頃は、まさかこんなひねくれた材木屋になろうとは・・・そして今日、4月3日に53歳になりました

平成時代の31年を経て、これから先、令和の元号の元でいつまで材木屋が続けられるか分かりませんが、激変する社会情勢の中でこうして細々とでも木の仕事を続けさせていただけるというのは本当にありがたいことだと感じています。先代の頃の昭和時代、私が引き継いだ平成時代、そしてこれからの令和時代で、大五木材の仕事内容は大きく様変わりしましたし、これからも変わっていくと思います。離れていった人もいれば、新しく繋がった人も沢山います。今の仕事が「材木屋」というカテゴリーには収まらないかもしれません。

若い頃は周囲の目や社員の反応ばかりが気になっていましたが、馬齢を重ねて鈍感になったせいか、図太くなったのか、もうそんな事も気にならなくなりました。試行錯誤の30年でしたが、その中で見えてきたものがあります。どうにか新しいスタイルも固まってきましたので、これからは『令和時代の大五木材色』を強く打ち出していきたいと思います。ところで、『』の漢字で思い浮かべる木と言えば『令法(リョウブ)』。既に木材関係の方がアップされているかもしれませんが、【森のかけら】にリストアップしている木としてスルーするわけにはいきません。

数年前にも愛媛の石鎚山に登った時に目にしてブログにも取り上げ、『今日のかけら』にも書きましたが、一般的に建築材に使われる木ではないのであまり馴染みが無いかもしれません。もしかしたら新元号の漢字が入っている木として、一躍脚光を浴びたりするかもしれません。理由はどうあれマイナーな木に光が当たるのは嬉しい事です。改めてもう一度『リョウブ』の紹介をしておきます。漢字で書くと『令法』と表わしますが、読み方は『リョウブ』。

もともとは「リョウボウ」と呼んでいたものが「リョウブ」と呼ばれるようになりました。名前の由来は、「律令国家末期のあたる平安時代の初期から中期にかけて、農民たちに対して田畑の面積を基準として、一定量のリョウブの植栽及び葉の採取と貯蔵とを命ずる官令が発せられるが、この官令(令法)がそのまま木の名前になった」ものだと、植物学者の深津正氏が書かれています。はるか平安時代に名付けられた木が1000年後に注目を浴びるかもしれない。そんな気の長い木の話を語り紡ぐのも令和時代の材木屋の大切な仕事です

 




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