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子供の具合が悪かったので近所に出来た割と新しい病院に初めて連れて行ったのですが、受付のあるロビーが開放的な吹き抜けになっていて、その壁面にアクセントとして意匠的に木が使われていました。桧の節ありの 50~60㎜角でしょうか、壁の上部にグルリと貼りめぐらされ、白壁の中に軽快な雰囲気になっていました。もっときちんと画像を撮りたかったのですが、人目もあり、天井をしげしげと眺めじっと撮影していると危ない人と思われそうなので、ささっと撮ったためいまひとつ良さが伝わりにくいのが残念。
先日大寒が過ぎましたが、まだ肌寒い日が続いております。今年の冬は最終的には暖冬という事ですが、人間どうしても目先のことが気になってしまいます。政治の世界は騒々しいようですが、日々の世論調査を持ち出して、政党支持率何%云々を大騒ぎするのはまことに妙な光景です。今日と明日とでコロコロ政党支持が変わって、支持率が下がったの上がったのって、テレビの視聴率調査じゃあるまいし、何をやってんだか・・・。人間、目先の事には敏感なのに、長いスパンのビジョンには関心が薄いのものです。
昨今、環境問題の意識が高まり、植林活動が盛んに行われています。大変素晴らしい事だと思います。頼りない苗木も植えた直後は、日々の雨風さえも心配ですが、どんどん大きくなって30、40数年後も経ってどのような形になるかについてはあまり想像が出来にくいのではないでしょうか。床の間などに使われる『絞り丸太』などは、それぐらいの年輪の物で製造されることが多いのですが、近年その出番は減少傾向にあります。触ってツルンとしたのが『磨き丸太』で、表面が浅く凸凹しているのが『絞り丸太』ですが、それも『天然絞り』と『人工絞り』に大別されます。自然条件の変異などによって、年輪が著しく波打ったような物が現れ、木の皮を剥ぐと絞り模様が出てきますが、これを磨いたのが『天然絞り丸太』です。絞りが緻密で優雅な雰囲気があります。
それに対して、『人工絞り』は普通の立ち木に、人工的にプラスチックの添え木をあて針金を巻き付け、そのまま2,3年放置してから伐採して、皮を剥いて人工的に絞りが入った物です。『天然絞り丸太』は、省略して『天絞(てんしぼ)』とも呼ばれ、かつては良い物は1本数十万もして、高嶺の花でした。それが品種改良なども進み、天絞丸太の生産も以前よりは安定的に供給されるようになりました。しかし皮肉な事に生活様式の変化、少子化による着工数減少などにより和室が減って床材の出番が減り、需供のバランスが崩れ、値が下がり始めました。
用途として床の間かせいぜいポーチ柱ぐらいにしか出番がないので、銘木の花形であった絞り丸太には苦難の時代となっています。昔なら1本選ぶのにもドキドキした天絞りも値崩れして、人絞などもまとめ買いできるような相場になってしまいました。安いからいいという事ではありません。この丸太で生活をしている方々もたくさんいるわけです。相場がこれほど乱れては安定供給どころか生活すらままならなくなります。安く仕入れる事は当然大切ですが、その商品そのものが成り立たないような状況になるまで価値が低下してしまっては元も子もありません。勿論銘木クラスの絞り丸太は高額で取引されますが、全体の底が押しあがらないと厳しい状況は変わりません。こういう絞り丸太にも、床の間以外の新たな活躍の場を考えていかなければなりません。いくら安くてもいい、なんてのは30,40年も生きた木に申し訳ないと思うのです。正当な価値を見出せない産業はやがて淘汰されてしまいますから。
昨日、今日と松山市大可賀のアイテムえひめで『メッセ・まつやま2010』が開催されてます。松山市の姉妹・友好都市であるサクラメント市、フライブルク市、ピョンテク市の紹介や物産の販売などが行われています。その中のイベントの1つとして、23日に『テコンドーの演舞』があったのですが、それを目当てに会場に駆けつけました。テコンドーに興味がある・・・というわけではなく、その中で披露される『試割り』が目的です。試割りというのは、掲げた木の板を手や足技で割るというアレです。
実は、松山市のテコンドー協会の師範として活躍されている松友さんと知り合いで、以前から試割りの材料の件でご相談を受けていました。私はプロレスをはじめ総合まで格闘技は大好きなのですが、もっぱら『観る』と『読む』専門です。昔は村松友視さんの『私、プロレスの味方です』や真樹日佐夫さんの『極真空手27人の侍たち』を読み、『紙のプロレス』も愛読しておりました。そういう事もあり、最初松友さんから『試割りの板』の話があった時は、自分が割るわけでもないのに妙な興奮を覚えました。しかし、テコンドーの試割りの板など考えた事もなかったので、少々戸惑いがありました。何がいいのか?
【森のかけら】の育ての親の一人である、パルス・デザインの大内智樹さんの事務所が引越しされました。大手町の愛媛新聞社のすぐ西側のビルです。縁あって内部の材料を一部納品させていただきました。今日いろいろお願いがあって事務所に伺いましたが、すっかり引越しも済まされて落着いた雰囲気になっていました。さすがにデザイナーさんの事務所です、山のようにカットサンプルがあるでもなく、デッドストックの商品が積み上がっているわけでもなく、すっきりしています。うちも片付ければこうなるのでしょうが、私の性分で1週間と持ちません・・・。
この事務所の中に見覚えのあるテーブルが・・・弊社の2階でながらく展示してあった『栗の槍鉋仕様の天板』を大内さんがご購入いただいたのです!ながらく親しんだせいで、これがよそのおうちにあるのは何か不思議な気分ですが、既に堂々とスペースをぶんどって腰を落着けていました。以前は座卓仕様にしていましたが、テーブルとして高さが出ると更に存在感が増します。けれどもう自分の物ではないのだなあと妙にセンチな気分にもなったりします・・・いかん、いかん!この打ち合わせ用の部屋の壁には、【森のかけら100】も飾ってていただき本当にありがたい限り!
この栗の天板の上で、日本を動かすようなビッグプロジェクトを語りあって下さい!東の窓側のロング・カウンターにはタモの積層フリー板を使っていただきました。積層材とは、読んで字の如く小さくカットされた短材をフィンガージョイントといって、掌を広げたような形にお互いを加工してつなげた物で、ある程度までは長さも幅も好きなサイズで作れます。一般的には長さ4200X500X30とか600X30mmとかがあります。植物性油を塗るとタモは少し毛羽立ちますが、サンダーで磨くとごらんの通り滑らかになります。これを2,3度繰り返せばツルツルになります。濡れ色になっていい感じに仕上がりました!
ベランダには、高耐久性木材のひとつ『マニルカラ』のデッキ材を使っていただきました。『アマゾンジャラ』の別名を持つ非常に硬質な木です。夏には焼肉かビアガーデンでくつろぐ大内さんの姿が目に浮かびます。以前にウッドデッキに適した材として『イペ』をご紹介しましたが、『マニルカラ』も同様の性質があり、デッキ材として広く利用されています。厚み20mmの材なので、ややたわみはあるものの強度的には全く問題ありません。施工時は下穴を開けておかないと、インパクトのビットが幾つあっても足りません。それほど硬い木ですが、その分耐久性にも優れています。半年もすれば、渋い『ロマンスグレー』に退色しますが、それも外部に木を使う際の醍醐味。変わり行く色合いほどに、この地でのパルス・デザインの歴史が刻まれていくことでしょう。大内さん、更なるご活躍を祈念しております。これからもどうぞよろしくお願い致します。
現在建築中の『dragon.house』ことS様邸(店舗ではありません。家のニックネームです!)に、先日打ち合わせに伺うと、2階の天井が貼りあがっていました。この『dragon.house』を設計されている設計士の石村智子さん(イシムラトモコ建築設計)から、「天井に50mmぐらいの幅の無垢を貼りたい」と聞いたとき、「何をっ?!」と思った物ですが、実際に貼りあがってみると綺麗です!この小幅が何とも独創的で、色の違いによる質感もこの幅がゆえに様になっております。樹種は『カランタス』Kalanyas 東南アジア原産のセンダン科の木です。別名スリアン。長さ3000mmの板を小割して、厚みも割り返して53x10mmに仕上げました。『カランタス』はとても軽軟な木で、机の引き出しの内部にも使われるようなデリケートな材です。軽い分だけ、加工すると逆目や毛羽立ちが出やすく、かなりロスも出ましたが、この貼り上がりを見ると大満足!さすがは挑戦士、いや設計士・トモコさん、お見事です!
常日頃、『木は決して建築資材になるためだけに生まれてきたわけではない!』と語っておきながらも、住宅の部材として使った事のない所に初めての樹種を使う場合はやはり慎重になります。施工直後は別に問題はありませんが、経年変化による収縮や反り、環境へ順応しているか、例えば耐水性に優れた木を水周りに使ったけど大丈夫だったかとか、耐候性の強い材を外部に提案したけどどうっだったかなとか。そんな事を言うと、あなたも一応まともな感覚も持ち合わせているのですねと言われそうですが、そういう細やかな末梢神経もわずかには残っています。
ただすぐに忘れてしまうのは問題ですが・・・。それにしても、自分の所の自分で褒めるのも何だとは思いますが、カランタスの天井綺麗でした!幅が狭い材だったので、施工された㈱もみじ建築の越智棟梁も大変だったと思いますが、実に丁寧に施工していただきました!普通こういう手間の掛かる材を提案すると、現場からは冷たい視線を浴びるものですが、越智棟梁は興味深々に乗ってきてくれたので感謝、感謝!こういう物は、楽しんでやってもらう人が集まらないと絶対面白くなりません!施主さん、設計士さん、工務店さん、材木屋の4つの信頼関係がないと、責任の擦り付け合いになるか、事前に回避するための後ろ向きな提案に終始してしまいます。そこには無垢材の入る隙間はありません。それじゃ、つまんないじゃか!という人間が集合したのがdragon.houseなのです。こういう仕事は楽しいですね。
更にいろいろな部材を使っていただきますので、これからおいおいとご紹介させていただきます。好奇心の旺盛な方々と仕事をさせていただくと面白いです。その分リスクもありますが、それを恐れていては変わった木など扱えません。いいんです、分かっていただける方だけで。結束力で勝負だ~!興味も関心もない畑に水を捲りよりも、どんどん水を吸収する畑に水を撒きたいです。水を撒く人が多くなればなるほど大きな木になります。ブランドはなくとも人のつながりがあれば、プラント育ちの木にも負けない木は育ちます!
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