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先日、餅つきの杵のメンテナンスのご依頼がありました。メンテといっても、長年の使用で杵の頭の部分がかなりくたびれてしまっているので、削り直してほしいというもの。翌日の餅つきのイベントに必要という事でお急ぎだったので、私が加工させていただきました。精度の高い事は出来ませんが何とか間に合わせますという了解を得たうえで、どうにか直させていただきました。大工さんが作っられた杵ということでしっかりした作りでした。
この時期ならではのご依頼でしたが、私も久しぶりに杵を手にしました。昔は結構自宅で餅つきをする事って珍しい事ではなかったと思いますが、最近では何かのイベントでもないとそういう機会もないことでしょう。当然、臼もいるわけですからそれらを収納しておくスペースの事を考えると、家の中から杵と臼が姿を消していくのも仕方がない現実でしょう。またひとつ「木の文化」がレッドデーターブックに、いやもう掲載済みでしょうか・・・
それまで杵の事をあまり意識したこともまじまじと観察した事もなかったのですが、改めて木の素材としての杵について考えてみました。素材としては、絶対的な樹種というものはなく、地域によっても使っている素材は違うようでした。ただ、強い力が加わるものですからやはり衝撃に強い木が好まれるようで、ケヤキ、カシなどが多く使われているようですが、中にはカエデとかホオ、ヒノキ、トチ、ブナなども使われているところもありました。
昔は餅が祝い事などには欠かせぬものでたし、餅つきの頻度も高かったことから、身近で手に入るものの中からなるべく丈夫な木を使うというのが大原則だったことでしょう。または杵を振るう対象者に合わせて重さや長さの調整の利く素材、あるいは餅の仕上がり具合に合わせて複数の素材の杵があったのかもしれません。素材の違いでどこまで餅の味が変わるのか分かりませんが、杵でつくというその雰囲気だけで美味しくなりそうな事は確か。
かつて宗教的な儀式としての結びつきなどもあったり、食糧難の時代には貴重な食べ物であった餅ですが、飽食の時代となった昨今でも、イベントの餅撒きといえば老若男女が我先にと目の色変えて必死になるのは何の因果か、人間の本能のようなものでしょうか。昔、上棟式の四方固めの餅を拾おうと殺到して腕を骨折した知人がいましたが、そこまで人を夢中にさせる餅撒きも上棟式ではすっかり見かける機会が少なくなってこちらも寂しい限りです。
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