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経済的に価値のあるものだけを扱ってきた材木屋が、こういう事を言うというのは本当に口幅ったい事なのですが、でも材木屋だからこそ言わねばならないと考えるようになりました。だったらせめて、その贖罪というわけではないですが、すべての木をピュアな生命価値という価値観で平等に捉えられるものづくりは出来ないだろうか。好きな木を好きなだけ選ぶのではなく、決められた森の大きさに合わせて、それだけの木を選ぶというルール。つまりそれが、「森のかけら」。
器の大きさは100、あるいは「36」です。その森の大きさに合わせて木を選ぶ、なので好きな木を選んでもらうのは構わないのですが、中には望んでいなくとも加えていただかなければならない木も出てくるでしょう。それが経済価値社会の中では余計なもの、価値の低いものと映るかもしれません。しかし、「森のかけら社会」においては、どれもが対等なのです。世界の銘木チークだって、そこらにあるスギだって同じ価値。いろいろな木があってこそ本来の森の姿。
いろいろな木が集まり森を作っているのですから、どれが欠けても森は成り立ちません。ここにおいてはそれぞれの木はAtoZに記号化され、森を構成するかけがえのないワンピースとして光り輝くのです!なので、1個いくら?とか、好きなだけ欲しいとかいうご要望にはお応え出来ません。100(36)の森すべてを愛していただきたい!・・・と、こんな調子で商品説明をしているからら分かりづらいんでしょうね。でも仕方ありません、そういう人間なんですから。
それでもどうしても納得できないという方には、森の物語という調味料を振り掛けた「森の5かけら」や、あえて経済価値の極限までいった反面教師的な「森のかけら・プレミアム36」もご用意していますのでご安心を!もともと本来こういう趣旨で作り始めたわけではなかったのですが、年々商品の存在意義や価値観を強く意識するようになり、骨格が鮮明になり、核心が研ぎ澄まされてきました。もしやこれって、かけらの神が私に与えたもうた使命?!いま、本気で考えています。
年末に、「森のかけら」の事を最近知って詳しい事を訊きたいという方々数人とお話しさせていただく機会がありました。学生さんや主婦の方、木工関係、設計士さん、メディア関係の方々。私としてはもう5年も作っているので(実質的には6、7年)、さすがに新鮮味は薄れつつありますが、何かのご縁でつい最近「森のかけら」の事を知っていただいた方には、240種のかけらが余程新鮮に映るのか、大層な驚きと感動でその喜びを表現していただくこともあり感謝感激なのです。
このブログも5年も書いているとつい、読んでいただいている皆さんがつい商品の事についてよくご承知の体で言葉を綴ってしまい大いに反省しています。いろんな所でいつも同じような話をしているので、商品の説明についても何度も同じことの繰り返しになってはいまいかと控えめにしていたつもりが、説明不足になっていたようです。考えてみれば、過去のブログの内容を探すのって、書いた本人ですら大変な作業ですから・・・。改めて「森のかけら」の商品コンセプトについて。
少し大袈裟な表現をさせていただけるのならば、「森のかけら」は小さく圧縮した森です。森の恵みである「材」の端材から生まれた小さな「木」の集合体です。ひとかけらひとかけらが「世界のいろいろな木」なのです。そのかけらが2つ集まれば「林」になり、3つ集まれば「森」になる。240も集まれば立派なジャングルかもしれません。それらの木、1つ1つには、この世に生まれた意味と役割があります。中には人間にとってはあまり価値がないものもあるでしょう。
いや、本当は大切なのに、今私たちが生きる社会の中ではその生命価値は、きらびやかな経済価値の中に埋没して見えなくなっているのかもしれません。しかし、木は決して人間のためだけに生まれてきたわけではありません。それが建築や家具などに適さないからといって、本来の生命価値が下がることなどありえないのです。森において、彼等には大切な役割があります。鳥や虫たちの終の棲家を提供し、その落ち葉で豊饒な大地を作り、美しい花を咲かせるものもいるでしょう。大地に深く根を張り、大量の水を貯え、森に命のオアシスを与えるものも。そしてこの清らかで大切な空気を作り出してくれます。そんな素晴らしい木々をただ表面的な薄っぺらい経済価値だけで判断してしまって本当にいいものだろうか。これが「森のかけら」を作り始めて私に与えられた命題です。
人間にとって好ましくない匂いも、この世に存在する以上は、自然界において何らかの意味があるという事。そこで、木の匂いが心地よいという先入観を外して、その匂いの効果について再考してみました。この匂いを嫌っているのは人間以外で誰がいるのか?そこで思い浮かんだのが「シミ」の存在。古い書物などを開くと、手足の長い虫がササッと逃げるのを見たことはないでしょうか。それがシミという名前の虫です。 |
原始的な特徴を持った昆虫シミは、本を食べる虫として知られています。そのため漢字では「紙魚」と表されます。この紙魚がイチョウの匂いを嫌いことはよく知られていて、先人たちは大切な本を守るためにイチョウで作った栞を本に挟んでいました。鴨と紙魚から思いついたのが、鴨をデザイン化したブックエンド。本の中に潜んでいた紙魚を退治してきた、あるいは守っている鴨の親子という構図なのです。 |
キャラクターデザインは、勿論パルスデザインさん。立体造形は、こちらも誕生木の出口商品の定番JUNE STUDIOの佐伯勇樹さん。懐刀でもある秘密工場(!)の技術力も含めて、自分の中で思い描いたものよりも数倍もいい出来栄えに仕上がったと満足しています。これだと、大きな材は必要なく、切り分けたブロック状の材料でも作ることが出来ます。また、その強烈な匂いが商品特性としても意味が出てきました。 |
デザインは、親鴨1匹(A)、親子2匹(B)、親子4匹(C)の3パターンがあります。親子4匹になると、本体170㎜+金物70〜90㎜と結構大柄なのですが、イチョウそのものは非常に軽いので取り扱いは容易です。独特の匂いを活かすため、今回はあえて無塗装としています。「匂い」で苦労したものの、最後はその「匂い」が助けてくれました。やはりこの世に存在するものに意味のないものなどはない! |
イチョウの名前の由来である鴨(ダック)と匂いの効果から生まれたブックエンドですので、商品名は『ダックエンド』。英語的には問題があるのかもしれませんが、もうこの組み合わせしか思い浮かばなかったのでこれに決めました。とりあえずは完成したものの、細かな調整作業が残っておりますので、個別の価格などにつきましては、作業が終わり次第『誕生木』のコーナーにてアップさせていただく予定です。さて次は急いで12月の誕生木!! |
材料が限定された中で、材の特徴を出来る限り活かして、その用途(なるべく身近なところで使ってもらいたい)や価格(12か月のそれぞれの商品にあまり開きがないように)などを考えながら毎月新作を作るというのは、私にとってはかなりの負荷のかかる命題なのですが、こういう事でもないと1つ1つの樹種に対して改めて掘り下げて考えることもないので、今となってはこの商品開発がいい機会だと考えています。 |
さて、『11月の誕生木・イチョウ』についてですが、その木言葉は「長寿」であり、秋の野山を鮮やかな錦繍に染める「黄葉」する木の代表格です。その絶対的な特徴は独特の匂いです。ギンナンの実を踏み潰した時の匂いは決して爽やかで清々しいものではないでしょうが、個人的には木そのものの存在をはっきりと認識させてくれるその自己主張は決して嫌いではありません。では、その特徴的な匂いを活かす方法はないものか? |
今回の商品開発にはその匂いが大きな足かせとなりました。自分の中で、匂いを活かした商品を作るという大前提を先に掲げてしまった事で、思いもよらぬ時間を費やしてしまいました。その匂いそのものが決して歓迎されるものではないのですから、匂いを全面に出すことがアダとなってしまうのです。そこでまずは原点に返って、イチョウという名前の由来についてもう一度振り返ってみることにしました。 |
ほとんどの植物を死に追いやった過酷な氷河期を耐え抜いて、中国大陸から日本に伝来した貴重な植物なのですが、その名前について面白い逸話があります。葉が1枚であることから一葉(イチヨウ⇒イチョウ)に転化したという説もありますが、私が支持したいのは次の話。昔、中国ではイチョウの葉の形が、鳥の鴨の足の形に似ていることから、鴨脚を意味する「ヤーチャオ」と呼ばれていました。 |
鎌倉時代から南北朝時代に日本の多く僧侶が大陸へ渡ったのですが、彼らがその言葉を「イーチャウ」と聞き覚えた事から、帰国後に周辺に聞き伝えたものが後にイチョウに転化したという説。つまり、イチョウの葉の形が鴨の脚に似ていたことから、鴨の脚を表す言葉がその名前となったというのです。そこから名前の由来となる鴨のキャラクターが決まりました。次はそこにイチョウの材としての特徴を重ねる作業。 |
がっつり月遅れで恐縮なのですが・・・ようやく11月の誕生木『イチョウ』の出口商品が完成しました。以前にその断片だけもったいぶった書き方でご紹介させていただきましたが、本日はその材料の事も含めて2回に分けて詳しくご説明させていただきます。まずはその材料の木取りから。今回使用するのはこちらの愛媛県産のイチョウ。大きな節が出来る事は前回ご紹介しましたが、さすがにこれだけ大きな節があると、切り分けて使うしかありません。そこで、節を避けて短めにカットしていきます。 |
大きな節のところでカットして切り分けするとこんな形になります。今回は『誕生木の出口商品』を作るという大前提がありますので、どのサイズもすべて1つの商品のために使いますが、通常はこの段階で森のかけら用、森のりんご用、森のたまご用、モザイクボード用にと、そのサイズに合わせて細かく用途毎に分類します。これだけ大きな節があっても、節を避けて細かく分割することで、用途は広がります。 |
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