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全国に数多ある桧ブランドの最高峰が「木曽桧」と言っても差し支えはないでしょう。愛媛の桧もそうなれば嬉しいものの、そうなるまでには膨大な時間、歴史、背景まで含めた物語性が必要になります。木曽桧が知られているのは、それを取り巻く圧倒的な物語性。特にその名に箔を与えているのが「木曽五木(きそごぼく)」の1つであるという事。木曽五木とは、木曽地方に生育する5種類の木の事で、ヒノキ、サワラ、アスナロ(ヒバ)、コウヤマキ、ネズコがそれにあたります。
なぜこの5種の木が有名なのかというと、徳川時代にこの地域を所管していた尾張藩が、この5種の木に対して厳格な禁伐政策をとっていたからです。当時この禁を破って伐採するとその代償として命で償うという「木1本首1つ」と言われる厳しさで5種の木を保護してきたのです。その結果、後世木曽には立派な原生林が残り、禁が解けた以後立派に成長した目込みで美しい艶と光沢を備えた木曽桧は、様々な商品(風呂桶やお櫃などに加工され出材され人気を博したのです。
ではなぜに徳川幕府はそれほどまでに木曽五木を大切に保護したのでしょうか。そもそも桧は、スサノオノミコトが日本書紀において「宮殿は桧で作るべし」と言ったように、良質の建築材として古来より親しまれ使われてきた歴史があります。以前にこのブログでも触れましたが、かの織田信長が安土城を築いた際にも、良質の桧を求めた記述が残っているほどです(詳しくは是非、映画『火天の城』をご覧いただきたい)。桧は城造りに欠かせぬ素材だったのです。
相次ぐ築城ラッシュで、次第に良質で大きな桧は資源不足になってきます。「時の権力者は大木を伐る」事で威厳を保とうとしたのです。そして秀吉、家康、その後の徳川幕府は良質な桧を木曽に求め続けていたのですが、さすがに無計画に伐採していたのでは豊富な資源も底をついてしまうことから、自分たちが使うために厳しい禁伐政策をとったのです。つまり木や環境の事を考えてといわけではなかったのですが、結果的にそれが桧の文化を残すことになっていったのです。
木を語るうえでそういう物語性は大切です。それで【森のかけら】には「木曽桧」を採用しました。全国に多数ブランド材が存在するのはスギも同じなのですが、桧は杉ほどに特徴に差異がみられません。特にかけらのように小さな断片になってしまうと。それで匂いに特徴のある「屋久桧」と「木曽桧」の2種のみをかけらに取り入れました。桧についてはまだまだエピソードがあるので、今後も随時アップさせていただきたいと思います。これにて「木曽桧」の項、ひとまず完了。
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