森のかけら | 大五木材


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20150321 1数年前にご縁があって、廃業された木材関係業者が長期間在庫されていたブビンガなどの板が大量に弊社にやって来ました。まだ『昭和』だった頃に仕入れられていたもので、今では考えらないぐらいの立派な幅広の1枚板がゴリゴリに乾いた状態で、目の前に文字通り山積み。一体何の木なのかすらも判別できないほどにすっかり埃まみれになって倉庫の奥の奥にくすぶっていましたが、ひと削りすると信じられないぐらい美しい表情が現れてきました。

 

20150321 2果たしてこれだけの量を自分の代で使い切れるのかと、その時は呆然としたものですが、まとめて投げ売りするような真似だけはするまいと決めていました。今は埃まみれで汚れてしまって内の木なのかも分からなくても、丁寧に磨いて加工さえすればこの原石は輝きを取り戻すという確信がありました。大量の材を動かすだけが材木屋の仕事ではありません。それぞれの特性を見出し、材がもっとも輝ける舞台に送り出すことも大切な仕事の1つだと思うのです

 

Exif_JPEG_PICTUREそれから数年、同じ種類のよく乾燥した同じテイストの材がまとまって揃っていたお陰で、いろいろな現場でいろいろな場面で利用していただき、考えていたよりも遥かに短い期間でほぼ9割が表舞台へと旅立って行きました。木を使いたいという要望があっても、対応できるサイズと量が無ければ不可能。逆にそれだけの在庫があれば、木の可能性は大きく広がるという事。特に圧倒的な存在感を誇っていたブビンガの板も長ものはいよいよ残すところ数枚。

 

Exif_JPEG_PICTUREその中でも特に分厚いものの最後の一枚がこちら。表面には歴史を物語る塵や埃が積み上がり、ちょっとその表情を拝むことが出来ませんが、この下にはブビンガ独特の深い赤身が眠っています。重さを計る道具が無いのでどれぐらいの重さなのかは分かりませんが、いくら乾燥しているとはいえ4m近い長さで、900㎜幅、厚みが135㎜ともなると大人4人でも持ち上げられるものではありません。机上計算だと350〜400キロ!

 

Exif_JPEG_PICTURE両端から少し入ったところが帯状に朽ちていますが、これこそが長期在庫の動かざる証拠。重ねて積み上げていたため、その桟の後がこうなったのだそうですが、この硬いブビンガを穿つためにどれだけの時間が要されたものなのか。以前に厚みを半分に割って使いたいという要望があり、製材所に持って行ったのですがあまりの硬さに鋸が耐えれず断念した経緯もあるいわくつきの1枚です。このまま使える舞台が巡って来ればいいのですが・・・




Exif_JPEG_PICTURE昨日に続いて、『ダリナ』の捜索についての話です。ちなみにAngelin の名前で呼ばれているのはアメリカ、ブラジル、ペルー、イギリス。ブラジルでは他にもUchyranaとも呼ばれます。ホンジェラスではGuacamayo、スリナムではRode kabbe、コロンビアではCongo、プエルトリコとキューバ、メキシコではMoca、ギアナではKoraroという具合に呼称がバラバラ。ダリナというのがどの地域で使われている名称なのかどうしても辿り着けませんでした。

 

20150320 2でも調べたお陰でいろいろな事が分かりました。エルサルバドルの呼称はAlmendra de rio(アーモンドリオ) 。春頃にバラ色~紫色の花が咲き、多肉の果実をつけるそうです。その実の事をAlmendraと呼ぶのだそうです。木の事を調べていて、突然別のキーワードで結びつくと嬉しくなるのです。遠い存在であったダリナの木が随分と近づいてきたような気がします。またイギリスではPartridge wood(パートリッジ・ウッド)とも呼ばれています。

 

20150320 3パートリッジというのは、鳥のヤマウズラの事ですが、私の推測ですが恐らく名前の由来は鶉の複雑で美しい羽に似た木目からきているのではないでしょうか。その点からもますますダリナとアンゲリンの一致点があるように思えます。ちなみに日本でも『鶉杢(うずらもく)』㊨という言葉が使われます。これは古くから使われてきた言い回しで、雅趣に溢れた美しい鶉の羽のような杢目に対する呼び名ですが主に屋久杉に対して使われています。

 

Exif_JPEG_PICTUREダリナがアンゲリンだと断定できるわけではありませんが、そうだとすれば気乾比重は0.63でやや重くて堅い。ただし見た目から感じる重量感の割に乾燥は早いようで、在庫しているモノもかなり乾燥が進みました。切削や研削も問題ないようです。接地での耐久性は高く、産地では橋用材や杭、自転車、家具、ビリヤードのキュー、傘の柄、杖などに利用されています。今後更に調査を進めるので更なる情報が得られたらアップさせていただきます。




★今日のかけら番外篇・E24 【アンゲリン】 Angelin マメ科・広葉樹・中南米産

20150319 1昨日、海外の木の中にはその正体がよく分からないモノのあるという話をアップしましたが、かなり情報が出るようになった現在でも、「この木何?」という木にしばしば出会います。240種も木を扱っていてまだ知らない木があるの?なんて言われる事もあるのですが、勘違いしてはいけません。たったの240種です!一説によれば、世界中にはおよそ10万種の木があると推定されています。ちなみに植物は30万とも・・・気が遠くなる数字。

 

Exif_JPEG_PICTURE森のかけら】は、端材を捨てるのがモッタイナイという母親と、世界中の木を見てみたい、触ってみたいという好奇心の父親という両親から生まれたというのがコンセプトですが、10万種となるとライフワークどころか一族としての使命?!さて、そんな初対面の木がこちらの『ダリナ(darina)』という木。木材市場で買ったのですが、見たのも初めてならその名前を聞くのも初めて。しかも情報はほとんどなくて分かっているのはその名前だけ。

 

20150319 2仕入れた材を削って見たりして見る限り、印象はマメ科っぽい雰囲気で非常に木目が緻密。あれやこれやと文献を引っ張り出しては調べましたがなかなか正体がつかめず!探す事数日、僅かな手がかりを元にようやく辿り着いたのが1つに名前。メキシコの中部から南米の北部に至る地域に分布(一部は熱帯アフリカにも)しているマメ科の木、『アンゲリン(Angelin )』。これはイギリスでの呼称で、ブラジルでもこの名が使われています。

 

Exif_JPEG_PICTURE落葉性の木で通常は樹高が6~15m程度だそうですが、この木には小型から大型のものまで含めておよそ30種あって、中には直径が1~1.5m、樹高が30mにも及ぶ巨大なものもあるそうです。芯材の色は黄褐色から濃赤褐色までいろいろで、木理はかなり通直で肌目は粗く重くて堅い等の材の特徴から考えても、ダリナの正体がアンゲリンではないかと推測しました。ただこの樹種は分布が広く、各国で様々な呼び名があってダリナは確認出来ず・・・。更に明日へ




20150318 11つの木にいくつもの名前があって分かりにくいというのはよく聞く話。例えば『イチイ』などのように地域によって呼び名が異なる木(アララギ、オンコ、アカギなど)や、『ハリギリ』と『セン』のように立っている時と材になった時で呼び名が変わるモノ、また『ミズメザクラ』と『アズサ』のように材の特徴や用途など木を見る視点によって名前の変わるモノなど様々ですが、業界では意外にもそれが問題視される事は滅多にありません。

 

GE DIGITAL CAMERAそれは、木が工業商品などのように製造主によってある日、特定の意思を持って命名されたものではなく、各地で必要自発的にそれぞれ名前を与えられたから。もともと地域の材を地域で消費していた時代、名前の混乱は少なかったと思います。それが全国的、世界的に流通規模が拡大するにつれて、複数の名前を持つという事が混乱を招くとして問題視されるようになったと思うのですが、建築現場ではいちいち細かな履歴書が求められるわけではありません。

 

GE DIGITAL CAMERAフローリングや内装材などの仕上げ材など製品化され仕様が決まっているようなモノはその正体が明確ですが(昨今は、悪意を持って紛らわしい類似名をつけて販売する不届き者もおりますが)、アフリカや中南米など現地名が日本で馴染みの薄いような原木を製材して、それが市場に出品され更に流通業者の手から手に渡って販売された場合、伝言ゲームのように語り繋がれた「ネーム」だけが頼りとなりますし、それを信じるしかありません。

 

20150318 4だって現地に行ってその木が立っている姿を見に行くわけにもいきませんし、もし本当にそこまで行ったとしても、その木が何というのかは現地の人に聞くしかありません。日本の林業家が誰も立木の名前をすべて理解しているわけではないように、山や森における『現場』における木の呼び名は結構アバウトなものですし、いちいち学者先生のように葉っぱをルーペで見て観察して何の木か調べる必要も、そんな時間も暇もないというのが現実でしょう。

 

20150318 5すべての木に精通した林業家ばかりでは無いという事。それは日本に限らず世界でも同じようなものだと思うのです。特に種類の宝庫である東南アジアのジャングルなどでは、現地の人間でも名前のよく分からない木がいくつもあります。そんな時は材の色合いからイエローOOとかレッドOOとか、ザックリした名称で呼ばれることもあるし、特徴の似た木と混合されたりする事もあります(材質が重要視されない用途の場合ですが)。また、 MLH(Mix Light Hardwood/軽軟雑広葉樹といって南洋材の林相の似た混合樹種の呼称。一般的にはフタバガキ科などに使われているようです)のように個別の名前無しに込み込みで1つのグループとして扱われる事もあります。さて、この話、明日からが本題です。

 




20150517 1本日は『コブシ(辛夷) 』の木の最終話。3〜4月頃、葉に先立って小枝の先に純白の大形の花をつけ、北国では春を告げる木として親しまれていています。私が興味深いのはこの材の特徴よりもその名前の由来。和名であるコブシとは、そのまま『拳(こぶし)』の意味で、果実の形がが手を握り締めた拳の形に似ているからだとされています。そう言われればそう見えない事もないですが先人たちの詩的な想像力には惚れ惚れするばかりです。

 

20150517 2花には芳香があって香水の原料にもなることから銘木の世界では『香節』の漢字が使われています。若い頃は、無知ゆえに辛夷と香節が別モノだと思っていました。香る木というぐらいだから幹からも香りがするのかと匂いを嗅いだりしたこともありました。では辛夷という漢字が使われる理由は何か?それは漢方で、モクレンの蕾(つぼみ)を陰干しした生薬を『辛夷(しんい)』といい、鎮痛剤や鼻炎などの薬として用いられている事に由来しています。

 

20150517 3辛夷というのは、その実が辛い事から。日本にはそのモクレンが自生していなかったため、その代用として同じモクレン科のコブシやタムシバが使われてきたため、そのまま辛夷の漢字が充てられたのです。そのためコブシには『山木蓮(ヤマモクレン)』の別名もあります。他にも『田打桜(タウチザクラ)』の別名もありますが、田んぼの土を起こす田打ちの作業を始める頃にサクラに先駆けて咲き、農作業の時期を決める目安にもなっています

 

MINOLTA DIGITAL CAMERA愛媛でも「コブシの花が咲いたらトウモロコシの種を撒け」と言われる地域もあります。また愛媛の方言名には『ユウレイバナ(幽霊花)』というのもありますが、これは白色の大振りの花が咲いた様子を、夕方や月夜に遠くから眺めるとまるで幽霊にように見えることに由来しています。田んぼや畑の近くに咲く事が多いのも、コブシが日陰に耐えて生育する性質を持った耐陰性の木で、やや湿った場所を好むことによるのかもしれません。

 

Exif_JPEG_PICTUREコブシの種は果実を食べた小鳥によって運ばれますが、種子は乾燥に非常に弱く、一旦乾燥してしまうと発芽が悪くなるそうです。樹皮や枝葉からは『こぶし油』が採取されたり、木炭としても金銀などの研磨剤にも使われるなど、意外と言っては失礼ですがコブシにはしっかりとした用途の出口が定まっていたのです。従来の茶室や床の間だけでなくこういう丸太を意匠的に使おうという動きもあり、私自身もこれを契機にコブシの木を見直してご縁を持ちたいところなのですが、現在松山市内での銘木の流通はかなり細っており、昔のように頻繁にコブシのような材に巡り合うのも難しくなってきているのが少々不安なところ。ちなみに英語名はKobus Magnolia。コブシの咲く春はもうすぐです!

 




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