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巷では「平成の黒船」などど、今『TPP』の事で大騒ぎになっています。交渉のテーブルにつくかどうかを、今月ハワイで開催予定ののAPECで表明するという事で注目を集めていますが、早いものであれからもう1年が経過しようとしているんですね~。昨年の今頃は雲の上のAPECが目の前に現われて大慌てしたものですが・・・感無量。さて、TPPが木材業界にメリットがあるかどうかという事とは別に(マーケットが小さすぎて話題にすらされませんが・・・)、私個人としては「反対」です。
これが全世界を対象としたものであればその意義も大きく異なるでしょうが、「環太平洋」などという如何にもワールドワイドなネーミングが曲者。環太平洋経済連携協定と言いながらも実質的にはアメリカ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリ、オーストラリア、ペルー、マレーシア、ベトナムの9カ国の参加に過ぎず、アメリカが日本のマーケットを狙っているのがミエミエ。沈黙は金という時代もありましたが、こうやってそれぞれの立場から主張をする事によって、業界の国際的な立ち位置が透けて見えてきます。
しかしそれも行き過ぎると、我が身の利権や、言い分ばかりを主張する我田引水な物言いに変ってきて、各業界ごとのただのアジテーションにしか聞こえなくなってしまいます。しかし自分の立場を明確にしないと抽象的過ぎて真意が伝わりづらくなるから、この主義主張をどう伝えるかは難しいところだと思います。弊社のような流通業の立場としては、より安価に材が入ってくれば結果として商売としてはプラスに作用するかもしれませんが、目先の利益には換金出来ないものがあります。
昔より木のモノは日本人の暮らしと深く関わってきて、箸やお椀、まな板などの食生活から住居や家具、下駄、洗濯板、器、櫛、舟や棺や楽器などなど身のまわりの日常生活を支えてきました。それはすなわち「木の文化」でもあります。それぞれの木の特徴を鋭く観察して適材適所に活かしてきた、世界的にも類を見ない再生可能な素晴らしい文化だと思います。それが、利便性や価格競争の流れの中で、アルミやプラスティック、金属等々に取って代わられました。
昔ながらの日本の伝統的なものづくりのそれぞれの背景にあった「それがそれでなければならない意味」や物語が消失しつつあります。一度失った文化を再生させるのは相当に難しく、ただ素材を元に戻せばどうにかなるという話ではありません。かつてこの国で誰もが抱いていたであろう木に対する漠然とした共通認識は、「エコ」とう言葉に摺りかえられて引き継がれてきているように思われがちですが、実は似て非なるものだと思っています。表層だけを捉えるのでなく、その背景にあるものが伝わらなければ、ただ言葉に酔っているに過ぎません。
それでも日本人の精神性の底辺にある「木に対する異常な愛情」が希望の光です。小さな言葉やメッセージがわずかでも誰かのスイッチを押せればと思います。個人レベルのささやかな事ですが、文化という土壌あってこその木です。幹の大きさや美しさに目を奪われがちですが、根が伸びるための土づくりから始めねばなりません。アメリカの木もオーストラリアの木も大好きですが、互いの国の文化や暮らしを守り継承するという前提がなければ、安ければなんでもいいという潮流に飲み込まれかねません。国際的という言葉に弱い日本人は、なんとなく雰囲気で世界の流れなら「YES」でいいんじゃないのという事になりかねませんが、木に限らず連綿と受け継がれてきた文化を、目先の金とバーターするような選択をしてはいけないと思います。【森のかけら】で世界に羽ばたくという夢はTPPが無くても出来ます(やります!)。
ワガリー・マータイさんの『モッタイナイ』で改めて気づかされた方も多いと思いますが、資源の少ない日本で限られた資源を無駄なく出来る限り大切に使おう当いう「モッタイナイ文化」こそは世界に誇れる日本人の智慧です。APECの事を書くつもりが横道に逸れました。しかし、自分の知識をひけらかし相手をどうでもこうでも論破しようとする高圧的な物言いは大嫌いですが、それぞれの人が自分なりの意見を言い合えるいい機会でもあります。正しい正しくないというより、日本人としての立ち位置が試されている選択だと思います。元寇や黒船来航、島国日本は時代時代で諸外国から大きな選択をせまられてきました。時にはそれが戦争に発展したり、国の在り方そのものを大きく左右もしてきました。タイムリミットは近づいています。遂に日本でも世論が国を動かす時がきたのかもしれません。この曇天の上に何が見えるのか・・・。
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