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桜の開花を決める基準木があるように、私にとってその場所に行くたびにその成長が気になる木があります。以前にもこのブログで何度も紹介させていただいた事のある、私の実家から家内の実家へ向かう道の脇にある『オニグルミ』がそれです。決して大きな木でもありませんし、そのあたりで特別な木だというわけでもありません。子供の頃から何度(数百回も)その傍らを通ってきたものの、その存在を意識するようになったのは、この仕事をするようになってからの事です。
そのクルミをいずれ伐採してどうにかしようとか思っているわけではなくて、立木の状態で季節ごとに違う姿を追うのが楽しいのです。山で伐採された原木を製材所で製材して、葉も実も皮も無くなった「木」を扱う流通業者としては、通常見る事のないものに憧れるのです。道路から数メートル下の所に生えているのですが、道路から少し手を伸ばすとちょうど枝の端に触れることがある位置にあるので、季節ごとのクルミの芽の様子が、文字通り手に取るように分かります。
胡桃といえば誰もが思い浮かべるクルミのは、堅い核に実を包まれた姿でしょう。木に付いたその姿を見たことのある人が少ないのは、目にしていたとしてもそれがあのクルミだと認識していないからでしょう。私もこの1本のクルミの木と出会ってから、材としてのクルミだけでなく、実や葉や花についても意識するようになりました。材に留まらず、その葉や実、花にまで物語や特徴の話しが及ぶと、一気に世界が広がっていきます。
こちらが4月上旬のオニグルミの芽の姿。今まさに葉を広げようとする少し窮屈そうな姿。春には春の、夏には夏の、それぞれの季節ごとの成長の証を見ていると、このクルミの木がとても愛おしく感じられてしまうのです。その場所は決してクルミにとって適した環境ではないでしょうが、そこで毎年一生懸命に命を繋いでいく姿を見ていると、『材』という視点とは別の感情が湧いてきます。材や食料となるわけでなくとも寡黙に生きるクルミの木。木の役割ってなんだろうと改めて考えるのです・・・。
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