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自分で書いていて、自分の言葉に膝を打つという事もあるのだと実感したのが、数日前にブログの最後に書いた『ガイコツの木』の事。反骨ジャーナリスト・宮武外骨の話の流れで何気なしに出た言葉でしたが、後から妙に気になって考えていると思いあたるものがありました。骸骨、髑髏(どくろ)とアメリカ映画に登場するイメージだと、鬱蒼とした森の中で枯れ枝を不気味に広げてひっそりと佇む老木といったところでしょうか。確かに遠目に見れば細い枝が、頭部をCTスキャンで撮影した毛細血管のように見えない事もない・・・。この画に老婆の笑い声でも重なれば雰囲気満点。
更にもっと骸骨に寄せて考えてみれば、アメリカはカリフォルニア州東部のインヨー国有林にある世界最長寿の木・ブリッスルコールパインの姿が思い浮かびます。標高4342m、土壌は痩せたドロマイト、ほとんど雨も降らず、強風に晒され乾燥が厳しいという、樹が育つにはあまりに過酷すぎる環境に世界一長寿の木が今も生き続けているという生命の神秘、いや自然界の大いなる皮肉。1957年に科学的な測定が行われた最大のものは、樹齢が4723歳と判明しているので、今だと4786歳。『メトセラ(メスーゼラ)』と名付けられた老木は今もそこに静かに佇んでいます。
既に枯死したようにも見えるメトセラですが、この環境で生きていくために無駄なエネルギーを極力使わないように幹の成長を止めて自らを枯らしながらも最低限の水分を供給するという事で命を長らえているそうですが、これほど長寿の木に対しては語る言葉も虚しくなるだけ。およそ5000年前といえば、メソポタミア文明が起こり、サハラが砂漠化したと言われる時代。考えればそんな木を骸骨に例えてしまったのは失礼な話でした。遠いアメリカの話ではなくもっと身近で思い当たる木がありました。文字通り、シャレコウベからその名前が付けられた、『シャレ松』。
全国的にはどういう風に呼ばれているのか分かりませんが、マツの中でもヤニがたっぷりと含まれて材中に行きわたった、俗に『肥松』と呼ばれるものの中でも、良質の高齢木に稀に現れる銘木中の銘木。白太部分は腐ってなくなってしまい、骨の髄にあたる中心部分(この辺りでは、リン〔燐〕とかジンと呼んでいます)だけが残ったモノ。あたかも木の骨だけが残ったように見える事から、『しゃれこうべのマツ=シャレ松』と呼ぶようになったと先輩の銘木屋さんたちから教わりましたが、口伝ですのでどこまで信憑性があるのか分かりませんが、確かに『体は名を表わしている』!
昔、今から20数年前は床の間に変木の床柱としてよく使ったりもしていて、当時はちょっと気味悪くもあったり、その価値もよく分かっていなかったのですが、自宅を建てる頃にはそういう風変わりな木にも興味が向くようになり始めていて、結構大きめのシャレ松を階段の上り口に意匠的に使いました。子どもが小さい頃は、よくこのシャレ松に抱きついて登ろうとしては表面の凹凸が痛いと騒いでいたものですが、今は誰も気に留めるでもなくそこに佇んでいます。強烈な個性があるのと、かなり和風の印象が強くなる事からその後ほとんど取り扱う事がなくなりましたが・・・
甲子園といえば今年で100周年を迎える高校野球。大正4年に旧制中学校の野球の全国大会が始まって今年で100年という事で「高校野球発祥100周年」のさまざまなイベントが企画されています。その一環として、制服女子が甲子園の大会歌「栄冠は君に輝く」を今風にアレンジして、制服女子たちがキャップをかぶって爽やかに踊る動画がネットに公開されていました。野球の動作も研究して振り付けも彼女たちが考えたというダンスと大会歌が相まったもうひとつの甲子園になんだか不意に目頭が熱くなってしまうのですがその一方で・・
私も自分が高校生になるまでは熱心に甲子園大会の熱戦に夢中になる高校野球ファンでしたが、野球以外の体育会系の部活に所属した一高校生の立場から、高校野球を見たときに、地域を巻き込んだ学校ぐるみの特別視に不条理極まりない違和感を覚えたものです。それは決して野球部部員に向けられたものではなく、高校生の一部活動というくくりを越えて特別に神聖化された「高校野球」という目に見えざる幻想に対して。まるで高校野球こそが健全にして嘘偽りの無い高校生の鑑のようであるかのごとき別格な扱い。
最近ではすっかりサッカーに押され、テレビの中継もほとんどなくなってしまったのも、野球に対する反対勢力の長期的な戦略のようにすら感じてしまうひねくれ者。私たちが子供の時代、多かれ少なかれキャッチボールをしない子供や、野球のルールを知らない男子なんてほとんどいませんでした。何しろ当時テレビで放送していたスポーツと言えば、野球かプロレス、大相撲(後の2つは純粋にスポーツとは言えないかもしれませんが)ぐらいしかありませんでしたので、知らず知らずのうちに野球好きに洗脳されるのも必定の理。
そんな風に子供のころから知らず知らずのうちに野球好きにさせられた日本人にとって、メディアによって商業的に過剰に演出された高校野球は「おらが地域の代表として誇り高く戦う郷土の代表」的なニュアンスも相まって、高校生の一部活動を遥かに超えた特別な存在に祭り上げられてしまったように感じます。白球を全力で追う高校球児の姿には感動を覚えるものの、もはや高校時代に違和感を覚えて以来、純粋な目で高校野球を観ることは出来なくなりました。『朝日新聞』が主催する夏の大会はなおさらの事、感動の押し付けには辟易してしまうのです。
※ https://www.youtube.com/watch?v=ysdGyW0zezY
もはやすっかり前の野球の試合の事を書くというのもなんだか野暮な話ではありますが、あまりに明石・大阪の行程が濃密過ぎてすっかりアップの時期を逃してしまい今になってしまいました。結論から言いますとご承知のように、阪神はメッセンジャーと横浜は井納との投げ合いで始まった試合は、福留のビデオの再現フィルムのような歓喜の2打席連続ホームラン、ゴメスのとどめの一撃などがあって3時間を越える熱戦を5対3というスコアで競り勝ち5連勝と甲子園球場8連勝となり、我ら材木屋虎党の溜飲を大いに下げたのでした。
かなりバックスクリーン近くの外野席で明夫君の呼びかけに集まっていただいた関西材木屋虎党の皆さんと一球一打に狂喜乱舞。ゲームの合間合間で、昨今の木の仕事の事やら互いの地域の情報やらを話しましたが、こういう雰囲気の中ですから深刻な話になろうはずもありません。昨今深刻な面持ちで語られる木材産業の未来像ですが、いっそこういう場所で話した方が前向きな気持ちになるのでは(当然阪神が快勝するという前提ですが・・・)。新商品のアイデアなども独りで悩んでいても煮詰まるばかり。木の話、仕事の話、真剣に話すのはいいのですが深刻になってはいけません。
ちょうど今年は阪神タイガースは球団創立80周年ということで、甲子園球場での試合では様々なサプライズインベントが用意されていて、当日はレジェンズデー第三弾という事で、平成のⅤ戦士の広げるとポスターになるプログラムのプレゼントがあって、それはそれで非常に嬉しかったものの、昭和からのファンとしてはレジェンドと言えば、大学1年生の時に居酒屋で観たバース・掛布・岡田のバックスクリーン3連発でも平成の日本一でもなく、小学生の頃白黒テレビで観ていた江夏と田淵の縦縞の雄姿。私の生まれた翌年、江夏は阪神に入団。
広島カープが球団創立26年目にして初優勝を遂げ、読売ジャイアンツが球団創立以来初の最下位に沈んだ1975年のストーブリーグで、江本孟紀、島野育夫、池内豊らとの複数の交換トレードで南海ホークスに放出され、虎党の涙を誘う事になります。なので私にとってはタイガースのレジェンドと言えば「江夏-田淵の黄金バッテリー」なのです。8月の後半のヤクルト3連戦では、その黄金バッテリーのプログラムとピンバッチが配布予定となっているので、本当はそちらの方が欲しかったのです。買えないものほど欲しくなるコレクターの哀しき本能。
これは世紀のトレードの翌年に購入したキーホルダー、かれこれ40年も前の宝物です。滅多に甲子園に行くことのできない地方の阪神ファンとしては、ついつい必要以上にグッズを購入してしまうのですが、木の商品を作る際に、いつも頭に浮かべるのは自分がついつい余計に買ってしまう阪神グッズの事。自分が特別なコレクターだけなのかもしれませんが、意味もなく無性に手元に置いておきたくなる気持ちに火をつけることが出来れば無敵。木のファンを増やしていく我々材木屋が目指す到達点こそが、負けても負けても無償の愛で応援し続ける阪神ファンの姿。
明夫君の作業場から少し移動して、ご自宅の傍らにあるもうひとつの材料置き場で材を物色。所狭しとクリを中心とした広葉樹がズラリと並べられてありました。もっと大きな倉庫があればと明夫君は言っておりましたが、地代の高い大阪の町の真ん中で、いつ売れるとも分からない回転率の悪い銘木を寝かせるなんて事は、一般の感覚からすると無謀なことのように思われるのでしょう。確かに今どきですから、自分の所にすべて構えてなくても業者間の横のつながりで、それなりに急ぎの材も確保できるもの。
ですが、それでも材木人としては、やはり自分の手元に材を置いておき、木目や色合い、質感、乾燥具合など自らの皮膚感覚で確認してお客さんにお伝えしたいと思うもの。なんでもかんでもすべてネットだけでは伝わらないのが、木という素材の特徴。それを不便だ、面倒だとネガティブに捉えられる方もいらっしゃいますが、それがあるからこそ木の様子を分かりやすい言語に変換して、一般の方にも噛み砕いてご説明できる小売りの材木屋の存在意義が生まれてくるのだと思うのです。
私は鳥谷選手(背番号1)に、明夫君は上本選手(背番号4)に着替え、今にも降り出しそうなどんよりした雲とにらめっこしながら、明夫君の車で一路甲子園球場へ!長期天気予報では雲~雨となっていて前日は雨で中止になりましたが、夜のうちにはすっかり雨も上がり、お陰で阪神はメッセンジャーがスライド登板。中止も覚悟の上でチケットを購入していて、最悪5回ぐらいまで持てばいいと思っていましたが、気持ちのいい風を浴びながらの最高の野球観戦日和となったのでした。
球場では連絡をとっておいた奈良県桜井市の泉谷木材商店の泉谷繁樹さん(中央)、兵庫県神戸市の西田木材の西田昇二君(右端)と合流。奇しくも愛媛・大阪・兵庫・奈良の4県の4人の材木屋が集まる事に。どういうわけか私の周辺の材木仲間には阪神ファンが多くて、仕事と趣味を絡ませ合いながら楽しませていただいています。関西圏の結びつきが強いので必然的にその傾向が強くなるのでしょうが、木であれ野球であれ共有できる「感性」があるというのは大切というところでプレーボール!
社歴が長いという事は伊達ではないという事を明夫君を見ていて感じます。100年も続く日本でも希少な名栗専門店の矜持というものが、話をしているときにちょいちょいと言葉の端々に現れます。ベンチャービジネスなどでどんなに大きな会社に急成長しようとも、社歴だけはどの会社にも平等で毎年1年ずつしか刻めません。材木屋はその仕事の性質からも、100年を超える企業も珍しくない長寿産業ではありますが、だからといっていつまでもかつて栄華を誇ったビジネススタイルが通用するほど甘い世界ではありません。
特に住宅着工数が劇的に減少した昨今、木材産業の危機が悲壮感を帯びて声高に叫ばれるようになりましたが、そんな事は日本が少子化を迎えたずっと前から分かり切っていたこと。家が建たなくなれば、それに伴って住宅部材の供給が減っていくのは当然の流れ。これからも消費税増税の反動のような多少のプチバブルはあるかもしれませんが、大きな視点で見れば住宅着工数は減少の一途でしょう。そういう環境で材木屋はどうやって生き残っていくか、特に我々のような零細業者には行政の庇護などあり得ません。
自分の道は自分で切り拓いていくしかないのです。それを後々ひとは先見の明があったとか、時流にうまく乗ったとか言いますが、当事者は今を生きていくのに必死でそんな高邁な理念は後付けの事が多いもの。自分が気に入った材を仕入れて、自分が信じるものを作り、気に入っていただける人に売る、言葉でいえばシンプルですが、決して後悔せずにひたすら一心不乱にやり続けられる道としてはこれしかないというのがこのスタイル。職種にこそ多少の違いはあれど、大きな意味で明夫君とは向うベクトルが同じだと感じています。
橘商店でも名栗加工だけにとどまらず現在は、木にまつわる様々な仕事に積極的に取り組まれています。本来卸売行である橘商店が、一般の方や木工作家さんに直接木を販売するとして昨年から始めた『広葉樹フェア』や、木青連の仲間などを中心に内外の材の仲介などを行っているのもそのひとつ。取り組みの規模や効果の大小ばかり考えている人はいちまでたっても机上の空論を繰り返すばかりで足を踏み出せません。踏み出す一歩は小さくとも、自分の仕事に誇りを持って日々を楽しんでいるような材木屋と仕事の出来る喜び、これ至福なり。
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