森のかけら | 大五木材


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長々と『クロガキ(黒柿』について書いてきましたが、【森のかけら】においては、プレミアム36の中の「日本代表」として送り込んでしまったので、このブログでも滅多に登場することがありません。材としてもかなりレアなのと、高級銘木にはあまり縁のない弊社としては、わずかしか在庫していないため、よっぽど倉庫の奥にまで侵入しようとするチャレンジャーでなければ、クロガキの板を目にすることもありません。端材までキッチリ使い切るので、『ちょこっと端材』コーナーに並ぶことすらもありません。

大きめの板が数枚あれば、その端っこで『かけら』ぐらいは十分カバーできるので、左の写真ぐらいのサイズがあれば5~6年は心配いりません。これは先日から書いているブログに登場する板の、三枚に割る前の姿で8年ぐらい前に撮ったものです。クロガキの大きさが分かるように、板の横に座って写真に写ってくれないと頼んだら、喜んで手伝いしてくれた娘(次女)ももう高校二年生。今ではモデルなんてとんでもない話。三人の子供たちの誰がモデルになる~ともめていた頃が懐かしい・・・そんな頃からこのクロガキも弊社にあったということか。

『カキのかけら』の場合は、かけらサイズに加工して、植物性オイルを塗って完全に仕上げてから黒味がよく表れているものを『クロガキ』として分類しています。右の写真はまだ塗装前なので、黒味をぼんやりととぼけた色合いですが塗ると下の写真のように黒味がグッと濃くなって見た目も引き締まって見えるようになります。最近は近所からもカキの木を分けていただく機会も増えてはきたのですが、なにせ虫に喰われやすく、加工してみても『かけら』としてすら使える部分もわずかという事になってしまいます。

さすがに虫もタンニンは美味しくないのか、黒味が喰われている事は少ないのですが、折角カキの丸太をいただいても、伐り時が悪いとあっという間に虫の餌食。今回は寒伐りしていたのと、保管状況が良かったようで、かなりの数のカキが揃いました。この中から一部は『クロガキ』としてプレミアムチームに選抜。ちなみに隣に写っているのは『スモモ(李)』です。どちらともこの周辺の農家の方の庭に生えていたものを分けていただきました。狙ったわけではないものの、柿と李のフルーツウッド並びでした!(※ビーバー雑木隊解釈ではカキもフルーツウッドです)




昨日からご紹介しているクロガキを加工してもらったのは、いつものZEN FURNITURE』の善家雅智君。彼の工場からクロガキの板を運ぶ際に思いがけない組み合わせが実現。弊社の3トン車の荷台の上に並んでいるのは、クロガキ(右)とクリ(左)。クリは函館産のクリの一枚板をフローリングに加工したもの。こちらは木工所で加工されたもので、この後弊社で検品して長さをカットして整えます。それぞれ別のお客様さからの注文だったのですが、この組み合わせに注目!これも「チーム・フルーツウッド」!

一体何を興奮しているのかというと、クリとカキ。フルーツウッドなどキワモノ木材を扱う弊社とて、【森のかけら】以外で同じタイミングでこういう組み合わせの仕事が入るのは珍しいのです。そう、ここにあといくつかの木が揃えば、日本人なら誰もが知っているあの昔語の登場人物(キャラクター)が揃うのです。後のメンバーは、『モンキーポッド』。カキ、クリ、サルといえば、もうそれだけでもピンとくると思います。そう、『サルカニ合戦』です!

今更ストーリーを説明するまでもありませんが、話によっては登場人物(キャラクター)が省略されている事もあるので、整理しておきます。主役はサル(モンキーポッドカニ。事件が起こるのがカキの木()。親ガニを殺したサルを懲らしめるのが、石臼、牛の糞、蜂、畳針、クリ(栗)。とりあえあずカキ、クリ、サルだけでも何となくサルカ二合戦はイメージできるとは思いますが、ここは強引な力技で『森の5かけら』を作り出す「かけら職人」のメンツにかけて後もどうにか木に例えたい!

どうにか木と関連付けてみると、まず牛の糞は、バッコウヤナギ。文字通り、ベコ(牛)が好んで食むヤナギがその由来。石臼は、石つながりで「イシゲヤキ」の別名を持つ『ニレ』。畳針は、針つながりで「ハリエンジュ」。かなり苦しいですが・・・。問題はカニとハチ。蟹という言葉で木材でイメージするものといえば、蟹の甲羅のように見える蟹杢。その蟹杢が現れるのがツガ。弊社の在庫で蟹杢があるのは『キリシマツガ』、最後のハチですが、これがどうあがいても繋がりないので誕生木(8月)でケヤキ。かなり苦しいこじつけではありますがこれにて『サルカニ合戦の8かけら』完成!




パンフレットにあるように作業効率は圧倒的によくて、仕上げについても馴れれさえすればスムーズ。変形した虫穴にうまく充填出来るようにさえなれば、かなり役立つと実感しました。色もパインからブラック・ウォールナットや黒まで20種類近くバリエーションがあるのも心強いです。特に今回は相手がクロガキだったという事もあり、木粉ではいかに同じ木を削って採集した木粉を使ったとしても、墨汁のような漆黒の黒色を作り出すことが出来ずに、その部分だけ妙に浮いた仕上がりになってしまいます。

その点ではクロガキの自然の漆黒に負けない「黒点」で埋めることが出来ました。角欠けにも有効でしたが、硬化後にサンダーをかける際、ベルトサンダーを使うと回転の摩擦熱で再び軟化したりと、まあこういうものは実戦をこなして体で感覚を覚えることが大事。それでもこのリペアスティックのお陰で想像よりはるかに早く仕上がることが出来ました。裾広がりの形状だったのも幸いして、シンメトリーのクロガキというかなりレアなカウンターが仕上がりました。

後から現場でL型のカウンターと繋いで完成ですが、現場が新居浜市という事もあって完成後の写真は取り損ねましたが、普通見ることのない個性的なカウンターとなってお客様にも喜んでいただけました。同時期に仕入れたクロガキがあと数枚残っていますが、これだけ全身に黒味が現れて、柄が整ったものはありません。以前は関東の木工所などからも何度かお問い合わせをいただいて画像を送ったりしたものの、やはりこういうものは実物をご自分の目でご覧いただかないと不安。

特に高齢木や老木になると、部分的に脆くなっているところあったりして、それがその人にとっての許容なのかどうなのか、また虫穴や染み、傷、割れ、節など、言葉や写真ではどうしても伝わらないことがあって、後から互いが嫌な思いをしないですむように、そういう材については極力ご来店いただき実物を見て、触っていただくようにしています。カワリモノを扱う店にとって、必要なのはカワリモノを面白いと愛でてくれる変わり者の客。カワリモノ(木も店も)は変わり者に愛される!




このクロガキを加工する際の問題は無数に開いた虫穴。当然もう虫はとっくにいないくなっているのですが、大小さまざまな穴をどう処理するかという事。これがクロガキでなくて、ここまで虫穴の数が無ければ、色目を考えて木粉などで処理するのですが、虫穴が漆黒の黒味の中に点在しているので、これをうまく処理しないと折角の墨流しの図柄が生きてきません。またキッチンで使うという事で耐水性にも注意しなければならなりません。それで今回選んだのが、デンマーク製のリペアスティック

長さ30㎜、直径12㎜の円柱状になっていて、専用の伝熱ガンに差し込んで押し出しながら熱を加えるとそれが溶解して、節や割れ、虫穴などに注入出来ます。直後にクリーニングアイロンや鉄などを押し当て冷却させると一瞬で硬化します。硬化したらカッターなどで余剰部分を切り落とします。最後はサンダーで表面を滑らかに整えたら完成です。いつもはストックしてあるいろいろな木粉の中から色を選んで、瞬間接着剤でかためて節や虫穴を補修していくのですが、接着剤が浸透していくので面がゾロになるまで何度も同じ作業を繰り返さなければなりません。

それで固まっても経年変化で補修部分が痩せていくこともあったりして後で手直ししたりする必要もあったりしたのですが、解説文によれば、リペアスティックは硬化後の収縮がなく、木材に追従して変形することもありません。更に硬化後にその上からオイル塗装やサンダー掛けも可能だし、耐水性もあり、紫外線による変質もなし。VOCや毒性もゼロで、安全性も高く作業効率の高い補修材という事。パンフレットを見て以前から関心はあったものの使った事はありませんでした。

やはり慣れた方法の方が間違いが無いという臆病さから手を出していなかったのですが、今回は虫穴の数が圧倒的に多くて耐水性や作業効率も求められるという状況でしたので、思い切って使ってみることにしました。確かに溶解して注入して鉄を当てると一瞬で硬化して固まります。強力な瞬間接着剤が指先に付着して皮膚が剥けるようなこともありませんが、馴れるには少し経験が必要。虫穴が多かったお陰で作業が終わるころにはすっかり慣れて、随分早く出来るようになりました。そして完成した姿がこちら!更に明日に続く・・・




数え切れないほどの大小さまざまな虫穴の開いたクロガキを見ていて私の脳内では、クロガキが生まれてきてメカニズムが浮かび上がりました。あくまでも私の勝手な脳内妄想ですが、あるところに大きな一本の大きなカキノキがありました。そのカキノキはもともとクロガキではありませんでした。しかし長年の風雪に耐えたクロガキの樹皮は剥がれボロボロになっていました。その部分から虫が入ってきて卵を産み付けました。やがて卵は孵化して幼虫たちは甘いバリバリとクロガキを喰っていきます。

このままでは危ないと身の危険を感じたカキノキは非常事態宣言を発動!枝折れしたところから体内に侵入してきた水分を利用して、自らのタンニンと融合させて秘密兵器『スミナガシ』を生成。体を蝕む虫たちに向かってスミナガシガがジワリジワリと向かっていきます。紆余曲折を経て虫穴にたどり着いたスミナガシはその中に含まれている毒素(あくまでも私の脳内妄想)を使って、次々と虫たちを撃破!虫がすべていなくなった頃には全身にすっかり墨が回って立派なクロガキに変身したのです!(繰り返しますが脳内妄想

そうやって数々の虫穴のあいたクロガキが出来たのだと勝手に納得しているのです。だからこそ虫との激しい戦いを勝ち抜いたこの木に敬意を払い、それに相応しい舞台で輝いていただきたいのです。ならばその名誉の傷を隠すことなく、受け入れていただける人と出会ってもらうことが肝心。その出会いを待つこと10数年。遂にそんな出会いがありました。虫に喰われたその痛々しい傷以上に、心を惹きつけてやまない墨流しの妖しくて美しすぎる自然の造形美の極致!

そのまま一枚で使うには狭いサイズでしたが、三枚におろしたことで木目が左右対称になるシンメトリーで使うことが可能になりました。それでも足りない幅を補うために中央にクロガキに負けないような濃茶のブラック・ウォールナットを挟みました。この長手方向に幅剥ぎしたブラック・ウォールナットの短めの板がL型に繋がって、大きなキッチンカウンターとなります。バランスも完璧で、寛容なお客様が全面的に受け入れていただき、己の身を虫に与えたクロガキは遂に日の目を浴びることになったのです。続く・・・




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