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★今日のかけら・#165 【スプルース】 Spruce マツ科トウヒ属・針葉樹・北米産
私がこの仕事に就いた頃、どういう理由だったのかよく分かりませんでしたが、弊社からよくスプルースの材を建築現場や大工さんの作業場に運んでいました。当時は、周辺の製材環境の事や、流通の事も理解出来ずに、ただ言われるがまま(注文のあるがままに)材を右左に動かしていただけなので、特別弊社がスプルースに力を入れていたというわけでもなかったのですが、たまたまスプルースの需要が重なったりしただけで、その印象が強かっただけなのかもしれません。
なにしろそれまでは取り扱う材といったら、ヒノキかスギか米松(ダグラスファー)か米栂(ウエスタンヘムロック)、たまに米ヒバ(イエローシーダー)というぐらいメジャーな汎用材に偏っていて、このままだったら何十年材木屋をしても取り扱い樹種が10種類を越えることも無いのではなかろうかと呆然とした不安を抱いていた時期だったので、(当時の私としては)変わった名前の木を扱うのが無邪気に嬉しかったので、強い印象として残っているのかもしれません。
運んでいたのは、別注で挽いてもらったスプルースの造作材で、当時(今から25年前頃)はまだ『乾燥材』という強い概念が無くて、原木から挽いた直後の生材でもOKという時代でしたので(結局、大工さんが早めに注文して自分のところの作業場や現場で乾かして、頃合いを見計らって使っていたのです)、材を持つとまだしっとりしていて、掌が湿っぽくなったのを覚えています。スプルースって軽軟な木ですが、生材だと輪をかけて軟らかくて取り扱いにも注意が必要。
そんな事すらも知らずに現場に届けた際に、脚立か何かにもたらせかけて置いたら、「そんな置き方したらすぐに凹んでしまうだろうが~!」と大工さんに怒られた事も覚えています。私が入社したのと入れ替えで、それまで仕事を回していた専務や営業の方が辞めて別会社を作られたので、木の事を教えてくれる人がいなくて、ほとんどの事は現場で棟梁や監督さんからそれはそれは優しく(!)教えていただき、頭に体に叩きこまれました。スプルースを見るといつもその事を思い出します。
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