森のかけら | 大五木材


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ニッケイについてはどうしてもその葉や樹皮にばかり注目が集まり、材そのものについては顧みられることが少ないように感じます。用途としては、器具材や家具材、造作材、彫刻材、薪炭材などに利用されているそうですが、葉や樹皮に対していまひとつ特徴的な出口が定まっていないようです。今回伐採したニッケイの木肌は淡いクリーム色でしたが、これから乾燥工程を経てかなり色調が変わっていくのだと思います。在庫のニッケイは、ミズメザクラのような淡い紅褐色です。

ニッケイの材そのものの在庫をわずかしか持っていないので、実際に使用実績も少なく、どういう用途が適しているのかもよく分からないのですが、気乾比重が0.70ということなので、そこそこの重量感もありますし、触感も滑らかです。それでも材が市場に出回らないのは、樹皮や葉の採集を目的として植えられていることもあり、なかなか伐採しないからでしょうか。初めてニッケイ材を手に入れて以後まったくご縁がないので、在庫の板は『非売』扱いにしようかな・・・

そんな事を考えだしたらもはや商売人としては失格なのですが、こういう事がきっかけになってまたご縁が巡ってくることを期待しつつ。ところでそのニッケイ、材としては今一つ認知度が無くとも、樹皮や根などから作られるものは昔から大人気。地域によってニッキと言ったり、ニッケと言ったりするようですが、私たちは子どもの頃からニッキと言っていました。関西ではニッキ、関東ではニッケと呼ぶことも多いようですが、いずれもニッケイから転じたものだと思われます。

ニッキを使ったものとしては、前述した八つ橋をはじめ、ニッキ水やらニッキ飴、ニッキ茶、ニッキ酒などがあります。お隣の高知でニッケイの栽培が行われているようで、ニッキを使った商品が数多く作られていますが、前に木材を仕入れに岐阜に行った時にも、売店などでニッキ飴が売られていましたので、岐阜でもニッケイの栽培が盛んなのでしょうか。無邪気にニッキの根を齧っていたのはもう40年近く前のこと。今ではニッキの根を齧る子供はいないのかもいれません。




私が小学生の頃は、ニッケイの根っこをよく噛んでいたものです。私たちのところでは、『ニッケ』と呼んでいましたが、何とも言えない清涼感のある味が好きでした。でも自分でニッケイの根っこを採った記憶はありませんので、いつも誰かにもらっていたのだと思うのですがよく思い出せません。当時は、木の事などに一切興味もありませんでしたが、専門的な知識などなくとも、あれがトリモチの採れる木、これがニッケの採れる木、などと妙に詳しい友達がいたものです。

料理にスパイスに用いられるシナモンは、ニッケイはニッケイでも外国産の『セイロンニッケイ』という同じクスノキ科の別類のもので、日本のニッケイにはそこまでの香ばしさはありません。セイロンニッケイの樹皮を剥がして、内側のコルク層の部分を薄く削って乾燥させると、皮が丸まりスティック状になるそうです。また、京都の八つ橋などに含まれるニッキ油も、『シナニッケイ』という別種の根から作られるそうで、用途によって細かく樹の使い分けがされているようです。

しかしそれも最近では、シシャモと呼ばれて流通しているもののほとんどが、カラフトシシャモこと「カペリン」であって、その味にも舌がすっかり馴れてしまい、本家の味の混乱が生じているようにニッケイの世界でも混乱があるようです。本来はセイロンニッケイにしか含まれていないオイゲノールという成分があるため、よりマイルドな香りが得られるセイロンニッケイがシナモンの原料であったはずなのに、最近日本で販売されているものにはシナニッケイで作られたものもあるとか。

安さや供給の安定ばかりを望んでいると、自分たちがそうだと思って使っているものが実は全然違うものであったということは少なくないと思います。もともと供給が細いものが、ある日突然廉価で市場に大量に出回るようになったら、その正体を怪しまねばなりません。特に自然素材の場合は。徐々に慣らされてしまえば、五感の記憶もあやふやになってしまうもの。食べ物の分野については『本物』に出会えることがこれからドンドン難しくなってくるよう感じて不安です。




それこそ今まさに伐ったばかりの木というものは、水分をたっぷり含んで生々しいのでその樹皮も簡単に剥くことができます。外皮がついたまま乾かしておくと、虫にやられる危険があるためなるべく早い段階で剥くのですが、今回の『ニッケイ』については、それだけではない理由で早く皮を剥いておきたい理由がありました。うちの倉庫には『ニッケイ』の耳付き板が幾つかあって、お客さんが材を来られた時に、文字通り五感で木を味わってもらう時に活躍しています。

名前は伏せておいて、ニッケイの樹皮を少し取って手渡し、匂いをかいでもらいます。木に詳しくない方でも、ほとんどの方が「どこかで嗅いだことのある匂い」と言って、『シナモン』あるいは『ニッケイ』(あるいは、ニッケ)の名前を挙げられます。それまで高級銘木とか、大きな一枚板みたいなものに気後れして遠くに感じられていて木の世界が、途端に身近に感じていただくきっかけになるので、とても重宝しています。やはり木は、いろいろな感覚で味会わなければなりません。

そのニッケイの板は、長さが2m、幅が300㎜前後の小幅なものですが、それでもニッケイの木としたら相当な大物だと思います。ご存じの方も多いとは思いますが、ニッケイの木が匂うのは樹皮の裏部分のみで、材そのものには匂いはありません。なので、お客さんが来られるたびに、そのニッケイの樹皮を取る(実際には、皮も乾いて硬くなっているのでパキンと小さく折るようにして取ります)のですが、あまりに樹皮を取り過ぎて、そろそろ丸裸になりつつありました。

そのニッケイとて、いつまでも匂いを楽しむためだけに倉庫にあっても仕方がないので、いずれ巣立っていくことになるので(これがなかなか巣立たないので、ありがたいような困ったような・・・)、代わりのニッケイを探さねばならないと思っていたのですが、木材市場に行ってもニッケイなんて見かける事はありません。伐採したとしても、かなり早い段階でその筋の関係者に回っていくのでしょう。樹皮は生薬にもなるそうなので、材そのものよりも皮や根が金になるのでしょう。




今日のかけら・#084 【肉桂/ニッケイ】クスノキ科ニッケイ属・広葉樹・宮崎産

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近所の方から、庭の木を伐るけど要りませんか?のお電話がありました。町内の方々には、機会あるごとに『変わった庭木』や実のなる木(この辺りは宮内ミカンの産地ですのでミカンをはじめ、モモ、ウメなど植えてる方が多いのです)を伐採する時にはお声をかけて下さいとお願いしているので、ときどきこういうお電話をいただきます。それで今回伐られる木というのが、『ニッケイ(肉桂』の木。なんと、こんな身近でニッケイの木が得られるとは考えてもいませんでした

やはりアンテナは立てておくものです。今回伐られるニッケイは、数十年昔に庭に植えたニッケイですが、根元から伐るのではなく、塀を越えて伸びた枝部分なので、それほど大きなものではありません。しかも湿度の多い場所だったようで、多少腐りもありますが、『骨までしゃぶって使い切る』を身上としている材木屋としては、そんな事は気にしません。何に使うんですか?と質問されますが、いちいち事前に完全な『出口』が見えているわけではありません。とりあえず、手に入れる!

どう使うかは後で考えればいい事。持っておけばアイデアも湧いてこようというもの。どうせ自然乾燥させるわけですから、伐るのは枝だけとはいえ、かなり枝葉が伸びていたので、伐った枝葉だけでも軽トラック1車分ぐらいはありました。その中からめぼしい大きさのものだけいただきました。以前は葉っぱも全部落として持ち帰っていましたが、こういう場合はその木が何の木であるかの確認作業を自分でせねばなりませんので、必ず大切に持ち帰るようにしております。

確認作業といっても、数冊の木材図鑑を引っ張り出して、葉の特徴を照合するわけですが、葉っぱも見慣れてないと微妙は特徴の違いが分かりにくいものです。似たような葉が2枚並んでいれば、その差は分かりやすいのですが、単独の1枚見るだけでは、書いてある特徴がどれもあるような、ないような・・・。答えを探し求める木に限って判断がつきにくいもの。今回のニッケイは葉の特徴が分かりやすく、ヤブニッケイとの区別ぐらいでいけるので助かります。この話、明日に続きます。




20140916 1 1981年、中国で日本製のアニメ『鉄腕アトム』が放送され、子どもたちの間で大人気となりました。その人気を見込んで単行本が作られたのですが、当時中国はWTO(世界貿易機構)にも加盟しておらず、著作権を完全に無視したパクリ作品であったのです。当時は政府にも人民にも著作権という意識が希薄でしたので、中国との文化交流に熱心な手塚治虫先生に律儀にも見本として本を贈ってきたのです。それを見た手塚先生は当然激怒!ただし著作権にではなく絵の酷さに対して!!

 

20140916 2なんと、あまりの絵の拙さに激怒した手塚先生は、頼まれてもいないのにパクリ作品の描き直しをするのです。当然、著作権の認識がないので、タダ働きという事になります。驚くスタッフに神様は言います、「なに言ってんですか。お金の話じゃないんです。おもしろくないんですよ、こんな絵じゃ!!ちゃんとした絵で中国の人にも楽しんでもらわないと!!」修正した原稿を中国に送り届け、次作からはその原稿が使われました。原稿料の印税も1円も入らない仕事です。

 

20140916 3嗚呼、これが手塚治虫という人なんだと・・・(「ブラックジャック創作秘話Vol.3」より)。仕事に向かう痛いほどの真剣さ!さすが神様、これぞ神様!一体何を言いたかったのかというと、『最強銘木チーク〔序章〕』で触れたのですが、私がチークについて以前書いた拙文が無断で全面そのまま転用されていました。それについて、私が感じたのは怒りではなく、むしろ癖のある私の文章をよくぞ普通の会社がチークの解説に選ばれたなあという『感心』だったですが・・・。

 

20140916 410年ぐらい前の原稿なので、まだまだとんがり方も中途半端で毒っ気もなく、簡単に使われてしまうぐらいの『我』の薄~い文章だったと思うのです。「これぞ偏屈材木屋の書く文章、誰もこんな癖のある文章コぺピせんわ~」と呆れられるあたりが目的地。そうでなければ偏屈材木屋の看板が泣くというもの。文章だけでなく、木の面白さを伝える語りにおいても、ある意味『誰も真似の出来ない(したいとも思わない!)境地』を目指すことこそが私の使命、本懐と心得ております。




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