森のかけら | 大五木材


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道後の『ふなや』さんの日本庭園・詠風亭に設けられた足湯の座面に使っていただいたのは、中南米産の『セドロ』です。観光客を乗せた大型バスやら地元の車が頻繁に行き交う通りから一歩足を踏み入れると、そこは清流流れる閑静な和の空間が広がっています。そこに佇む足湯屋を施工されたのは、もう4、5年ほど前になると思います。当初、円形の足湯の座板という事で頭を悩ましました。直径が2mぐらいありましたので、当然の事ながら1枚ものの板を削りだすという事は不可能だし、2枚や3枚で剥ぐにもロスが大きすぎます。そこで製作をお願いしたウッドワークかずと池内君と相談して考えたのが、円全体を8つのパーツに分けて、それぞれを裏側からボルトで連結する方法。これだと木目の木取り次第では、つながった円のような雰囲気を損なわないように仕上げる事が出来ます。

ただ問題も幾つかあります。これでも結構なカットロスが出る中で、木目が連続している雰囲気を演出するためにはかなりの大きさも板が何枚も必要になります。しかもなるべく木柄の似た乾燥した木。また、温泉の足湯の座板という事ですから、お湯が散ったり熱を帯びるのではという心配。材となった木にとって、湿気は腐食の最大の要因です。こういう場合、必ず「水に強い木を」という要望が出たりするものですが、それも在庫やサイズ、価格との兼ね合いになります。

何にでも完璧に対応できる材がいつでもどこにも揃っている訳ではありません。手持ちの乾燥した材の中から、いろいろな条件を鑑みて(材特性、サイズ、加工性、価格・・・)、その中でベストの選択をしていくという事になります。幸いにも設計・施工をされたのが、商業店舗などをたくさん手掛けられた百戦錬磨の須賀デザイン工房久須賀佳夫さんだったので、そのあたりの理解は深く、ご提案を受け入れていただきました。湿気対策もご検討いただき、いざ「セドロ」での出番と相成りました。セドロについての詳しい説明は、以前にブログや『適材適所』でも取り上げさせていただきましたが(NO.120)、板目の雰囲気は欅に似ていて、柾目の雰囲気はマホガニーに似ているという、剛と柔の質感を併せ持ったような不思議な材です。生地のままだと分かりづらいのですが、塗装する事でその特徴が際立ってきます。

足湯は屋根があり直射日光は遮られているものの、久し振りに訪れてみると、施工時よりはやや色合いが淡くなっていました。でもそうなってむしろ、遠い外国から来たセドロが閑静な日本庭園の中にすっかり溶け込んでいました。寛容性も伝統を継承する重要な要素だと思います。セドロはセンダン科ですので防虫性も高く、腐朽にも強い性質があります。加えて設計や加工、塗装を工夫することで、こういう場面でも使う事が出来ました。地元に根付いた建物に地元の木を、という考え方にまったく異を唱えるものではありませんが、そこに固執しすぎると、木本来の特性をうまく引き出せない場合もあります。地域を優先するか、特性を優先するか?いろいろ考えはあるでしょう。それも含めてこういう場面ではどの木を使おうか、ワクワクした気持ちであれこれ思いを巡らし、材をセレクトする時の快感はおそらく誰にも分かってはいただけないでしょうが、私はそこに材木屋の醍醐味を感じます。

 




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