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周遊船で鹿島をぐるりと回るのも10数分。中央が盛り上がったお茶碗をひっくり返したような島は、漫画に出てくるような造形です。海から眺めると、島をぐるりと巡る周遊道路の姿が見えたのですが、上陸してみると土砂の堆積及び崩落の危険があるため、島を一周する遊歩道は通行止めとなっていました。山の斜面を見上げると岩肌がむき出しになり、いまにも落石や崩落が起こりそうな様相。長年、潮風に晒され波に侵食され奇岩や不思議な造詣を生み出した代償はあまりにも大きかったようです。
我々の上陸を迎えてくれたのは、鹿島の名前の由来ともなった野生の鹿たち。県の天然記念物にも指定されている御鹿様は、すっかり人馴れしていてグイグイと近寄って来て、あまりの威圧感に子供たちはすっかり引き気味。説明書きによると、落石による鹿の事故防止と樹木の保護目的から、保護柵内でも飼育されているそうですが、普通にそのあたりでいくらでも鹿に出会えます。もともとは北条の山から海を渡ってきて天敵のいないこの地で繁殖したのでしょう。現在60~80頭の野生の鹿がいるとか。
御鹿様観察もそこそこに我々は山頂の展望台を目指して、標高114mの山道を意気揚々と登り始めたのですが、目に飛び込んできたのは、無残にも根元の樹皮をすっかり食われて痛々しい姿にされてしまった木々の数々。それを保護するために木に巻きつけられている金網が切なく映ります。野生の鹿という事ですから、鹿の方が島の先住民でしょう。彼らにとっては命をつないできた貴重な命の糧であったのかもしれません。人が入るまで島の食物連鎖の頂点には鹿が君臨していたのでしょうか。
天敵がいなくなると自然界のバランスは急速な勢いで崩れ去ります。日本に限らず、世界中で鹿の食害は大きな問題となっています。以前に『適材適所』で触れさせていただいた事もあるのですが、アメリカのイエローストーン国立公園では、シカによる食害の解決策としてオオカミの群れを森に放ち、見事に成果を得ています。更に食料となる種動物達の個体数まで制御できる能力のあるオオカミのお陰で、生物多様性が回復してきたとも。素晴らしいオオカミの能力!
このイエローストーン国立公園の壮大な実験を受けて、是非日本の森にもオオカミを放そうというプロジェクトが進行しています。それがこの快著『日本の森にオオカミの群れを放て』(著者/吉家世洋 監修/丸山直樹[東京農工大教授)。初めてこの本を読んだ時には、まさしく目から鱗が落ちる思いでした。話が大きく脱線しそうなので、その話については日を改めてじっくりと書かせていただきます。鹿島のような小さな島ではオオカミを放てませんが、食害はかなり深刻な様子でした。明日へ続く・・・
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