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滑る靴に苦しみながらもどうにか山頂に到着。何度も何度も立ち止まり木々の姿を撮影したりしていたので、山頂までの所用時間は約20分ほど。そのご褒美は かくも絶景の眺望!遥か左手奥に見えるのが旧北条市街です。 汗をかかねば手に入らないものはあります。ワンクリックでは得られないものを残りの人生でどれだけ得られるか、競技としてではなく「訪ねられる体力」を養っておく事を痛感させられます。この場所から春夏秋冬の景色を眺めてみたい、そんな事を強く思いました。
山頂付近に近づくと強い浜風の影響でしょうか、奇形木の姿もちらほろ目に映ります。どれぐらいの種が原生のもので、どれぐらいの種が持ち込まれ、どれぐらい整備されたのかは分かりませんが、かつては山頂に鹿島城と呼ばれた城が建てられていました。その築城主は定かではないようですが歴史は古く、671年海上防衛の要として築城されたとも、建武年間になって完成したと言われています。河野氏が伊予を治めていた当時は、島全体が河野水軍の重要な海上拠点だったそうです。
山頂付近にはその名残の石垣とおぼしめきものが生い茂った木々の間に見えていました。穏やかな海と絶景、野生の鹿が往来し、寄せては帰す波の音と鳥の鳴き声ぐらいしか聞こえない静かな島も、かつては戦場となっていたのでしょう。島の沖にある『伊予二見』と呼ばれる島には大注連縄が張られていましたが、それも1185年、この地を支配していた河野氏が屋島の戦いに参戦するに当たり、必勝を祈願し勝利を手にした武勇を知らしめた事が由来とされているとか。また、豊臣秀吉の四国攻めに先だっては、小早川隆景が鹿島城を調べさせた文献も残っており、その後の関が原の戦いで豊臣方に加勢した事から城主は転封、城は廃城となってしまいました。小さな島は権力争いの歴史の中で翻弄され、この地にも多くの血が流されたことでしょう。今の静けさからは想像も出来ませんが・・・。
人間の醜い争いの残骸ではありませんが、小さな島には風光明媚な自然の美しさとともにその厳しさを伝える「なきがら」も共存しています。もがき苦しむような姿で山道の眼下に佇むのは、文字通り根こそぎ大地からもぎとられた倒木。恐らく崩落によって地盤ごと滑り落ちたのでしょう。勾配の強い傾斜地に育つ木々たちは、いずれも屈曲したり曲がりくねっています。こういう場所で育つ木の根元部分には強い負荷がかかり、俗に『アテ』と呼ばれる特徴が現れます。
太陽に向かって成長しようとする木が、傾斜地の中で垂直を保とうとすることから根元が強く湾曲して負荷がかかり、その部分には強い『癖』が残ってしまいます。その部分はいくらまっすぐに製材しても、その後反りねじれ通常では商品価値があるものにはなりません。一般的には『欠点』とされるもので、その症状のあるものを『アテ』と呼ぶのですが、いわば命の格闘があった神聖な部分でもあります。使い方によっては通常より遥かに強い生命力を発揮するのですが、詳しくは項を改めて。
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