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その「勇魚(いさな)とり」についてですが、何艘もの船で鯨を追い込んでとどめを刺すという「網掛突き取漁」に使われた道具が展示してありました。昔の事ですから当然その多くに木が使われています。その素材についてまでの詳しい解説は見つけれなかったのですが、展示してあった道具を見る限りは『樫(カシ)』だったように思います。海での漁で海水に浸かる道具ですから、水にも強くなかればなりませんし、あの巨躯に刺して引っ張るわけですか強靭さも求められます。
バスで島を走っていても稜線がなだらかでこんもりとした山々を形成するのはハマセンダンやモッコク、シイ、クスノキ、タブノキ、ツバキなどの照葉樹の数々。海岸線を走ると太古の原生林の趣き。人家も無い岩場などは当然手が入っていないので天然更新を重ね独特の森林体系を築いたものと思われます。ちなみに平戸市の市木は『マキ』でしたが、長崎県内の有名な名木一覧のリストには、愛媛では聞きなれないような名前がズラリと並んでいます。
あの有名な『ヒラドツツジ』もここ平戸が原産だそうで、今では大輪種の総称にまでなっています。こういう時に頭をよぎるのは、【森のかけら】の事。目の前に映るバラエティ豊かな照葉樹林を見ていると、嗚呼この地で作れば【森のかけら・日本140】ぐらいはいけたのではないかと・・・大自然を前に不遜な事を考えてしまいます。ハマセンダンやモッコクなど『今日のかけら』で取り上げる画像収集のチャンスだったのですが、さすがにバスを止めるわけにもいかず断念。
さて話を捕鯨に戻しますが、勇魚とりに使ったと思われる『樫(カシ)』ですが、これだけ広葉樹の豊富な場所ですから当時からかなり潤沢に採取出来たのでしょう。まずは鯨ありきの漁でしょうが、もし粘りがあって強靭さを誇るカシの木がなかったとしたら勇魚とりの漁法そのものも変わっていたのかもしれません。鯨を追い詰める何艘もの木造船には逞しい男たちが乗り込んでいます。捕鯨に限らず、かつて我々ご先祖様の暮らしの根底は『森のめぐみ』と『海のめぐみ』が支えてきました。
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