森のかけら | 大五木材


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「どじょうすくい」の夜は粛々と更けて、翌日は早朝5時から朝風呂に浸り、来た時から気になっていたホテル前の桜並木を散策。ちょうど宿泊した日が満開だったようで、美しい桜並木がホテル前の川に沿って延々と続いておりました。昨晩したたかにお酒を飲まれた皆さんはまだ深い眠りの床でしょうか、ほとんど人通りも無い川辺の道をのんびりと独りで散策。旅行にでも来ないとこんな贅沢な時間は得られません。このあたりは温泉街が軒を連ね、この桜並木が玉造温泉の名物だそうです。

職業柄、花よりも幹(材)の方が気になるのですが、さすがにこれだけ美しい満開の桜の見ると圧巻です。随分立派な桜並木ですが、幹の方を見渡せば大きなものでもせいぜい1尺(約303㎜)あるなしの大きさ。しかもそれが曲がりくねりのた打ち回っていて、とても用材として使えるものではありません。自然界はよくで来たもので、もしこれで幹が通直であったなら、桜はその花を愛でる事無くサッサと用材として伐られていたことでしょう。その美しさを愛でてもらうために我が身をくねらせたとしか思えません。

我々が建築材や家具で使う『ヤマザクラ』とは別物ですが、その妖しげではかない桜の姿を見ていると、その端材といえどもとても粗末に扱う気にはなれません。最近何かとサクラの問い合わせが多いのですが、用材として使えるサクラの入手はますます困難を極めています。弊社のように極めて少量をモッタイナイ、モッタイナイと念仏を唱えながら売るような零細材木屋にとってすらもその影響はありますので、サクラで大量に商品を生産する企業にとっては死活問題でしょう。

サクラに限らず多くの樹種がこの数年で供給困難な状況に陥るのは確実で、根本的な樹種変換、あるいはそれが適わなければ木材以外の素材そのものの見直しが進むことになると思われます。今までにも『台湾桧』や『ラワン』など、瞬間的に隆盛を極めては過剰伐採で衰退していった樹種はいくつもあります。もはや『木が永続的に供給可能な自然素材』というフレーズが使えるのも特定の樹種、特定の職種に限定される事になってしまうかもしれません。

我が身を刻まれまいと苦しみながらも体をうねらせ生き延びた桜は、ゆえにその情念が結集して妖しげではかない緋色の花を咲かすのでしょうか。リサイクル可能な自然素材という恵まれた環境に胡坐をかいてきた木材業界に大きな分岐点が来ています。幹を守るか、花を咲かすか。決して永遠ではない「用材供給」に自分がどれだけ身の丈を合わせられるか。小さな幹に小さな花を少しだけつけて、永らく人に愛でてもらう、そんな生き方が望みです。水面に流れる桜の花びらの行く先やいずこ・・・

 




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